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小黒一正教授の「半歩先を読む経済教室」

日本の物価が上昇しない隠れた理由…「金融政策」ではなく「政府の価格統制」が原因

文=小黒一正/法政大学教授
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4月26日、経済財政諮問会議(首相官邸HP)

 先般(2021年4月27日)、日銀は定例の金融政策決定会合を開催した。この決定会合では、コロナ禍での大規模な金融緩和の継続を明らかにしたが、2023年度の物価見通しが1%に留まる可能性も新たに公表した。

 この1%の見通しは、2023年4月で任期が終了する日銀の黒田総裁の任期中に、異次元緩和の目標であった2%の物価目標が達成不可能となったことを意味する。このため、金融政策決定会合後の記者会見では、黒田総裁に対し、現状に対する質問が集中した。黒田総裁は、「(2%の物価目標が達成できないことにつき、)時間がかかっており、そのことは残念だ」旨の発言があったが、なぜ日本の物価は上昇しないのか。

 筆者は異次元緩和が始まった当初から、日本の物価は構造的な問題であり、大規模な金融政策のみで2%の物価目標を達成することは難しいことを様々な書籍やコラムで公表してきた。この理由を改めて確認し、日本の物価を上昇させるためには何が必要か簡単に再考してみよう。

サービス産業の構造改革が必要

 まず、重要なファクトの一つは、過去のインフレ率消費者物価指数)の推移を見ると、1989年は消費税の導入が物価を1.4%ポイントも押し上げているものの、日本中の景気が過熱したバブル期(1986年~1989年)においても、その年平均インフレ率は0.6%にすぎなかったためである。また、1990年・91年は湾岸戦争、97年は消費税増税、2008年は原油価格高騰の影響があり、これらの要因を除くと、平時にインフレ率が2%を超えたのは1985年が最後である。

 では、日本の物価で何が構造的な問題なのか。それは、アメリカと日本の物価上昇率の違いを比較すると理解できる。このため、以下の図表は、2019年8月における日米の物価上昇率の中身を比較したものである。図表の左側が「財(モノ)全体」の物価上昇率、右側が「サービス全体」の物価上昇率を表す。

 これから何が読み取れるのか。まず、左側(財<モノ>全体の物価上昇率)のうち、テレビ(②)のほか、電話機器等(④)や玩具(⑦)・婦人洋服(⑧)・ガソリン(⑪)は、アメリカの方がデフレだという事実である。このため、財(モノ)全体では、日本が0.3%の物価上昇率であるにもかかわらず、アメリカは0.2%しか物価が上昇していない。

 しかしながら、財(モノ)全体とサービス全体を考慮した物価上昇率は異なる。図表の右下には、消費者物価指数の「総合」の物価上昇率を掲載しているが、この物価上昇率ではアメリカは1.7%の物価上昇率であるのに対し、日本は0.3%しか物価が上昇していない。

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