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難関・上智大学、なぜ実志願者が減少?優秀な学生を選別、MARCH人気も影響か

取材・文=うらま/A4studio
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上智大学のHPより

 上智大学の実志願者数が減少の一途をたどっている。上智大は英語力の高い学生が集まる大学として知られており、私立文系大学のなかでも早稲田大学・慶應義塾大学に次ぐトップクラスの偏差値を誇る有名大学なのにもかかわらず、受験生が減り続けているというのだ。

 上智大は2021年度入試から実施した入試改革で、これまで以上に英語力を重視した試験を開始。大学入学共通テストを活用した入試や、上智大と日本英語検定協会が共同開発した英語運用能力測定試験「TEAP」といった、英語外部検定試験の結果を利用した入試方式を導入している。

 そんな上智大だが、18年度入試では約1万8000人いた実志願者は、19年度は約1万6000人、20年度は約1万5000人と減少。さらに入試改革が行われた21年度は約1万3000人、今年度(22年度)は約1万1000人と、年1000~2000人のペースで減少が加速しているのである。

 ちなみに「実志願者数」とは、例えば1人の受験生が1つの大学に3学部併用で出願していたとしても、学部ごとにカウントして3人とするのではなく、あくまで1人としてカウントした場合の数値。つまり実志願者数は、その大学を受験するリアルな人数を示しているというわけだ。

 ではなぜ、上智大は急激に求心力を失いつつあるのだろうか。大学ジャーナリスト・石渡嶺司氏に、上智大を志願する受験生が減っている要因や、上智大が今後どのようになっていくかなどについて解説してもらった。

上智大、実志願者数の減少はMARCHの影響?

 まず上智大の入試は、早慶と比較してどのような特徴があるのか。

「私立大トップとして早慶と肩を並べる上智大は、他の大学と比べて入試形式が全くもって違うというわけではありません。ですが早慶の入試よりも英語に特化した試験が特徴的。たとえば、英語の4技能(リスニング、リーディング、ライティング、スピーキング)を推し量るため、民間試験の結果を共通テストのスコアにする試験方法を採用しています。ほかにもTEAP利用型という、TEAP試験と上智大独自の試験を併用した受験が可能です。そのため、他の私立大学に見られる3教科試験や、共通テストのスコアで合否が決まる試験の形式とは少し違うのが、上智大の入学試験なのです」(石渡氏)

 21年度の大学入試改革後も上智大の実志願者数は減少傾向に歯止めはかかっていないようだが、その背景にはどのような事情があるのだろう。

「もともと上智大は首都圏の学生から人気がある大学ですが、一方で全国的な知名度は低いため、早稲田大、慶應大に比べると地方からの受験者数は少なめ。加えて大学入試改革によって受験の難易度が上がったことで、さらに狭き門になったという印象があります。

 また、MARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)の存在も実志願者数の減少に少なからず影響を及ぼしているでしょう。受験生にとってMARCHは学部数が多く、大学の設備や規模も大きいため、選択肢の幅という観点から自ずと受験校として浮かんでくる学校です。

 MARCHのなかでは立教大の規模が一番小さく、学生数は1万8000人となっていますが、f-Campusという他大学の授業が受講できる制度が導入されているなど、大学の規模以上に授業の選択肢が幅広いです。一方で上智大の学生数は1万3000人と立教大よりさらに小規模。ですから間接的ではありますが、MARCHが規模の大きさから人気が高まり、その余波として上智大の実志願者数減少の一因になっていると思われます」(同)

大学入試改革で実志願者数が減ることは想定どおり

 上智大は21年度に行われた大学入試改革以降も実志願者数が増えることはなかった。これは改革が不発に終わったということなのだろうか、それとも実志願者数減少に歯止めがかからなかったのも想定内なのだろうか。改革を行った上智大の狙いが気になるところだ。

「まず21年度の大学入試改革は、英語のスコアを重視する入試改革を行うことで、志願者の英語力を推し量ることが狙いの一つだといえます。ですが、英語関連の民間試験の受験者数は決して多くはなく、高校卒業レベルの学力といわれている英検二級ですら取得者が少ない状況です。そんななかで、上智大が求める英語のレベルは英検準一級という高水準。要するに上智大は、実志願者数のさらなる減少と引き換えに、英語の能力が高い優秀な受験生を集めたかったのでしょう。

 大学入試改革をきっかけに志願者数が増えた青山学院のような大学がある一方、実は上智大のように志願者数が減ることを前提にして改革を行った大学も多いんです。例えば早稲田大の政治経済学部も、大学入試改革で新たに数学を受験科目に加えたことで、志願者数が減っていますからね。

 このように、難関大学は大学入試改革により受験生にあえて負荷をかけて、自分たちが求めている質の良い優秀な受験生が集まるように、ある種のふるいに掛けているといってもいいでしょう。複数の大学を志願する受験生にとって、大学別に全く異なる対策を行うことは負担が大きいため、上智大の実志願者数が減少したのは自然な流れといえます」(同)

 では入試改革の結果、実際に上智の求める英語力の高い学生は入学してきているのだろうか。

「正確なことは、大学入試改革を行った時点での入学者が卒業した後でないとわかりません。その学生たちの在学中の英語の成績や、就職によるデータが集まっていないからです。ですが上智大の職員から、大学入試改革後は英語の成績が良い学生が多いという話は聞きましたので、思惑どおりの効果が出ているのかもしれません」(同)

早慶に並び、追い抜くほどの人気が出る可能性も

 入試改革で英語力の高い学生を集めようとする上智大だが、23年度入試より共通テスト利用方式の入試で3教科型を実施するとの発表もあった。

上智大は、英語重視型の入試を導入して英語力が高い学生を引き入れたい一方、3教科型の入試を取り入れることによって、減少傾向にある実志願者数を増やしたいのではないでしょうか。今回導入される3教科型は、いわゆる文系型といわれる試験方式。文系型を実施している私立大学は多いため、受験生の立場からすると上智大の受験勉強に費やす時間や手間が減ることになり、他大学と併願しやすくなります」(同)

 英語重視型の入試導入で実志願者がさらに減るのは織り込み済だったとはいえ、大学経営としては実志願者が多いに越したことはない。英語重視型の入試で英語力の高い質の良い学生を集めつつ、実志願者数を増やすための間口の広い入試も導入するという、両輪の対策を取ろうとしているわけだ。

 最後に、このようなたび重なる入試方法の変更を通して、これからの上智大は受験生にとってどのような大学になるのか。

「上智大は根強い人気のある大学です。キャンパスの立地、就職先、卒業生の活躍というポテンシャルを鑑みると、不人気になるということはまずないでしょう。現在は実志願者数がかんばしくないですが、3教科型の入試導入の効果で人気上昇に転じる可能性もあります。そのため、大学入試改革の結果が発表され次第、また早慶に並び、さらに追い抜かすくらいの人気が出てくるのではないか、というのが私の予想です」(同)

 一見すると、実志願者の減少から人気が低下しているように思える上智大。だが実際には入試改革を経て、より高いレベルの受験生を集めるための施策を取っている段階であり、計画どおりなのかもしれない。近い将来に人気を盛り返し、早慶を追い抜けるかどうか、今後も注目していきたい。

(取材・文=うらま/A4studio)

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エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
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