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コロナ禍の基礎知識!失業給付金を有利にもらうコツ…給付要件緩和&給付額増加の可能性も

文=日向咲嗣/ジャーナリスト
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「Getty Images」より

「家族3人、死ねって言いたいんですか?」

 そんな書き出しで始まる記事が話題を呼んでいる。NHKがWEB特集『閉店でも「自己都合」? 追い詰められる非正規労者』と題して11月に報じたニュースで、そこには雇用保険制度のとんでもなく理不尽な実態が描かれている。

 登場するのは、子供を2人抱えたシングルマザー。週5日間、フルタイムのパートとして勤務していた飲食店が新型コロナウイルスの影響で閉店。別の店舗での勤務を打診されたものの、そちらは自宅から遠いうえ、シフトに入れる日数も大幅減の見込み。「これでは家族を養っていけない」として退職したのだった。

 ところが、退職後にハローワーク(以下ハロワ)で雇用保険の受給手続きをしたところ、「失業給付は出ない」と言われたという。会社都合なら問題なく出るはずだが、「自己都合」とされたため、受給に必要な「12カ月以上の加入期間」に1カ月足りなかったのだ。このときに発したのが、冒頭のセリフだったのである。

 では、いったいなぜ、この人は雇用保険の失業給付がもらえなかったのだろうか。

 雇用保険の失業給付は、過去2年以内に12カ月以上加入していれば、受給資格が発生する。支給される手当は、原則として在職中給与の5~8割だ。解雇や雇止め(期間満了時に会社が更新を拒否)など会社都合で退職した人については、過去12カ月以内に6カ月以上加入していれば受給資格は得られるのがポイント。自己都合なら「1年以上勤務」なのに対して、会社都合なら「半年以上勤務」で受給可能になるわけだ。

 この女性のケースでは、飲食店が閉店になったために退職したのだから、当然「会社都合」となるはずだ。だが、勤務先が作成した離職票では「自己都合」とされていた。退職時に、勤務先に求められるままに「一身上の都合」とした退職届を提出していたことが原因だ。

 そこで、ハロワ窓口で異義申し立てを行い、それを受けてハロワは勤務していた事業所に問い合わせをした。ところが、「会社が認めないので離職理由は変えられない」として却下されるという理不尽な結末になった。

「自己都合」→「会社都合」へと判定が覆ることも

 このケースでのハロワの対応は、実情を考慮しない典型的な“お役所仕事”といえるが、果たして、こういう場合でも泣き寝入りするしかないのだろうか。もちろん、そんなことはない。事前にちょっとした知識を仕入れておけば、難なくピンチを脱することができることも珍しくない。以下に、そのコツをまとめてみた。

 まず見極めたいのは、ハロワで判定される「会社都合」と認められる要件のなかに、自分に該当しそうなものはないのかということ。この事例でいえば、以下の要件があてはまりそうだ。

(1)事業所の廃止に伴い離職した者
(2)賃金が当該労働者に支払われていた賃金に比べて85%未満に低下したために離職した者
(3)事業主から直接もしくは間接に、退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者

 この女性は(1)のケースに該当するといいたいところだが、たとえ勤務していた店舗が閉店しても、系列の他店へ転勤を内示された場合には、その他店が「遠くて通えない」ような場合(基準はおおむね往復4時間以上)でないと、会社都合にはならない。

 それよりも確実なのは、(2)の15%超の減収だ。厳密にいえば、雇用主から提示された新たな契約内容が大幅減収になっていることが前提だが、契約はなくとも突然、大幅減収になったようなケースでは、この要件に該当するとされる。

 現実に「シフトに入れる日数がこれだけ激減して、これだけ減収になった」として、ハロワで異義申し立てを行う際に、減収になる前後の給与明細とシフト表を見せれば、「会社都合」へと判定が覆る可能性はかなり高まるだろう。

 ただし注意したいのは、受給資格を決定する雇用保険の加入期間が「11日以上勤務した月」のみという点だ。10日しかシフトに入れなかった月は、そもそも加入期間には算入されないのが雇用保険の基本ルール。10日以下になりそうなときには、1日当たりの勤務時間を少しずつ増やし、「月80時間以上勤務」となるようにしておくのがコツ。そうすれば、たとえ月10日しか勤務していない月でも、加入期間に算入される。この点は、今年8月1日から法改正された内容だ。

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『第9版補訂版 失業保険150%トコトン活用術』 (日向咲嗣/同文舘出版) より

 そして決定的なのが(3)の退職勧奨、つまり“肩たたき”だ。「ウチの店も経営が苦しいので、辞めてくれないか?」と経営者から言われて辞めた場合、単に「~してくれないか」という経営側の希望にすぎないため、会社都合にはならないと勘違いしがちだが、退職勧奨も立派な会社都合である。

 ただし、なんの証拠もなければ、経営側の求めに応じて辞めても自分の意志で辞めたとされかねない。そこで、メールなどの文書や録音音声として、肩たたきにあった証拠を確保しておくことが重要だ。ハロワでそれを提示すれば、その時点で会社都合となる可能性がかなり高まる。

新型コロナ感染症対策に伴う特例

 さて、ここからはハロワの新型コロナ感染症対策に伴う特例について解説しておきたい

 下の図は、2020年5月1日以降、以下の理由で離職された人については、たとえ離職票では「自己都合」とされていても、申立書を提出することで比較的簡単に「会社都合(特定受給資格者)」と認められるようになっている。

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https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/newpage_00577.html

 基礎疾患があったり、妊娠中であったり、高齢であったりと、かなり限定されている印象が強いが、よく読めば当てはまる人が決して少なくはないものもある。

 着目したいのは「本人及び同居の家族に」と「高齢であること」という2つのキーワードだ。 自分は若くて元気でも、「同居の家族」が「基礎疾患」や「妊娠中」「高齢」で、新型コロナに感染したリスクが高いとして退職した場合は、会社都合と認めようという趣旨である。

 このなかで見逃しやすいのは「高齢であること」の年齢基準だ。ハードルが意外に低く、「60歳以上」であれば高齢と認めてくれる。つまり、60歳以上の親や配偶者と同居している人であれば、「家族に伝染させたくないので退職した」と言えば、それだけで会社都合となるわけだ。それを証明する書類は、世帯全員記載の住民票を提出するだけでOKだ。退職後に60歳以上の親と同居を始めた場合は対象外だが、退職前に高齢の親と同居を始めていた人であれば、いとも簡単に会社都合になるかもしれない。

 ちなみに、会社都合と認められれば、6カ月加入で受給資格が得られるだけでなく、給付される日数面でも断然有利だ。45歳以上60歳未満なら、1年以上加入で180日、20年以上加入で最長330日も給付されるのだから、簡単にあきらめるのは、あまりにもったいない。

 なお、新型コロナ感染症対策に伴う特例については、随時更新されることが見込まれるため、そのつど最新の情報を確認したうえで行動していただきたい。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)

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『第9版補訂版 失業保険150%トコトン活用術』日向咲嗣 (著)

日向咲嗣/ジャーナリスト

日向咲嗣/ジャーナリスト

1959年、愛媛県生まれ。大学卒業後、新聞社・編集プロダクションを経てフリーに。「転職」「独立」「失業」問題など職業生活全般をテーマに著作多数。2015年から図書館の民間委託問題についてのレポートを始め、その詳細な取材ブロセスはブログ『ほぼ月刊ツタヤ図書館』でも随時発表している。2018年「貧困ジャーナリズム賞」受賞。

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