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長谷十三「言わぬが花、をあえて言う。」

自民党総裁選、テレビ各局が岸田文雄氏をやたらと“ヨイショ”する意外な理由

文=長谷十三
自民党総裁選、テレビ各局が岸田文雄氏をやたらと“ヨイショ”する意外な理由の画像1
岸田文雄氏のインスタグラムより

「こんな大物にスタジオに来てもらったら困る」「去年も感じましたが、すっごい話しやすい方」――。

 フジテレビの情報番組『バイキングMORE』でMCを務める坂上忍氏の、自民党の岸田文雄前政調会長に対する露骨なヨイショがネットで話題になっている。

 その2日前、高市早苗前総務相がスタジオに来た際には、坂上氏は机にもたれかかって肘をつき、眉間にシワを寄せながら話を聞くなどして「態度が悪い」という批判も出た。しかし、岸田氏には直立不動でお出迎え、手を前に組み終始笑顔と、別人のような対応だったのだ。

「まるで“接待”かというほど岸田氏に媚びていて、ちょっと引きましたね。抽象的で、評論家のようなことしか言わない岸田氏は、政治記者の間ではインタビュアー泣かせとしられており、“政界一話のつまらない男”という異名もあるほど。“人はいい”というお世辞はよく聞くが、“話しやすい”なんてのは初めて聞いた」(政治ジャーナリスト)

 では、なぜこんな露骨な「岸田ヨイショ」が起きたのか。全国紙政治部記者は「マスコミは岸田氏を本命視しており、首相就任後初の出演を勝ち取りたいテレビは、どうしてもその下心が出ているのでは」と分析をする。確かに、新首相が初めて出演する番組は高視聴率が約束されている。そこで今のうちから選んでもらえるよう、「うちはMCも出演者もみんな応援してますよ」と媚を売っているというのだ。

 安倍晋三元首相の「桜を見る会」に、ワイドショー司会者やコメンテーターとして出演するタレントや文化人が、大ハシャギで参加していたことは有名だが、あれと同じことが「次期首相」と目される岸田氏にもヨイショ攻撃が行われているというワケだ。

来秋には「岸田おろし」?

 ただ、そういう涙ぐましい努力もあと1年もすればパアになってしまうかもしれない。

 ほんの1年前に「パンケーキおじさん」などとヨイショされていた菅義偉首相がバッシングの嵐で退陣に追い込まれているように、もし岸田氏が首相になっても来年の今頃にはその座から引きずり下ろされているのではないか、と永田町で囁かれているのだ。

 次の衆院総選挙でも自民党は苦戦が予想されているが、実は来年には参院選も控えている。岸田内閣が発足してしばらくは期待感で支持率も上がるだろうが、コロナ対策や経済政策で結果を出せなければ、すぐに菅政権同様に求心力を失っていく。となれば、参院選もかなり厳しい。選挙に勝てない自民党総裁はほどなくクビに追い込まれるというのは歴史が証明している。つまり、来秋には「岸田おろし」の嵐が吹いているかもしれないのだ。

 岸田総裁のもと、自民党がガラリと変わって国民の高い支持を得ているという見方もあるが、残念ながらそれはかなり甘い見通しだ。

 党幹事長の任期制を主張した後、二階氏が辞任したことから、何やら改革のヒーロー扱いをされているが、打ち出している政策自体は、現在の自民党の権力構造を変えるようなものではない。その証に、麻生太郎副総理、甘利明氏などのベテラン勢が揃って支持に回っている。また、高市氏支持を表明している安倍氏に関しても最側近・今井尚哉元首相補佐官(現・米投資大手カーライルグループ・ジャパン顧問)を岸田陣営に派遣していることから、実際は岸田氏支持といわれる。

 つまり、表面的な見え方がちょこっと変わるだけで、“3A”に忖度をしながら政権運営をしていた菅首相と基本的に何も変わらないということだ。たとえるのなら、古いスマホの機種変更をせずにスマホケースを新しく変えただけなのだ。菅政権とそれほど変わらないのなら、今のような批判も続くというワケだ。

日本医師会から毎年カネ

 そこに加えて、菅政権支持率急落の原因である「コロナ対策」も絶望的だ。

 日本特有の「医療ひっ迫」という問題がなかなか改善できないのは、病院経営者の利益を守る医師会に対して、選挙や献金で世話になっている自民党が強く出られないという構造的な問題があることは、多くの専門家が指摘していることだが、これは岸田内閣でも継承される。

 岸田氏の政治団体「新政治経済研究会」には日本医師会の政治団体・日本医師連盟から平成31年3月に50万円、令和元年7月に50万円、同年8月に50万円、11月に50万円、同年12月に50万円という感じで、定期的に政治資金パーティや寄付の形でカネが流れているのだ。

 もちろん、これは氷山の一角にすぎない。医師会にカネや選挙協力で頭の上がらない政治家は、医師会の不利益になるような政策はできない。「医療難民ゼロ」「抜本的改革」と美辞麗句は並ぶが、政治的背景から見ても、岸田氏にこれを本当に実行に移す力はない。

 このような自民党政権の「限界」について日本のマスコミはほとんど切り込まない。しかし、対中国戦線の重要な同盟国として日本の内政を注視するアメリカは冷静に分析をしている。米ニューヨークタイムズは、「安倍政権の前に見られた不安定なリーダーシップの時代に戻るおそれがある」と伝えたほか、ウォールストリートジャーナルも、「毎年総理大臣が代わり、国際舞台で日本の存在感が低下した時期に戻るリスクが高まった」とバッサリだ。

 岸田氏といえば、BSの番組に出演した際に、森友・加計学園問題について再調査を期待させるような発言をした後にそれを否定したことで話題になった。本人の釈明によれば、もともと再調査の必要はないという立場だったが、メディア側が誤解をして報じたという。

 そうなのかもしれないが、今からこんな有様では首相になってから大変だ。一国の首相はちょっとした発言が、国際問題に発展したり、国民の怒りを買ってしまう。「口下手」「説明不足」は政治生命に直結するのだ。

「パンケーキ首相」がわずか1年で使い捨てにされてしまったように、来年の今頃には、ワイドショーで「首相の言葉はまったく響きません」「誤解だというが、自分がはっきりとものを言わないのが悪いのでは」なんてボロカスに叩かれているかもしれない。

「すっごい話しやすい」「メモをとる人って素敵」と媚を売っていたワイドショーが来年の秋には手のひら返しで、どんなことを言っているのか見ものである。

(文=長谷十三)

長谷十三

長谷十三

フリーライター。政治・経済・企業・社会・メディアなど幅広い分野において取材・執筆活動を展開。

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