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電通・エイベックス、深まる経営不振…“会社の象徴”本社ビル売却加速、外資系の獲物に

文=編集部
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電通本社ビル(「Wikipedia」より)

 新型コロナウイルス感染拡大の直撃を受け、電通グループや日本通運などがステータスシンボルとしてきた本社ビルを売却する動きが相次ぐ。日本たばこ産業(JT)も旧本社を売却した。電通グループは東京港区汐留のオフィス街の電通本社ビルを売却する。売却金額は国内の不動産取引として過去最大級の3000億円規模になるとみられている。みずほ系不動産会社、ヒューリックが優先交渉権を得て、3カ月間をメドにロングランの買収交渉を始めた。

 本社ビルは敷地面積約5200坪(1坪は3.3平方メートル)に聳え立つ地上48階建て、高さ213メートルの超高層ビル。高層部にスカイレストランがあって、低層部には劇団四季の常設専門劇場「海」などの商業施設「カレッタ汐留」が入居している。延床面積は7万坪を超える。旧国鉄・汐留貨物駅跡地の再開発により2002年に完成した。

 電通といえば東京五輪でマーケティング専門代理店に任命された広告会社。東京五輪の開催直前に電通本社ビルの売却が報じられたことは、衝撃をもって受け止められた。電通の経営悪化が「これほどなのか」(関係者)と再認識されたからだ。

 電通グループの2020年12月期の連結決算(国際会計基準)は最終損益が1595億円の赤字(前期は808億円の赤字)と過去最大だった。コロナ禍によって世界の広告市場が悪化、海外事業を中心にのれん代などの減損損失1403億円を計上したのが痛かった。

 売上高にあたる売上収益は前期比10%減の9392億円、営業損益は1406億円の赤字(前期は33億円の赤字)。営業損益、最終損益とも2期連続の赤字だ。

 電通は英広告大手イージスを13年に約4000億円で買収したのを皮切りに、海外でM&A(合併・買収)を加速。20年までの7年間で200社近くを傘下に収め、英WPPや米オムニコムなどに次ぐ大手広告グループの一角を占める。海外売上高比率は12年3月期(日本基準)の13%から20年12月期は55%に高まった。まさに「世界のDENTSU」なのである。

 だが、広告の主戦場はテレビなどのマス媒体からインターネットに移った。電通は、この環境の変化に対応できなかった。19年12月期には、M&A関連の「のれん代」の減損損失701億円を計上。20年に入るとコロナ禍によって広告出稿が落ち込んだため、海外事業に従事する全従業員の12.5%(約5800人)を削減するなど構造改革を進めてきた。本社ビルを売却した後もテナントとして借り続けるリースバック方式をとる。

日本通運、JT、エイベックスも本社ビルを売却

 日本通運は東京港区汐留のオフィス街の汐留本社ビルを売却する。投資ファンドなどが関心を示している。売却金額は1000億円を超える可能性がある。地上28階建て高さ136メートルの高層ビルで2003年に完成した。

 日通はグループ機能を集約するため東京都千代田区に新本社ビルを建設しており、9月以降に移転する。移転後は汐留本社ビルを貸し出す方針だったがテレワークの普及で出社しない会社員が増え、都心でもオフィスビルの需要が頭打ちとなった。短期間のうちに新たな借り手を見つけるのは難しいと判断。本社ビルの売却を含め計画を見直す。

 日本たばこ産業(JT)は20年10月、東京都港区虎ノ門にある旧JT本社ビルを住友不動産に売却した。高さ169.7メートル、35階建て、延床面積約2万坪の高層ビル。売却価格は約800億円といわれている。

 JTはすでに本社を隣町神谷町の神谷町トラストタワーに移転済み。19年から売却手続きを進めてきた。エイベックスは20年12月、東京都港区南青山の本社が入るエイベックスビルを売却した。買い手はカナダ拠点の不動産ファンド、ベントール・グリーンオーク(BGO)で金額は約720億円とみられる。

 エイベックスは多くの俳優、歌手、スポーツ選手を抱えるエンタメ企業だ。コロナ禍でイベントを開けないなど収益が急激に悪化した。資産を現金化して財務を強化する。エイベックス本社ビルの竣工は2017年。築3年の新築ビル。本社ビルとして内装まで相当に手を入れ、コーポレートカラーを前面に押し出したビルだっただけに、本社ビルの売却はエイベックスをはじめとしたエンタテ業界が置かれている厳しい状況を表している。

不動産ファンドに優良物件を買収するチャンス到来

 新型コロナ感染拡大による従業員の在宅勤務は、企業にとってコスト削減の好機となった。世界の企業がオフィススペースを減らしている。政府がテレワークを推進している日本では、21年1月の東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィスの空室率は三鬼商事の調べで4.82%に上昇した。20年3月から悪化が続く。空室率は今後も上昇を続けると見られている。コロナ禍で働き方が変わり、オフィススペースを以前ほど必要としなくなったためだ。

 事業戦略を見直すなかで本社ビルを含め保有するビルの売却が相次いだ。売却の受け皿となっているのが外資系ファンドなどだ。低金利による運用難に直面したファンドは相対的に高い利回りが見込める日本の首都圏の不動産に着目することとなった。

 エイベックス本社ビルを買収したBGOは今後2、3年間で1兆円を投じる計画。最大7割程度をオフィスビルに振り向けるとしている。不動産ファンドにとって立地のよいオフィスビルは絶好の“獲物”なのだ。

首都圏への青い目の不動産マネーの流入続く

 不動産サービス大手、ジョーンズラングラサール(JLL)は2月18日、2020年の首都圏への投資額が世界3位だったことを明らかにした。20年1~9月末までは首位だったが、年末にかけて大型オフィスビルの売却が重なったパリ(フランス)、ロンドン(英国)に抜かれた。それでも海外ファンドなどが、物流施設を含めて首都圏に投資する機運は高まっており、JLLは21年も投資マネーの国内への流入は続くと見ている。

 2020年の首都圏への投資額はJLLによると、227億ドル(約2兆4000億円)で前年比24%減。新型コロナウイルスの影響で世界的に売買が減少する中で、首都圏は比較的底堅い動きとなったという。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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