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木村誠「20年代、大学新時代」

東北大学が「THE世界大学ランキング日本版」で東大を上回る理由…東京医科歯科大学が躍進

文=木村誠/教育ジャーナリスト
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東北大学の川内北キャンパス(「Wikipedia」より)

 英国の高等教育専門誌「Times Higher Education」(THE)が、3月に「THE世界大学ランキング日本版2021」を公表した。世界大学ランキングは他にも、英国の大学評価機関「Quacquarelli Symonds」(QS)によるものなどがある。もともとルーツは同じで、THEとQSに分かれた経緯がある。

 THEは5年前から日本の教育会社・ベネッセコーポレーションと協力して、日本版の大学ランキングを公表している。身近なので、マスコミでは注目度が高い。この日本版の評価基準は「教育リソース」「教育充実度」「教育成果」「国際性」の4つである。

 教育リソースは、(1)学生一人あたりの資金、(2)学生一人あたりの教員比率、(3)教員一人あたりの論文数、(4)大学合格者の学力、(5)教員一人あたりの競争的資金獲得数である。

 教育充実度は、(6)学生調査:教員・学生の交流、協働学習の機会、(7)学生調査:授業・指導の充実度、(8)学生調査:大学の推奨度、(9)高校教員の評判調査:グローバル人材育成の重視、(10)高校教員の評判調査:入学後の能力伸長である。

 教育成果は、(11)企業人事の評判調査、(12)研究者の評判調査である。

 国際性は、(13)外国人学生比率、(14)外国人教員比率、(15)日本人学生の留学比率、(16)外国語で行われている講座の比率である。

 以上16の項目について0~100のスコアがあり、その比重に応じて合算し、総合ランキング、分野別ランキングが決まる仕組みになっている。

 教育リソースは客観的データがあるが、教育充実度と教育成果は参加者の評価をベースにしているので、主観的要素が強いといえるだろう。しかし、受験では高校教員の評価、就職では企業人事からの評価が、その大学のブランドイメージを構成する大きな要素となっていることは無視できない。

 国際性は客観的なデータである。やや従来の大学ブランドにない評価基準の印象を受けるが、グローバル化に直面する大学としては欠かせない視点ということであろう。

東北大が東大を上回る理由

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 ランキングを見ると、上位に旧帝大系や東京工業大学などの国立大学が並び、筑波大学や広島大学など地方の有力国立大が続く。2018年にはトップだった東京大学が20年、21年は東北大学にトップを譲っているのは、国際性で差がつけられているからである。教育リソースなどは客観的な数字で年による変動が大きくないが、国際性などは大学の方針や姿勢によって数字が動く可能性があるためとみられる。

 それは私立大学でも言える。国際基督教大学はOGの秋篠宮家子女の結婚問題で注目されているが、なんといっても昔から国際性が抜群でトップクラスの高得点だ。教育充実度も、グローバル人材の育成という面で評価されていると言えよう。

 早稲田大学と慶應義塾大学は、この5年間、まさに抜きつ抜かれつの早慶戦を繰り広げている。早大は国際教養学部があり、留学生実数では全大学1位なので国際性が高く、慶大に圧倒的な差をつけている。半面、教育リソースでは医学部のある慶大が上回っている。上智大学は教育充実度がトップクラスだが、教育リソースが弱い。

 GMARCH(学習院大学・明治大学・青山学院大学・立教大学・中央大学・法政大学)と関関同立(関西大学・関西学院大学・同志社大学・立命館大学)では、立命館大が例年30位前後で健闘している。教育充実度が早慶より高いのが強みだ。明治大、同志社大、立教大、関西学院大、中央大は40~50位で混戦模様。年によって違う。ただ、このクラスの大学は伝統があり、教育充実度が高い傾向にある。

存在感を見せる理工系単科大

 注目は、理工系の単科大学だ。国立では、伝統のある東京農工大学、九州工業大学、電気通信大学はもとより、地域において根強い人気の長岡技術科学大学と豊橋技術科学大学のほか、東京商船大学と東京水産大学が完全統合した東京海洋大学、京都を中心に独自の存在感を強めている京都工芸繊維大学などである。国立だから教育リソースも悪くなく、教育充実度も高い。

 公立では、福島の会津大学も開校時は情報社会先取りの学科で注目されたが、最近は公立らしく地域貢献でも大きな役割を果たしている。

 私立でも豊田工業大学は教育リソースが旧帝大系並みで、ここ数年ランクインしている。トヨタ自動車がスポンサーという強みを発揮している。東京理科大学や芝浦工業大学も、東京の伝統校らしく常にランクインしている。また、新型コロナ禍対策で大きな役割を果たした東京医科歯科大学が、21年は大きく躍進した。

立命館アジア太平洋大と神田外語大の強み

 志願者数トップの近畿大学もこの5年間一度もランクインできなかった50位までに、全国的な知名度があまりなさそうな常連ランク校が数校ある。その双璧が、西は立命館アジア太平洋大学、東は神田外語大学だ。両校とも歴史が浅いので教育リソースはいまいちだが、教育充実度は旧帝大系並みで、21年は早慶を上回る。また、グローバル時代に対応した国際性もトップクラスで、この2項目で50位以内を5年間キープしている。

 大分県にあって、ベストセラーで有名な出口治明学長をリーダーに、留学生比率が高く、ほぼ全寮制の立命館アジア太平洋大は、本家の立命館大をランクでは上回る。

 立命館アジア太平洋大に比べ、東京近郊で日本人学生の多い神田外語大は一般私大のタイプである。18年から下降気味ながら、21年は教育充実度で全国6位、国際性で全国18位をキープしている。学生の満足度が高い傾向にある。OBやOGの活躍によって、これから教育成果の上昇も期待できそうだ。

 女子大の注目株は、公立の福岡女子大学だ。国際性で全国8位。なんといっても、長期海外研修や海外インターンシップなどのExpanding Your Horizons(EYH)プログラムが知られる。また、初年次に原則1年全寮制で留学生と共に暮らすので、異文化に対する理解力、外国語コミュニケーション能力を身につけることができる。

 このように、ランクの順位にこだわるよりも、その大学の強みやセールスポイントを発見し、強みを理解した上で、受験生が自分の意志に見合った大学選びをするには、役に立ちそうだ。

(文=木村誠/教育ジャーナリスト)

木村誠/大学教育ジャーナリスト

木村誠/大学教育ジャーナリスト

早稲田大学政経学部新聞学科卒業、学研勤務を経てフリー。近著に『ワンランク上の大学攻略法 新課程入試の先取り最新情報』(朝日新書)。他に『「地方国立大学」の時代–2020年に何が起こるのか』(中公ラクレ)、『大学大崩壊』『大学大倒産時代』(ともに朝日新書)など。

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