5月7日、千代田区のイイノホールで開かれた第31回森と花の祭典-「みどりの感謝祭」に秋篠宮家の佳子さまが臨席された。皇室関連施設の外で開かれる行事へのご臨席は1年半ぶりだった。同じ期間に三笠宮家の彬子さまが行事などに臨席された回数は8回。お立場や行事の違いがあるので一概に比較できないが、佳子さまの公務が少ないとの指摘も以前から多い。
「現在、佳子さまが関わられておられる主なものは、日本テニス協会、みどりの感謝祭、そして勤務先である全日本ろうあ連盟の3つほど。6月に広島で行われた全日本ろうあ連盟主催の『全国ろうあ者大会』には秋篠宮ご夫妻がご臨席されたものの、佳子さまはご臨席されず、これを疑問視する声や、佳子さまが秋篠宮さまとご一緒になる公務を拒否されておられるという報道まで出ている。
佳子さまの公務が少ない理由について、佳子さまのご意向がはたらいているためだという報道もあるが、佳子さまに限らず、皇族がご本人の意思で公務を取捨選択なされる自由度は高いとはいえず、基本的には宮内庁によって振り分けられた公務を粛々とこなされるという表現が現実に近い。
特に佳子さまが大学をご卒業された2019年には平成の天皇の退位と現天皇の即位という大きな行事があり、同年から翌年にかけては、たて続けに行われる関連行事が最優先され、佳子さまも数多くの公務やその準備に忙殺されておられた。そうしたなかで昨年には全日本ろうあ連盟に就職されたばかりということもあり、いきなり多くの公務を入れることは難しく、また、皇族には世間の目には触れない皇室施設内でのご公務的も多いため、佳子さまが時間を持て余しておられるというようなイメージは正しくないだろう」(皇室を取材する記者)
皇族数の減少
皇族の公務について法的定義はない。国事行為は憲法第4条第1項に「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」と規定されているが、皇族の公務は書かれていない。皇室典範にも書かれていない。式典や行事への臨席が継承されている行為が、一般に公務と区分され、宮内庁のホームページにも開示されている。このうち宮中行事など皇室関連施設内での公務は一部しか報道されないので、世間の目からは見えにくい。
この問題について、日本近現代史が専門の名古屋大学大学院・河西秀哉准教授は「佳子さまの公務が少ないといわれている問題には、式典への臨席など見えるところが少ないという前提がある。目に見えないところで、人に会うとか、話を聞くなどの活動をされていることも考えられる。本当に少ないのかどうかは評価がなかなか難しい」と指摘したうえで、目に見える公務の数には皇族数の減少も影響しているのではないかと推察する。
「将来、佳子さまはご結婚によって皇籍を離れるでしょうが、社会状況やご自分の関心などを踏まえて公務を増やした場合、どなたが引き継ぐのかという問題が出てくる。皇族の数が多ければ引き継ぎのご心配はないだろうが、皇族の数が減っているので、公務を増やすことは皇室全体の重荷になってしまう。だから引き受けられないという事情もあるのではないでしょうか」(河西氏)
秋篠宮家バッシングの背景
佳子さまは国際基督教大学ご卒業に際して、公務について「公的な仕事は,自分が何をしたいかで選ぶものではなく,依頼を頂いたものを一つ一つ丁寧に行うという考え方は父からのアドバイスであり,母と姉も共通して持っている認識であると思います」と文書で回答されている。公務の数には秋篠宮家や宮内庁の方針も反映されているのだろうか。
今年に入ってからの佳子さまのご活動で開示されているものは、次の通りである。
・1月:4件
元明天皇千三百年式年祭の儀(皇霊殿)、元始祭の儀(宮中三殿)、昭和天皇祭山陵に奉幣の儀(武蔵野陵)、孝明天皇例祭の儀(皇霊殿)
・2月:1件
熊本市長、国土交通省都市局長、熊本県土木部長ご説明(「令和3年度全国都市緑化祭」について/宮邸でオンライン)
・3月:5件
「令和3年度全国都市緑化祭」記念植樹にあたりお手植え(赤坂東邸)、春季皇霊祭の儀(皇霊殿)、春季神殿祭の儀(神殿)、「令和3年度全国都市緑化祭」式典並びに記念植樹ご臨席(宮邸でオンライン)、第38回全国都市緑化くまもとフェア庭園出展コンテスト受賞者並びに第9回みどりの社会貢献賞受賞者とのご接見(オンライン)
・4月:3件
神武天皇祭皇霊殿の儀(皇霊殿)、林野庁長官、同海外森林資源情報分析官ご説明(「第31回森と花の祭典-「みどりの感謝祭」式典」について)(赤坂東邸)、産経児童出版文化賞選考委員、産経新聞社新プロジェクト本部長ご説明(「第69回産経児童出版文化賞」について)(赤坂東邸)
5月は冒頭に紹介した「みどりの感謝祭」ご臨席ともう1件の2件で、1~5月の5カ月で15件である。件数の大小はともかく、秋篠宮家に対しては、長男の悠仁さまの筑波大学附属高校へのご入学などもあり、ひたすら風当たりが強い。
「平成のある時期までは、現在の天皇皇后両陛下と長女、愛子さまが叩かれ、秋篠宮家は佳子さまが麗しいと報道されるなど人気があった。両家の人気がシーソーゲームのように逆転したのは、眞子さまのご結婚問題がきっかけになった」
そう振り返る河西氏は、秋篠宮家バッシングが起きている背景には、秋篠宮家が国民の憂さ晴らしの対象になっていることがあると見ている。秋篠宮家にとって3人のお子さまが次々に狙い撃ちされる状況は、逐一反論できないお立場だけにアンフェアだろう。
「自分さえ良ければよいという時代の風潮の中で、上皇陛下と上皇后陛下は各地の被災地を何度も訪問されるなど“私”を犠牲にして“公”に尽くされたように見え、国民の支持を得た。対照的に眞子さまはご結婚をめぐる問題について、きちんと説明しないまま、ご自分の意思を優先させたような印象を与え国民の支持を低下させた。
しかも、コロナ禍で多くの国民は鬱積している。国民なら誰もが知っている存在として皇族が不満のはけ口の対象となって、秋篠宮家を叩く要素がどんどん引き出されています。秋篠宮家に関するヤフーニュースのコメントを見ると罵詈雑言だらけです」
かりに眞子さまがご婚約への経緯をきちんと説明し、宮内庁が悠仁さまの高校合格について透明性をもった説明をしていれば、バッシングは沈静化したかもしれない。
秋篠宮家にとって次の主なライフイベントは、佳子さまのご結婚と悠仁さまの大学ご進学である。不透明な経緯が発生すれば、再びバッシングの対象にされかねないが、まずは現下の状況から潮目を変えるには何が問われるのだろうか。
「秋篠宮さまと悠仁さまが、公務を含めて誠実な行動を積み重ねて国民の支持を得ていくしかないのではないか。とはいえ、即効性があるとは思えずなかなか難しい」(河西氏)
秋篠宮家の苦悩は続く。
(文=Business Journal編集部、協力=河西秀哉/名古屋大学大学院准教授)