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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

ソニー、純利益1兆円超えの衝撃…なぜ復活できたのか?事業の多角化で成果

文=大﨑孝徳/神奈川大学経営学部国際経営学科教授
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ソニーの社屋

ソニー、2021年3月期決算で初となる純利益1兆円超え」とのニュースは衝撃的だった。同時に、その要因がコロナ禍における巣ごもり需要に起因する、好調なゲーム事業や大ヒットアニメ『鬼滅の刃』にあると聞き、興味を失ってしまった。なぜなら以前にも、好調な映画『スパイダーマン』の興行収入により一時的に業績が回復したことがあり、偶発的な要因によるものと理解してしまったからである。

 しかし、2020年度のソニーの業績を改めて調べてみると、興味深い点が見つかった。まずソニーの事業は、ゲーム&ネットワークサービス、音楽、映画、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション、イメージング&センシング・ソリューション、金融の大きく6つに分類されている。

 もっとも売上高が大きい事業はゲーム&ネットワークサービスで、以下、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション、金融となっている。営業利益に注目すると、もっとも大きい事業はゲーム&ネットワークサービスであり、以下、音楽、金融と続く。確かに、ゲーム&ネットワークサービスや音楽事業の営業利益率は高いが、ほかの事業も7%から10%程度とバランス良く収益を上げている。

 筆者は、金融などソフト事業に関しては高い利益率を確保できているものの、祖業ともいえるエレクトロニクス・プロダクツ&ソリューションでは収益を上げることが難しくなっていると認識していたが、実際は好調な数字となっている。

ソニーのテレビ

 時代をさかのぼり、ブラウン管テレビの時代、ソニーはトリニトロンに代表される高い技術により、国際市場で強い影響力を保持していた。しかしながら、よくある話であるが、ブラウン管において圧倒的な存在であったがために、液晶の開発に大きく出遅れてしまう。結果、液晶パネルを外部から調達して自社ブランドのテレビを販売することになってしまった。

 こうした状況を見て、筆者はソニーというブランドの力により、しばらくは持ちこたえることができても、早晩ダメになってしまうのではないかと予想していた。実際、テレビ事業の業績は極めて深刻な状況が続いていた。

 しかし、近年、こうしたテレビ事業さえ回復基調にあるようだ。台数を追うのではなく、独自の映像や音響にかかわる技術を駆使し、高級路線のテレビとして差別化に成功しているとのこと。実際、大手家電量販店に出向くと、大きな売り場が確保されており、強い存在感を放っていた。

 さらに、細かい点ではあるものの、他社のテレビが風景などを映しているなか、ソニーのテレビの画面では『鬼滅の刃』やソニー・ミュージックエンタテインメントに在籍する人気アーティストである「YOASOBI」の映像が流れており、明確な売り場における差別化が実現していた。

改めて多角化の魅力を考える

 事業の多角化の一般的なメリットとして、まず既存の経営資源の有効活用が挙げられる。代表的な経営資源には生産設備、人材、技術、商流などがあり、これらの活用により他社よりも有利にビジネスを展開するわけである。また、変わりゆく市場環境に対して、幅広く事業を展開することはリスクを低減し、企業の存続に貢献するともいわれる。

 さらに、事業間のシナジーもよく指摘されるポイントではあるものの、ソニーの事業間におけるシナジーは大変興味深い。早期より、レコードにかかわるビジネスを展開していたことが、その後の映画やゲーム、さらには保険など、広い意味でのソフト事業の礎になっているのではないか。

 こうした戦略の構築は、もはやアートの領域ともいえなくはないが、それでもなお一連のストーリーの構築、タイミング、事業領域の決定など、大いに検討すべき興味深いポイントであるように思われる。
(文=大﨑孝徳/神奈川大学経営学部国際経営学科教授)

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

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