東京五輪に先駆けて来日したIOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ氏。
コロナ禍での五輪開催を巡っての無神経な発言ばかりでなく、IOCに集まる五輪利権を貪る「ぼったくり男爵」としてすっかり嫌われ者になってしまった同氏だが、会長を務めるIOCからしてなんともダーティーなイメージが定着してしまっている。
■巨額かつ不透明な報酬に高級ホテル暮らし IOC会長のおいしすぎる生活
IOCのダーティーなイメージはどこから来ているのだろうか。かねてから有名なIOCの「金権体質」と、「平和の祭典」という五輪が掲げているきれいな看板とのギャップがあまりにも大きいからだろうか。何度かあった贈収賄スキャンダルのせいだろうか。
おそらくそれもあるのだろう。ただ『オリンピック・マネー 誰も知らない東京五輪の裏側』(後藤逸郎著、文藝春秋刊)を紐解くと、別の側面が見えてくる。
五輪憲章によると、IOCとはスイスに本拠地を置くNPO兼NGO。組織としては会長と4人の副会長、理事が10人で合計15人からなる。気になるのは報酬だが、本書によるとバッハ氏の2015年の報酬は22万5千ユーロ(日本円で2900万円ほど)。会議や出張の日当は800ユーロ(10万円ほど)とのこと。バッハ氏に関していえば、このほかにもローザンヌのパレスホテルが住居として提供されてきた。年間のホテル代は公表されていないが、1998年のサマランチ元IOC会長のホテル代と生活費は20万4000ドルだったことを考えると、バッハ氏のホテル代も、やはりかなりの金額になるのではないだろうか。いずれも一般人の感覚からすると高額である。
ただ、IOCの中枢が受け取る報酬はこれだけではないし、バッハ氏やIOCにつきまとうダーティーなイメージは「大金を得ること」によるというよりも、「報酬の総額が不透明であること」からくるものではないだろうか。
というのも、IOCには関連する財団や子会社、孫会社が数えきれないほどある。バッハ氏を含む理事たちはこれらの役員も務めているのだが、こちらの財務・報酬は非公開なのだ。
そしてこれら財団、子会社、孫会社の活動は、五輪の理念の普及活動から開催地決めの際の入札支援、競技映像の撮影・配信ビジネスまで多岐にわたる。もちろん、これらの団体・組織の中には無報酬のものもあるのだが、費用弁償や年次補償を受ける権利が認められていたり、その金額が非公表だったりと、やはり不透明感はぬぐえないのが現実なのだ。
◇
本書ではIOCと五輪にまつわる生臭すぎる「カネ」の話がこれでもかと明かされ、五輪の裏の顔の輪郭がはっきりと描かれる。本書を読んで五輪の本質に触れておくのも悪くない。肝心の競技観戦に集中できなくなるかもしれないが。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。