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住宅ジャーナリスト・山下和之の目

マンション「北向き」がお買い得?東京タワーが見えると2割も高い?日当たり重視の盲点

文=山下和之/住宅ジャーナリスト
マンション「北向き」がお買い得?東京タワーが見えると2割も高い?日当たり重視の盲点の画像1
「Getty Images」より

 マンション、一戸建てにかかわらず、日当たりのいい南向きが一番高く、次いで東向き、西向きであり、北向きが一番安いというのがわが国の住宅の価格設定の常識でした。しかし、向きだけではなく、そこに何が見えるかも重要。特に、コロナ禍で在宅時間が長くなっている現在、眺望は価格決定に欠かせない要素のひとつになっています。

北向きなら南向きより15%程度価格が安いことも

 地球の北半球に位置する日本では、太陽は南側に見え、住まいについても南向きの住まいの日当たりが良くなります。そのため、分譲地やマンションの値付けにおいても、方位がたいへん重要視されます。南向きで明るい住まいを期待できる物件ほど価格が高く、北向きの住まいは安くなるのが一般的です。

 最近のマンションや分譲地の傾向をみてみると、概ね図表1のようになっています。南向きの住戸を基準として、東向きはそれより若干安く、それに次ぐのが西向きで、北向きが最も安くなります。南向きと北向きでは15%ほど差が付くことも珍しくありません。

 ただ、敷地の広い分譲地であれば、北向きであっても建物を北側の道路に面して建てれば、南側に庭をとれて、日当たりの良いリビングなどを設置できるので、それほどの差がつかないこともあります。

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日当たりを気にしなければ北向きはお買い得に

 ですから、向きを気にしない人であれば、北向きの住まいはお買い得です。たとえば、シングルやディンクスで、ふだんはほとんど住まいにいないので、向きは気にしない、北向きでもいっこうにかまわないという人たちであれば、むしろ価格が安い分、お買い得ではないかということになります。

 また超高層マンションなどで、窓が開かない、いわゆるはめ殺しの窓になっている場合、日当たりが良すぎると、夏の暑さはたいへんなものです。クーラーをガンガンかけなければならず、電気代がたいへんということもあります。そうした事情をわかっている人は、南向きをむしろ避けて購入するケースが多いともいわれています。

 そうした若干の特殊事情はあるものの、マンションにもおいても、やはり価格は“南高北低”であることは変わりません。それは、超高層マンションにおいても基本的には同様です。

超高層マンションでも南向きの価格が一番高い

 たとえば、東京カンテイでは東京都23区で分譲された超高層マンションを調査したところ、方位による価格差は図表2のようになったそうです。主な開口部が南向きの平均坪単価は342.8万円で、東向きは329.6万円ですから、南向きを100とした比率でみると東向きは96.1です。同様に西向きは94.2、北向きは92.0です。超高層マンションであっても、やはり価格面での“南高北低”の原則に変わりはありません。

 マンションの立地によって真南向きにできない場合には、南東向きが最も高くなります。南東向きを100とすれば、南西向きが97.2で、北東向きが92.9、北西向きが91.7になっています。

 しかし、上層階からの眺望がセールスポイントの超高層マンションでは、向きだけではなく、そこから見える眺望も大切になってきます。なにしろ、超高層マンションでは、上層階ほど眺望が自慢で、低層階に住む人たちのために、最上階にラウンジなどを設けて、最上階の眺望を楽しめるように配慮している物件もあるほどです。

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立地によって北向きや西向きのほうが高いことも

 それぐらい超高層マンションでは眺望が重視されているわけですが、その眺望が日当たりのアドバンテージを上回ることがあります。特に、東京都23区の超高層マンションであれば、都心の超高層ビル群、なかでも東京タワーが見えるかどうかが重要な要素になってきます。東京都23区のマンションであれば、都心のビル群や東京タワーが見える方位の住戸が高くなるのです。そこでは日当たりは関係ありません。

 たとえば、東京都23区の北側にあるマンションであれば、南に超高層ビル群や東京タワーが見えるので、南向きが高くなりますが、反対に東京都23区の南側にあるマンション、たとえば、大田区、品川区などの場合には、都心の超高層ビル群や東京タワーが見える北向きの住戸のほうが高くなります。

 これは、東西の関係でみても同様で、東京都23区の東側、たとえば江東区などの湾岸にあるマンションなら、都心のビル群や東京タワーが見える西向きの住戸が、東向きより高かったりします。

東京タワーが見えれば見えない住戸より2割以上高い

 東京カンテイの調査によると、港区三田にある超高層マンションの平均坪単価は図表3のようになっています。一番日当たりの良い南東向きではなく、日当たりの良くない北東向きの住戸が最も高くなっています。いうまでもなく、東京タワーを正面に臨むことができる立地だからです。

 たとえば、30階をみると、北東向きが坪単価597.3万円と最も高く、基準となる南西向きを100とした比率では121.5で、2割以上高くなっています。反対に、一番安いのは北西向きの482.5万円で、南西向きに比べての比率は98.1です。北西向きに比べると北東向きは23.8%も高い計算です。

 これは、30階に比べて眺望が劣る20階だと差が縮小し、10階だとさらにその差が小さくなり、15.6%になります。

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コロナ禍で窓からの景色への評価は高まる可能性

 東京都23区の超高層マンションからの眺望を評価する上では、いまのところ東京タワーが最も大きな影響力を持っているようです。まだまだ歴史の浅い東京スカイツリーは、デザイン上、東京タワーより線が細いこと、また周辺に超高層ビルやマンションが少なく、迫力に乏しいこともあって東京タワーほどのインパクトはないようです。

 いずれにしても、超高層マンションにおいては、日当たりだけではなく、眺望が重要であることがわかります。その点は、コロナ禍でますます重要になってきそうです。自宅の滞在時間が長くなり、夜の外出も減っているので、自宅で外の景色を見る時間が長くなっています。それだけに、そこから何が見えるかという点が、日当たりとは別に重要な評価ポイントになる可能性があります。これからの住まい選びを考える上では注目しておいていい点ではないでしょうか。

(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)

山下和之/住宅ジャーナリスト

山下和之/住宅ジャーナリスト

1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に、新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトの取材・原稿制作のほか、各種講演・メディア出演など広範に活動。主な著書に『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(執筆監修・学研プラス)などがある。日刊ゲンダイ編集で、山下が執筆した講談社ムック『はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド』が2021年5月11日に発売された。


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