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重盛高雄「謎解き?外食が100倍面白くなる話」

「すかいらーく」等のファミレス、マックに劣る“顧客視点の施策”…不便さで客を逃す

写真・文=重盛高雄/フードアナリスト
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ロイヤルホストの店舗

 外食産業にとり、昨年は新型コロナウイルス感染症の拡大に翻弄された一年であった。それを如実に表すデータが発表されたのでご紹介しよう。

 2月5日、総務省の家計調査が発表された。外食の数値に絞ってみると、2人以上の世帯における支出の名目増減率は前年比-26.7%と、統計をさかのぼっても見られない大幅な減少率となっている。総世帯では-28.5%とさらに減少率が増加している。コロナ禍や外出自粛、時短営業などの要素が影響しているとはいえ、外食への消費支出が大幅に減少している。

 昨年一年はコロナとの闘いといっても過言ではない。外出自粛という単語や緊急事態宣言の発令も昨年春の出来事だ。店舗の時短営業や店内飲食の禁止等の施策は外食業だけでなく、消費者の生活・行動まで大きく変化させたことがわかる。

 コロナ禍にあっても順調な回復をみせているのがファストフードだ。日本フードサービス協会の月次報告を参照すると、12月のファストフード全体では売上高は前年同月比97%、客数88%ながらも客単価は110.2%と善戦した。なかでも洋風が好調を維持し、全体を引っ張ったかたちだ。同レポートの分析によると、ドライブスルー、テイクアウト、デリバリーの好調に加え、各社クリスマス時期のチキンの予約販売が好調で、売上104.8%と唯一前年を上回ったとある。

 一年を振り返って際立つのが、客単価の推移ではないだろうか。ファストフード、ファミリーレストラン共に客単価(前年同月比)は19年12月期からみても、常に100%を上回っている。ファミリーレストラン業態が苦戦しているのは、客数減が要因のひとつとして推測される。なぜならファストフードは来店・非来店の効率化、そして非接触をキーワードに昨年の緊急事態宣言解除後から80~90%の客数を維持しているからだ。

マックが仕込んできた非接触型アプリ

 ファミリーレストランが直面した課題は、従来から潜在化していた。コロナ禍にあって顕在化し、数値の悪化につながったと考えられる。

 2月12日、すかいらーくグループの決算が発表された。すかいらーくグループの次期戦略をみる限り、見通しは決して明るくはない。

 例えばアプリの活用。ファミリーレストランにおいては、情報発信やクーポンの配信がメインの役割であり、まだまだ決済機能の搭載が遅れていると筆者は感じる。ファミリーレストランの強みは、実は店舗設計にある。よく見かけるファミリーレストランは1階が駐車場で2階が店舗という形態が多くを占めている。家族連れ×車で来店する層を前提とした造りだ。

 日本マクドナルドで昨年から展開されたパーク&ゴーというスタイルは、ファミリーレストランが模しやすいかたちと思えるが、展開は難しいようだ。ファミリーレストラン系のアプリはクーポンの配信や注文時に使えるだけで、決済機能は付与されていない。やはり2階に上がってレジで注文した商品を受け取り、支払いを済ませないといけない。子供連れで店舗には入れないけれど、ファミレスの味を家族で楽しみたいという客層を見事に逃しているという印象を受ける。この点、日本マクドナルドが中期経営計画のなかで仕込んできた非接触型アプリには、はるかに及ばない。

 ファミリーレストランは外出自粛に伴い20時までの時短営業となり、その後は持ち帰り(テイクアウト)またはデリバリー対応の営業となる。あまり知られていないが、店舗により持ち帰り・デリバリー対応の時間が異なる。ホームページに記載の店舗リストより、自分の希望する店舗を確認して初めてわかる仕様になっている。実際に持ち帰りで利用しようと思うと意外に面倒だ。

 すかいらーくグループの発表した資料のなかで、ライフスタイルの変化に対応したメニュー戦略と記載されているが、記載された内容を見る限り、業績回復には程遠い印象を受けた。「外食がより特別な機会となったことによる『ご馳走感』を求める傾向の高まりに対応」「高単価帯の客数前年比が相対的に高い傾向」(資料より抜粋)と記載されている。また1000円を超える客単価が多いことが資料では示されている。コロナ禍による客単価の増加はファストフードでも同様にみられる傾向だ。

 だが、この数値だけを前提として、ガストにハレの日の食事を選択する(指向する)消費者が多い、とみるのは早計ではないだろうか。なぜなら、ガストにごちそうを食べに行く客層は多いのかという根本的な理由付けが欠けているからだ。すかいらーくグループがチェーン展開するなかで、ターゲット客層による役割分担ができていないのではないか。もしかすると、ガストがすかいらーくグループの上位ブランドとして位置付けられる日が早晩やって来るのかもしれない。

ロイヤルホストの矜持

 ファミリーレストランはアプリの機能追加が喫緊の課題として挙げられる。消費者はホームページ等の情報により、使用するチェーンや店舗を選択する時代がすでに来ている。スマホの普及、ホームページによる情報発信、そして注文などツールは増えているが、いまだに会員登録を促しクーポンの配布を主目的にしたチェーンが多い。消費者は一方的に送られるクーポンには飽きている。必要なクーポンであれば、消費者はツールを駆使して自分から取りに行く術はこころ得ている。紙クーポンが必要な世代、人数は限られているのが昨今の状況ではないだろうか。

 15日にホスピタリティーレストランのロイヤルホストを運営するロイヤルホールディングスの12月期決算報告が発表された。天丼でおなじみの「てんや」も同グループの一社といえばピンとくる人も多いだろう。テイクアウトやデリバリーの取り組みにより、ロイヤルホストは一定の業績を確保したようだが、他方でテイクアウトの競争激化により「てんや」は思ったように業績を残すことはできなかった。各社がテイクアウト戦略を強化したことにより、相対的に「てんや」の持つ価値が薄められ後塵を拝したかたちとなった。

 ハレの日にも活用できるロイヤルホストの持ち帰りは、ホームページを見る限り単価も高いが品質も高いレベルにあると感じさせる。普通のランチメニューや定食をボックスに詰め込みました、という印象は受けない。ロイヤルホストの矜持が見え隠れする。ホスピタリティーレストランとしての役割と自分たちの立ち位置。良質な商品を適正な価格で、安心とともに提供する姿勢はコロナ禍であっても変わらない。

 ロイヤルホストの月次売上(既存店前年同月比)によると、1月は売上高69.5%、来客数61.4%と苦戦。一方で客単価は113.2%と好調だ。昨年一年を振り返ってみても、客単価は常に100%を上回っている。特に昨年5月は133.4%と一番高い客単価となっている。先に示した通り、ファミリーレストラン全体でも客単価は落ちていないことがわかる。

 家計調査と連動して考察してみると、ひとつの仮説が見いだせる。外食に対する消費支出の減少は、外食機会の回数減少によるものと想定される。なぜなら1回ごとの支出は客単価に見られる通り、落ちていない。それどころか、増加傾向にあるからだ。回数が減少することと並行して、外食がより大切な時間・機会として結果的に支出増につながっているのではないだろうか。

 コロナ禍による外出自粛に伴い、しばらくは外食の機会が減少することはやむを得ない。

 しかしながら産業としての外食を守る、ひいては生産者や食文化も守るという気概のもと、テイクアウト(持ち帰り)やデリバリーなどを工夫して多くの消費者に活用していただくことにより、中食という役割で家族のだんらんをつくってほしいと切に願う。持ち帰り後発組であるが、ファミリーレストランの今後の戦略を見守っていきたいと思う。

(写真・文=重盛高雄/フードアナリスト)

重盛高雄/フードアナリスト

重盛高雄/フードアナリスト

ファストフード、外食産業に詳しいフードアナリストとしてニュース番組、雑誌等に出演多数。2017年はThe Economist誌(英国)に日本のファストフードに詳しいフードアナリストとしてインタビューを受ける。他にもBSスカパー「モノクラーベ」にて王将対決、牛丼チェーン対決にご意見番として出演。最近はファストフードを中心にwebニュース媒体において経営・ビジネスの観点からコラムの執筆を行っている。
フードアナリスト・プロモーション株式会社 重盛高雄プロフィール

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