「つみたてNISA」(積立NISA)は、投資で得られた利益(運用益)にかかる20.315%の税金がゼロになる、お得な制度です。リスクを抑えながらコツコツお金を増やすためには、「長期投資」「積立投資」「分散投資」「低コスト」「税金無し」の5点セットが大切です。それらを兼ね備えている制度のひとつが、つみたてNISAです。
2020年3月、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、SBI証券、楽天証券ともに新規口座開設数(月間)が過去最高になったと発表されました。楽天証券によると、3月に口座開設をした人のうち6割が30代以下、7割超が投資初心者とのことです。投資信託の積み立てをしている人も、前年同月比で2倍に増えているそうです。
今回は、そんな関心の高い投資信託やつみたてNISAをこれから始めてみたい方向けに、つみたてNISAの概要を解説したいと思います。そして、どこの金融機関で始めればよいのかもお伝えします。
「つみたてNISA」=「長期積立分散投資」×「低コスト」×「税金無し」
つみたてNISAは2018年にスタートした制度です。20年間にわたって、年間40万円までの投資で得られた利益を非課税にできます。当初2037年までの制度でしたが、改正によって5年延長され2042年までとなりました。
つみたてNISAで投資できるのは、金融庁の一定の基準を満たした投資信託・ETF(上場投資信託)。長期間積み立てと分散投資ができる商品のみです。もちろん、金融庁の基準を満たすからといって、将来的に必ず値上がりするわけではありません。しかし、手数料が安くてシンプルな商品が多く、資産を堅実に増やすのに向いています。
<つみたてNISAの概要>
つみたてNISAでは、自分で指定した金額が指定した日に自動的に引き落としになり、継続して積立投資が行われます。一度設定すれば、あとは自動でコツコツ積み立てていけるので、忙しい方でも大丈夫です。
積み立てる日を給与振り込み日の翌日に指定すれば、口座にお金がなくて引き落とせない、ということもなくなります。
しかも積立投資には、どんな局面でも感情に左右されず、淡々と買い付ける効果があります。投資タイミングを自分で判断する必要もなし。つみたてNISAは手間の面でも、心理的な面でも楽な投資なのです。いわゆる「ほったらかし投資」ですが、感情に左右されずコツコツと増やす仕組みであるつみたてNISAを使わない手はないでしょう。
つみたてNISAが長期投資にぴったりの理由
値動きのある商品を定期的に一定額ずつ購入すると、価格が高いときには少ししか買えず、価格が安いときにはたくさん買えます。この購入方法を「ドルコスト平均法」といいます。これを利用すると、平均購入価格が抑えられ、価格が大きく上がらなくても利益が出せる可能性が増します。
もし、商品が一方的に値上がりするなら、最初にまとめて購入したほうが利益は大きくなりますが、そうなるかどうかは事前にはわかりません。商品の価格は上下するため、値上がりしたときに利益が大きくなるように準備しておくことが大切です。それができるのがつみたてNISAです。
長期の非課税投資制度といえば、日本にはもうひとつ「iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)」がありますが、こちらには弱点があります。それは、積立のできる年齢が60歳まで(2022年からは65歳までになる予定)だということ。また、原則60歳になるまで積み立てた資産の引き出しができません。
その点、つみたてNISAは20歳以上しか投資できないという制限はあるものの年齢の上限はなく、資産はいつでも引き出すことができます。つまり、投資したお金が固定されないため、急にお金が必要になったときにも対応できるのです。
つみたてNISAは、金融庁が認めた商品のみ購入できる
初めて投資をする方におすすめの商品は、投資信託です。投資信託は、投資家から集めたお金を専門家が代わりに運用する商品のことです。運用で利益が出れば利益の一部が受け取れますが、損失が出れば元本割れする可能性もあります。
つみたてNISAでは、投資信託で運用を行います。投資信託のメリットは、1本で分散投資の効果が得られること。1本の投資信託は数十、ときには数百以上の商品を組み入れています。そうすることで、仮にどれかが値下がりしても、ほかのどれかの値上がりでカバーするのです。これは、商品の値動きと上手に付き合うための重要な考え方です。
つみたてNISAで買える商品は、金融庁の定める基準を満たし、届け出が行われたもののみです。つみたてNISAでは、長期・分散・積立投資によって、資産形成の役に立つと考えられる商品を買うことができます。つみたてNISAの投資先は、あらかじめ長期・分散・積立投資に適した191本(11月9日現在)に絞られているので、初心者でもぐっと選びやすくなっています。
つみたてNISAの金融機関選び、オススメはこの5社
銀行・証券会社・保険会社など、つみたてNISAを取り扱う金融機関はたくさんあります。しかし、つみたてNISA口座は1人1口座しか持てません。ですから、どこでつみたてNISAをスタートするかは重要です。というのも、金融機関によってサービスが異なるからです。
一番注意したいのは、金融機関によって取扱商品が異なることです。ネット証券では、対象の商品の大部分を扱っています。一方、店舗型の銀行や証券会社では、商品を絞りこんでいます。「買いたい商品のある金融機関を選ぶ」ことが何より大切です。
次にチェックしたいのが、「最低投資金額」です。多くの金融機関では、つみたてNISAを最低1000円からスタートできますが、100円からできるところもあります。さすがに100円だけではあまり増えませんが、まずは少額で試し、慣れたら徐々に投資金額を増やすということができるので安心です。
さらに、「サポート体制の充実度」や「キャンペーン」もチェックしましょう。平日の夜や休日でも問い合わせできたり、対面で相談できたりすると初心者でも安心です。
<オススメ金融機関>
筆者がオススメする金融機関は、SBI証券、楽天証券、マネックス証券、イオン銀行、ろうきん(労働金庫)の5社です。つみたてNISAで商品を保有すると、Tポイントや楽天ポイントなどがもらえるサービスがあるのはいいですよね。節税しながらポイントも貯まるのでダブルでおトクです。
(文=頼藤太希/マネーコンサルタント、株式会社Money&You代表取締役)
筆者は12月4日、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂)を上梓しました。
一般の人が無理なく実践できる「長期積立分散投資」×「低コスト」×「税金無し」、それを実現できるのはNISAとiDeCoです。 本書は、これから資産運用を始める人にも理解できるよう、制度の仕組みから自分に合った商品選びまで、オールカラーでやさしく解説しています。巻頭や各章の冒頭には、導入マンガを掲載。主人公たちと一緒に楽しみながら学んでみてください。
●頼藤太希(よりふじ・たいき)