一生に一度の買い物といわれる「家」。
建てるなら長く住み続けられる良い家にしたいと思うのは当然。生活面もお金の面も含めて、自分の人生に最も寄り添う場所になるのだから、しっかり考えたいところだ。
その家の建築の最前線を教えてくれる一冊が『お金が貯まる家3.0』(平松明展著、カナリアコミュニケーションズ刊)である。
タイトルにある「3.0」という数字。これは、家づくりの進化の度合いを表す数字として使われている。では、「1.0」「2.0」はどんな家を指すのだろう。
「家づくり1.0」は昭和の大量生産、大量消費の時代につくられた家のこと。省エネの意識もなく、家の断熱性能も低い。高金利時代だったため、住宅ローンを払うことでお金がどんどん減っていく家だった。
「家づくり2.0」は平成時代に登場した家づくりで、エコや省エネの意識の高まりを受けた「オール電化」や「スマートハウス」「パッシブデザイン」などが特徴的。「1.0」よりは質が高いものの、長期的な耐久性までは考えられてなく、震度7クラスの大地震で倒壊するケースもあると著者の平松氏は指摘する。現在の家づくりの主流はこの「2.0」だ。
■「家づくり3.0」は住んで良し、さらにお得になる家のこと
では、「2.0」からさらに進化し、令和の家づくりともいえる「3.0」はどんな家のことを指すのか。それは、住みながら「資産形成ができる」「健康になれる」「孫の代まで長く住める」ということが特徴だという。さっそく一つ一つのぞいていこう。
●「資産形成ができる」
平松氏が考えているのは本書のタイトルにもなっている「お金の貯まる家」である。それを実現させるのが太陽光発電システムの導入だ。
お金を貯めるには、収入を増やすか、支出を減らすかという2つの方法があるが、太陽光発電システムはそのどちらにも寄与する。発電による売電収入と、光熱費の節約でそれが可能なのだ。設置費用はそれなりにかかるが、平松氏の地元・静岡であれば「8年ほどで投資回収」できると述べる。
また、節約面でもう一点、「3.0」の家は構造や湿気対策がしっかりなされているため、メンテナンス費用を抑えられるという。
●「健康になれる」
なぜ、家と健康が結びつくのか疑問を抱いた人もいるだろう。
たとえば家の中の「温度」や「湿度」、「空気」といった要素は体調に大きく関わってくる。そこで平松氏は通気断熱に優れた「WB工法」と呼ばれる工法を採用し、家づくりを行っているという。
そのポイントは3つ。1つ目は壁の中を空気が流れる仕組みのため、通気性が高い。2つ目は形状記憶合金を使い、自動的に気密性をコントロールする。3つ目は内壁が湿気を通すため、においや化学物質も室外へと排出される。
しかし、コストがそれなりにかかるのではないだろうか。それに対し、平松氏はWB工法の方がトータルのメンテナンスコストを考えても圧倒的に安いと述べる。高気密・高断熱住宅の場合、機器設備のメンテナンスやフィルター交換などが必要だが、この工法であれば機械を使わないため、そうしたコストが発生せず、維持管理もラクだという。
●「長く住める」
また、WB工法によってつくられた家の中は季節に応じた適温に保たれていて、空気のよどみが起こらないように対応されている状態になっている。この工法なら、においだけでなく、湿気もたまらない。結露しにくく、カビや腐食菌も生まれにくいため、家の構造自体が長持ちするという。
また、地震大国・日本に住み続ける以上は、大地震による倒壊リスクも排除できない。そこで「耐震等級3」の認定取得、建築時の「品質管理」、何度も大地震が起きても倒れないようにするための「構造計算(許容応力度計算)」、そして長く安全に住むための「維持管理」という4つの条件をクリアすることでタフな家をつくることができる。
本書では最新の家づくりについて知ることができるほか、良い建設会社の見抜き方や、これまで平松氏が手掛けた家の事例なども掲載されている。
自分の家を建てる時に何を重視するかは人それぞれだが、人生に寄り添い、お金の面でも助けてくれるというのも重要な要素になるのではないか。長く住み続けていくのだから、妥協はしたくない。これから家を建てようとしている人が持っている想いに答えてくれる一冊である。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。