文春オンラインは2021年3月16日、トヨタ自動車の豊田章男社長(64)の長男・大輔氏(32)の婚約を報じた。お相手は、元宝塚歌劇団星組・専科娘役の星蘭ひとみ(26)だという。
トヨタの御曹司のお相手として突然名前が挙がったこの女性、おそらく一般的な認知度は低かったかもしれないが、宝塚ファンなら誰もが知る美貌の女優である。宝塚では将来を渇望されながらもわずか6年目で退団した娘役であり、昨秋には、俳優・三浦春馬の“遺作”『おカネの切れ目が恋のはじまり』(TBS系)に三浦の元恋人役で出演、さらに現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説『おちょやん』にも出演していたが、2020年末までに芸能活動には終止符を打っていたという。
さらに文春報道の続報で、星蘭が出光興産の創業者一族出身であること、幼稚園から高校まで学習院に通い、その14年間、秋篠宮佳子さまのご学友であったことなども報じられ(光文社「Smart FLASH」2021年3月18日)、相当な“ご令嬢”であることが判明したのであった。
「卒業後は良妻賢母」は、宝塚歌劇団の創設者・小林一三も想定していた
「宝塚を退団して大企業の御曹司と結婚!」というと、確かに最近では珍しいニュースだったかも知れない。しかし、である。宝塚歌劇団へ入団にするために通わなければならない宝塚音楽学校は、阪急東宝グループ(現・阪急阪神東宝グループ)の創業者である小林一三の肝いりで作られた学校であり、そもそも「卒業後は良妻賢母」となることが目的のひとつとされていたのだ。
「舞台へ出る芸術家のことばかり考えておったけれども、さて舞台人として活躍している人は三十七人しかない。あとは、ほとんど一般の善良な家庭の主婦におさまっているという事実を見ると、将来もどうもそういうふうになるんではないかという気がする」(小林一三『宝塚生い立ちの記』)
かように小林はもともと、宝塚の卒業生には芸能界で活躍するパターンのほか、結婚して“よき妻”になるパターンも多いことを重々承知していた。
星蘭は、宝塚入団時からその美貌と圧倒的なスタイルで注目を集め、新人公演で2度のヒロインを務めるなど、将来の「トップ娘役」候補として大切に育てられた。しかも入団5年目には、宝塚でも基本的にはベテランが在籍する専科へ異例の異動、それも映像を主体に活動するといういわば「特別待遇」まで受けた逸材。そうした立場を投げうってまで結婚という道を選んだ……ともいえるが、これも小林一三の考えていた卒業生のあるべき姿のひとつ、ということなのかもしれない。
はてしかし、星蘭はともかく、結婚という道を選んだその他大勢の宝塚OGたちは、果たして小林一三の目した通りの幸せをつかんでいるのだろうか。本稿では、宝塚OGたちの「結婚パターン」を読み解いてみたい。
【夫が芸能人】中山秀征と結婚した白城あやか、夢之丞と結婚した初嶺麿代
まず注目されるのは、芸能界で活躍する男性と結婚した宝塚OGである。
タレントの中山秀征と結婚した元星組トップ娘役の白城あやか(74期)は、4人の息子に恵まれ、オイルソムリエとしても活躍中。自身のブログでは現役時代と変わらぬ美しさでキラキラオーラを放っている。
また2020年に長男を出産したばかりの、元星組トップスター・北翔海莉(84期)は、俳優の藤山扇治郎と結婚。こちらも仲睦まじい様子がSNSなどで披露されている。
そのほか、『マツコ会議』(日本テレビ系)への出演で、自身の経営する宝塚受験スクールの知名度を上げている元宙組男役・初嶺麿代(80期)は、14歳年下の俳優・夢之丞と2021年に入籍。この年の差婚に、一部宝塚ファンの間では一時話題沸騰になったものである。
こうして見ると、芸能人と結婚した宝塚OGは、華やかさを保ちながらも幸せな家庭を築いている印象。己に厳しく、美しく完璧な舞台をつくり上げてきた宝塚生活が、結婚生活を華やかに営む上でも役に立っているのだろうか……。
【玉の輿】世界的作曲家、フランク・ワイルドホーンと結婚した和央ようか
続いて“玉の輿”バージョンである。
元花組トップスター・蘭寿とむ(82期)は、東宝名誉会長である松岡功の甥と結婚。夫となった人は、元プロテニスプレーヤー・松岡修造の従兄弟に当たる。つまり、宝塚の創始者・小林一三に連なる“華麗なる一族”に嫁いだわけだ。
他の追随を許さないワールドワイドな玉の輿を実現したのが、元宙組トップスター・和央ようか(74期)。なんと自身の宝塚退団公演で楽曲を提供した米国出身の作曲家、フランク・ワイルドホーンと結婚。ワイルドホーンは「ジキル&ハイド」「スカーレット・ピンパーネル」などの作曲を手がけ、主にブロードウェーで活躍する作曲家。和央は現在、ニューヨークの超高級マンションでの超リッチな生活をSNSで垣間見せてくれている。
【夫の不倫】夫と女優・鈴木杏樹との不倫を「許せない」と語った貴城けい
一方で、夫の浮気で話題になった宝塚OGもおられる。
古くは、板東八十助(当時/のちの坂東三津五郎)と結婚した寿ひずる(58期)。花組トップスター就任が内定していたにもかかわらず、八十助との結婚のため、二番手のまま1982年に電撃的に退団。結婚後は梨園の妻としての務めに邁進し表舞台からは遠のいていたが、夫の浮気等により1997年に離婚。離婚後は再度舞台への出演を果たし、名脇役として精力的に舞台出演している。
そして近年、夫の浮気で大きな話題になった宝塚OGといえば、元宙組トップスター・貴城けい(78期)だろう。2007年に宝塚を退団後、2013年に二代目市川月乃助(当時/現在は新派俳優の二代目喜多村緑郎)と結婚。しかし2020年、「週刊文春」の報道により、喜多村と、夫と死別した女優・鈴木杏樹とが不倫関係にあることを報じられた。報道によればこの事実を知った貴城けいは、「許せない」と周囲に語ったといわれている。
宝塚という“夢の世界”を生きてきたからか、宝塚OGは世間知らず?
こうして見てみると、やはり天下の宝塚。そのOGらも、一般人ではなかなか手の届かなさそうな殿方と結婚しているケースが多いようだ。己に厳しく自己管理能力が高く、美への追究心も深く聡明……そんなハイレベルな宝塚出身者なれば、それは当然のことなのかもしれない。
その一方で、真面目で一直線、10代の頃から宝塚という“夢の世界”を生きてこられたゆえか、全般的に宝塚OGは、世間知らずな面もおありなのかもしれない。その結果、夫の浮気という事態にいたることもあるのだろう。このようなことにまで小林一三翁が考えをいたらせていたかどうかは定かでないが……。
その美貌から「宝塚のオードリー・ヘップバーン」と絶賛され、退団を惜しむ声も大きかった星蘭ひとみ。そんなファンのひとりであった筆者としては、ただただ末永いお幸せを願うばかりである。