新型コロナウイルスの第6次感染拡大の下、大学入学共通テスト試験会場近くでの無差別刺傷事件や、IT機器のツールやサービスを悪用してのカンニング未遂など、例年にも増してトラブルが続発する受験シーズンになっている。それでも現在までのところ全体への影響は限定的であるのは、不幸中の幸いといえるのかもしれない。
今年の受験に関して、早くから話題を集めているのは、高校に進学する秋篠宮悠仁親王の動向だろう。報道によれば、首都圏有数の進学校である筑波大学附属高校への入学が有力視されているようで、13日には同校を受験したとも報じられているが、各種報道内容には皮相な印象を受けるものが多い。これも進学先である筑波大附属高への評価が、いささかアバウトであるからだろう。共学校としては(進学実績は)国内トップクラスという形容も見られたが、以前ならばいざ知らず、現在では正しい認識ではあるまい。渋谷教育学園幕張もしくは都立日比谷のいずれかになるはずだ。
少子化の下でも進学校の人気は高く、難易度は高止まりしている。なぜ受験生の支持を集めるのか。ある学習塾の運営者はこう答えてくれた。「最難関大学に進む確率を高めるため」。即物的だが、腹に落ちる見解である。やんごとなき方でも庶民でも、つまるところ求めているものは、卒業後の進路、華々しい実績なのだろう。
では、その確率とはどの程度のものなのか。進学校の頂点に立つ開成高校と、筑波大附属高校と中学入学時偏差値で同水準とされる東京学芸大附属高校、それぞれの進学実績から分析を試みたい。両校をサンプルにしたのは、大学の合格者数とともに、実際に進学した者の数までウェブ上で開示している数少ない有名校であるからだ。延べ人数になる合格者数よりも、進学者数のほうがより実態を反映していることは明らかであろう。なお筑波大附属の進学者数は公開されていない。
国立の進学校の特徴
まず開成である。最難関大学を旧帝大と一工(一橋大・東京工業大)、旧帝以外の国公立大学医学部および早稲田大、慶應義塾大と線引きをして、2021年度のすべての進学者数の総計は271人だった。同校の1学年の在籍者数は400名前後であるから、およそ7割が最難関大学・学部に進学することになる。
続いて学芸大附属。同じ基準で見た難関大学の進学者数は180人だった。同校の1学年の在籍者数は330人前後なので、半分以上は頂点を形成する大学・学部に入学するかたちになる。開成には及ばないものの、国内有数の進学力を持つことはいうまでもない。
ただ一方で言えるのは、いかに高い進学力を持つ高校であっても、最難関大学への進学は、あまねく保証されるものではないことだろう。先の数字を裏返すならば、開成で1割、学芸大附属でも3割程度は最難関大学には進んでいない。もちろん両校の現役・既卒者のほとんどは、最難関に次ぐクラスの国公私立大学に入っているが、それは頂点を形成する進学校でなくとも手の届くところである。よくいわれるように入学は始点にすぎず、在学中もたゆまぬ努力が必要とされるのだろう。
悠仁親王の入学する筑波大附属など国立の進学校については、気になる指摘もある。
「このタイプの学校は立ち位置から、私立校のように受験を最優先する教育を行っていない。一見すると自由な雰囲気に映るが、ほとんどの生徒は予備校や家庭教師など外部のサポート体制を活用して受験に備えている。マイルドな校内の環境を真に受けてしまうと不本意なことになる」(学習塾運営者)
若き宮様の卒業後の進路については、すでにさまざまな風評は流れているが、さらなる高みを目指すならば、受験に特化している私立進学校の生徒以上に覚醒する必要はあるようだ。
(文=島野清志/評論家)