
11月21日から始まる今年のプロ野球・日本シリーズは、昨年に続き読売ジャイアンツ(巨人)と福岡ソフトバンクホークスとの顔合わせとなった。日本シリーズといえば、勝利チームには“シリーズ男”と呼ばれる、期待以上の活躍をする選手が現れることが多い。
その一方で、負けたチームにはシーズン中に大活躍をみせたにもかかわらず、相手チームに徹底的に研究された末に弱点を丸裸にされるなどして存在感が消えてしまう選手が少なくない。特に顕著なのはバッターだろう。結局シリーズ終了までまったく打てず、“戦犯”として敗北の責任を背負わされてしまい、必ずといっていいほど不名誉な“逆シリーズ男”というレッテルを貼られてしまうからだ。
そこで今回は、そうした哀しき逆シリーズ男の歴史を、2000年以降に絞って紹介したい。
まず、逆シリーズ男の特徴としては、レギュラーシーズンの活躍の度合いが大きいのはもちろんだが、何かのタイトルを獲得した選手ほど日本シリーズで失速するケースが目立っている。相手チームから執拗にマークされるというのもあるだろうが、それにしても残念過ぎる……という結果なのだ。
2000年に巨人と戦って敗れた福岡ダイエーホークス(現ソフトバンク)は、主砲・松中信彦が苦しんだ。シーズンでは打率3割2分、30本塁打、106打点でシーズンMVPに輝いたにもかかわらず、日本シリーズでは6試合で19打数1安打の打率0割5分3厘、1本塁打、2打点に終わっている。第1戦こそ2ランホームランを放って勝利に貢献したが、その後はノーヒット。チームも敵地で2連勝スタートを切ったが、松中の不調に合わせるように、そこから4連敗を喫してしまった。
01年は、大阪近鉄バファローズ(のちにオリックス・ブルーウェーブと合併し、現在はオリックス・バファローズ)の磯部公一だ。シーズン中は5番打者としてタフィ・ローズ、中村紀洋とクリーンアップを形成し、打率3割2分、17本塁打、95打点とキャリアハイの成績を残して大ブレイクしたものの、ヤクルトスワローズ(現東京ヤクルトスワローズ)との日本シリーズでは、第1戦に相手エースの石井一久に完璧に押さえ込まれると、結果的に16打数0安打と、このシリーズでは1安打も放つことができなかった。
磯部は第3戦までは5番を任されていたが、第4戦では7番に降格、第5戦はスタメンからも外されている。この磯部の不振もあって、チームはヤクルトの前に1勝4敗で敗れ去り、近鉄としては1度も日本一に輝くことはできずに球団が消滅した。
翌02年は西武ライオンズ(現埼玉西武ライオンズ)の和田一浩だ。この年、初めて規定打席に達し、打率3割1分9厘、33本塁打、81打点と活躍したが、初戦の第1打席でセンター前に抜けたと思った打球を巨人のセカンド・仁志敏久の好守に阻まれたことでスイングがおかしくなり、調子を崩してしまった。結局、15打数0安打と完璧に抑え込まれた和田の不調が響いた西武は、巨人に4タテをくらってあっさりと敗れ去っている。
金本知憲&今岡誠の2枚看板が封じられた阪神
05年に千葉ロッテマリーンズと対戦した阪神タイガースは、ポイントとなる主力打者が打ち取られて敗北したパターンだ。金本知憲と今岡誠の2人である。打率3割2分7厘、40本塁打、125打点でセ・リーグMVPに輝いた金本は第3戦までノーヒットに抑え込まれ、第4戦でやっと1本打ったが、焼け石に水だった。13打数1安打の打率0割7分7厘、0本塁打、0打点と低迷。
一方、シーズンでは147打点で打点王に輝いた今岡も、わずか1打点に終わってしまった。この主軸2人の不振が響いた阪神は4試合でたった4点しか取れず、33得点した千葉ロッテの前にあっけなく4連敗したのである。