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永濱利廣「“バイアスを排除した”経済の見方」

ワクチン接種率上昇でも行動制限を緩和できない可能性…医療現場が逼迫しやすい日本の特殊性

文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト
ワクチン接種率上昇でも行動制限を緩和できない可能性…医療現場が逼迫しやすい日本の特殊性の画像1
「首相官邸 HP」より

はじめに

 新型コロナウイルスの変異株が猛威を奮うなか、政府は7月12日から8月22日までとされていた東京と沖縄の緊急事態宣言を8月31日まで延長することに加えて、首都圏3県と大阪にも同宣言を発出した。

 宣言の下では、経済活動に抑制圧力がかかることは避けられないだろう。しかし、一方で緊急事態宣言慣れなどにより人流抑制の効果が低下していること等からすれば、今回の決定でも経済活動への悪影響が限定的になる一方で、感染抑制効果も限定的になる可能性がある。

大幅縮小する緊急事態宣言の経済的影響

 過去の緊急事態宣言発出に伴う外出自粛強化により、最も悪影響を受けた需要項目が個人消費である。そして、実際に過去のGDPにおける個人消費と消費総合指数に基づけば、2020年4~5月(発出期間4月7日~5月25日)にかけての個人消費は、1回目の緊急事態宣言がなかった場合を想定すれば、▲4.4兆円程度下振れしたと試算される。

 しかし、2021年1月8日~3月21日までの2回目の緊急事態宣言の影響は、同様に推計すると、第1回目の1/4程度の▲1.2兆円程度だったことが推察される。なお、沖縄を除く3回目の緊急事態宣言が4月25日~6月20日までであり、これまで4月の個人消費が▲0.3兆円下振れしていたことから、3回目の緊急事態宣言は1日当たり個人消費を▲500億円程度押し下げていたと予想していた。

 しかし、その後の消費総合指数5月分公表とともに過去のデータも改訂されたため、影響を推計しなおすと、緊急事態宣言慣れの影響か4~5月の個人消費が▲0.8兆円の下振れにとどまるとの結果になった。このため、3回目の緊急事態宣言は1日当たり個人消費を▲203億円程度の押し下げにとどまっていたと計算し直される。そして、沖縄除く緊急事態宣言が57日間であったことからすれば、3回目の緊急事態宣言では個人消費が▲203億円×57日=▲1.2兆円程度の下押しにとどまっていたとの結果になる。

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GDP、年率換算▲2.3%程度押し下げ

 そこで、これまでの東京と沖縄の緊急事態宣言が7月12日~8月31日までに延長され、首都圏3県と大阪が来週から加わる場合の影響を試算してみた。直近年の県民経済計算を基に今年4月時点で発出されていた地域の家計消費の全国に占める割合を算出すると、東京14.4%+京都2.1%+大阪7.2%+兵庫4.2%=27.9%となる。また、5月12日から発出された愛知と福岡が6.1%+3.7%=9.8%、5月16日から発出の北海道、岡山、広島が3.9%+1.4%+2.1%=7.4%、5月23日から発出の沖縄が0.9%となる。

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