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学費は年800万円超…ハロウインターナショナルスクール安比ジャパンの全貌

文=A4studio
学費は年800万円超…ハロウインターナショナルスクール安比ジャパンの全貌の画像1
ハロウインターナショナルスクール安比ジャパンのHPより

 元イギリス首相のウィンストン・チャーチルやインド初代首相のジャワハルラール・ネルーらが学んだことで知られる、イギリスの名門パブリックスクール「ハロウ スクール」。今年8月下旬、日本国内で初めての系列校である「ハロウインターナショナルスクール安比ジャパン」が開校し、話題を集めている。

 場所は、スキーリゾートで知られる岩手県の八幡平(はちまんたい)市の安比(あっぴ)高原。全寮制で、授業は英語で行われ、その学費はなんと年間約850万~930万円だという。小学6年から高校3年に当たる7学年制。中国やタイなどアジアを中心に12カ国から生徒が集まるという同校の存在は、地域の活性化や国際交流の拠点になるのでは、と八幡平市からも期待を寄せられているという。

 しかし、いくらイギリスの名門校といえど、年間800万円超という学費に見合う価値があるのかという疑問も抱く。そこで今回は、ハロウ校とはどういった学校で、今日本で同校に入学することにどんなメリット・デメリットが考えられるのかなどについて、国際教育評論家の村田学氏に解説してもらう。

王侯貴族や富裕層の学校として伝統を紡いできたパブリックスクール

 そもそもパブリックスクールとはどのような背景を持った学校なのか。

「イギリスのパブリックスクールというのは、簡単にいうと、日本の私立の中高一貫校と考えていただければいいかと思います。通うのは主にイギリスの王侯貴族や富裕層が中心で、超エリート校という位置付けです。なかでも、エリザベス1世の時代に開校を許された『The Nine』と呼ばれる名門9校が有名で、今回話題になっているハロウ校もこの一校に含まれています。これらの学校は王侯貴族の子弟が学ぶ場所として開校され、これまでに政財界、そして芸術を含め多彩な才能を輩出してきました」(村田氏)

 ハロウ校は「The Nine」のなかでも高い知名度を誇る学校だというが、どんな特徴があるのか。

「ハロウ校の特徴としては、勉強に秀でたガリ勉校というより、オールマイティな教養を高い水準で学べるバランスの良い学校というイメージでしょうか。日本の皇族が通ってらっしゃる学習院を、もっとスポーツ面などで強化した学校だと考えていただくとわかりやすいかもしれません。もうひとつの特徴は、その名の通り海外、とりわけアジアへの分校が多い点ですね」(同)

学業以外の私生活でも教養を育んでくれる、一流の教育プログラム

 ハロウ校を含む、こうしたパブリックスクールの多くが、日本ではあまり馴染みのない全寮制を採用しているが、この制度にはどんな利点があるのだろう。

「全寮制学校の多くは『全人格教育』と呼ばれる教育方法を採用しています。これは、学力だけでなく、スポーツ、音楽などの教養、リーダーシップや協調性を寮生活で学ぶことを目的としたもので、親元を離れ、他人と協力しなければ生きていけない環境に身を置かせることで、自立心を育てるものです」(同)

 そして、全寮制のパブリックスクールを出るということは、それだけで上流階級としての横のつながりを持つことにもなるという。

「これは、パブリックスクールが大英帝国の時代に生まれたことによる影響です。かつてのパブリックスクールには、白人系のイギリス人のほかに、インド人などの学生も多くいたのですが、彼らは将来、大英帝国の植民地の優秀な支配層となることが約束された子どもたちでした。イギリス人の上流階級と同じ学校出身になるということは、その後の植民地支配において融通が利く関係を築きやすかったわけです」(同)

 そんなハロウインターナショナルスクール安比ジャパン、なんと年間の学費が約850万~930万円、サマースクール代なども含めると年間1000万円もかかるというが、この額に見合うメリットはどんな部分なのだろう。

「先ほどもご説明した、上流階級社会への登竜門になるというのがまずありますが、それ以外の具体的なサービスや特徴でいうと、授業は少人数制で、イギリス式の学びを密に習得できます。また放課後のスポーツや美術面でのスキルや教養、その他さまざまな活動の費用も込みになっています。また寮には家庭教師がおり、宿題やわからない部分がないように指導をしてくれるほか、生徒の心身ケアの専門カウンセラーもいます。

 また特筆すべきは、学校における校長と同じくらい偉い『ハウスマスター/ハウスミストレス』という寮長さんがいること。生徒間の動向を細かく見てくれるため、非常に安心感もあるのです。生徒の成績が悪ければ家庭教師に指示を出し、友人関係で悩んでいればカウンセラーに指示を出してくれます。そんなプロフェッショナルが私生活をきちんと管理してくれるので、いじめ問題などが起こりにくいとされています」(同)

 では、8月に日本で開校したハロウ安比校の魅力はどんな部分なのだろう。

「東京ドーム2個分に当たる、約10万平方メートルの広大な安比高原に広がる敷地を有しており、緑豊かな高原の景観は圧巻です。教育内容に関しては、ここまでお話ししてきた他のハロウ校の魅力に加え、デジタル設備も充実しているとのことなので、ハロウ卒業生のライブストリーミング講演や、他のハロウ生との共同制作なども可能になっています」

日本人中学生が入学すると義務教育違反になりかねない…大きな懸念点

 だが、そんなハロウインターナショナルスクール安比ジャパンには、現状かなり大きな懸念があるそうだ。

「ハロウ安比校はインターナショナルスクールという扱いですので、外国人または帰国生など、特別な事情がある生徒を中心にしており、日本人の中学生が同校に入学すると義務教育違反になる可能性があるのです。ですから今後文科省が本校とどのような対策を講じていくのかは注視する必要があり、これが目下最大の懸念点でしょう。

 同校はケンブリッジ国際カリキュラムを採用しています。このカリキュラムで高校まで学ぶと、成績によっては日本の大学も受験する資格を持つことができます。今後、ハロウ安比校がインターナショナルスクール認定組織に認められれば、文科省が指定する認定校となり、同校卒業生は大学入学資格を持てるようになります」(同)

 今後、こうした全寮制のパブリックスクールは日本でも増えてくるのかも気になるところである。

「海外のインターナショナルスクールの業界団体誌が5、6年前に出したレポートによると、日本は治安も良く今後富裕層も増加傾向になってくるので、これからはマーケットとして有望だ、と語られていました。今回のハロウ安比校の開校は、こうした動向予想が実際に形になった最初の例だと感じています。このほかにも、今年5月には名門インターナショナルスクールのノースロンドンカレッジが日本における開校計画を発表していますし、2023年9月には千葉県柏市に、『The Nine』の一角を担う、イギリスの名門パブリックスクールであるラグビースクールが日本校を開校予定です」(同)

 今後、日本にはパブリックスクールの名門校が続々と開校していく流れができるのかもしれない。

(文=A4studio)

A4studio

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エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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