今や、コンビニエンスストアを1万軒以上も上回るといわれるのが、歯科診療所の数だ。その一方で、患者数は年々減少し、競争が激化しているといわれる。
そんな歯科業界の中で、25の歯科医院を開業、分院展開している医療法人社団佑健会理事長の河野恭佑氏は、著書『歯科医院革命~大廃業時代の勝ち残り戦略~』(幻冬舎刊)で、勝ち残るための戦略を提示する。
「攻め」とも言える戦略を展開する河野氏に、歯科業界の「今」と「これから」についてお話を聞いた。今回はインタビューの後編だ。
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。
・インタビュー前編「患者に選ばれる歯科医院と離れていく歯科医院 その違いとは?」を読む(外部サイト「新刊JP」)
■歯科医院の経営は「人間力」を土台にせよ!
――本書には歯科医院経営に必要な、「マーケティング」「人材育成」「組織づくり」「営業」という4つの戦略が解説されています。この4つはどの順番に取り組んでいくべきなのでしょうか。
河野:これは書いてある順番、つまり「マーケティング」「人材育成」「組織づくり」「営業」という順に進めていくと良いと思います。マーケティングに始まり、人材育成をして、組織作りを行い、最後は営業、打ち出し方ですね。
――「マーケティング」では挨拶や接客といった基本中の基本から見直していきます。
河野:そうですね。この本に書かれていることはお金がなくてもできることが多いんです。挨拶や接客の見直しも、どの医院でもできることじゃないですか。ただ、そこにこだわっていない医院が多い中で、どこにも負けないようにこだわることで差別化ができるはずなんです。
――患者側からすると、歯科医院は継続して通う場所です。だから、確かに技術も重要なんですが、雰囲気の良さであったり、信頼できるかというところが大事のように思います。一方、歯科医院側から見て、患者さんとの関係性を構築するために大切なことはなんだと思いますか?
河野:歯科医院側からすると、たとえば最新機器を入れているとか、腕のいい衛生士や医師がいるといったところにこだわりを持たれると思います。
でも、今おっしゃったように、患者さんから見てストレートに分かりやすいところってあるんですよね。それこそ受付の接客はその医院の第一印象を決めますから、明るい雰囲気や通いやすい雰囲気を出すことが大事です。笑顔で挨拶をする、真心をもって対応する……。結局そういった基本が大切だと思うんです。
――患者から一番見えやすいところをしっかりするということですね。
河野:そうです。患者さんが医院に財布を忘れたときには、しっかり届けてくれる。こういうことがきちんとできれば好印象ですよね。そうやって日々常々、良いと思うことをやるのが一番ストレートに伝わります。それによって、患者さんの方にもここでしっかり治療をしてもらおうとか、ここだったら長く通えそうという気持ちになっていただけると思います。
もちろん技術力も大事なんですが、土台にあるのは人間性、もっと言うと人間力だと思います。それは結局、歯科医院もサービス業だからです。
ただ、他の業界と違う点は、私たちは人の身体を扱うということです。歯医者と言えども人の命を預かっているわけで、だからこそ勉強も必要だし、知識も必要だし、速やかな対応も求められる。それは忘れてはいけないことだと思います。
――なるほど。人間力が必要なのは、歯科医師や衛生士だけでなく、歯科医院で働いている人たちすべてということでしょうか?
河野:そうですね。医院に携わっている人たち全員だと思います。佑健会では、全員が患者さんとしっかりした関係性をつくるというのがコンセプトなのですが、それは歯科医師だけでなく、受付、衛生士、すべての人がしっかりとした関係性を患者さんとつくるということなんです。
そこで働くすべての人が同じ方向を向いて、同じ気持ちで患者さんに接する。これが大事なことだと思います。
――河野さんは本書に書かれているようなマーケティングや経営のノウハウについてどのように勉強されてきたのでしょうか。
河野:最初に勤めた歯科医院で学んだのが大きいと思います。そこにいた先生が経営、スタッフの教育、技術という3つを厳しく教えてくれたんです。私自身、最初に勤める歯科医院が勝負だと思っていたので、ラッキーだったのかもしれません。独立したときもその先生の真似から始めました。
独立した後は、広く展開している歯科医院に見学しに行ったりしました。やはり学びは真似から始まるといいますか、真似できるところは真似をする。その上で、真似できない部分が出てくる。それがその人のオリジナルの部分であって、私にもそういう部分があるのだと思います。
また、歯科医院の先生だけでなく、いろんな業界の経営者にお会いする時間をつくりました。それで歯科業界の状況と対比できるようになるわけですが、歯科業界そのものの規模が小さい一方で、他業界の方々が歯科業界に参入してもなかなか上手くいかないという話を聞いて、歯科医師として私が歯科業界をまとめる役目を担っていかなければいけないと考えました。
――河野さんは能動的に他業界から学び、勉強されたりしたんですね。
河野:そうですね。人に会うだけでなく、本も読みましたが、やはり一番勉強になるのは、会って話すことですね。そこにチャンスがあると思っていますし、自分自身の考えをぶつけることもできるから思考の整理にもなるんです。
――では最後に、本書をどのような人に読んでほしいとお考えですか?
河野:もちろん歯科業界の方にも読んでほしいのですが、歯科業界以外の方にも是非読んでほしいと思っています。
あまり難しいことは書いていなくて、明日からできるようなことを書いたつもりです。最近会社全体で元気がないとか、何かちょっと気持ちを変えたいとか、お金が心もとないとか、そういう時期ってあると思うんです。そういう状況に困っている経営者さんがすぐに取り組めることが書かれているので、ぜひ読んでいただいて、真似をしてもらえれば幸せですね。
(了)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。