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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

コンビニのアイスコーヒー、意外な活用法…コーヒーを注がない人が増えている?

文=大﨑孝徳/神奈川大学経営学部国際経営学科教授
コンビニのアイスコーヒー、意外な活用法…コーヒーを注がない人が増えている?の画像1
「Getty Images」より

 セブン-イレブンを中心としたコンビニエンスストアから、”コンビニ・コーヒー“が世に出て久しい。筆者においても、コンビニに行く主たる理由のひとつにコーヒーの購入がある。こうしたコンビニ・コーヒーにおいて、さまざまな事件や事象が起きている。

 コンビニ・コーヒーに関する事件として、2019年に福岡県で起きた、コーヒー100円の料金しか支払っていないにもかかわらず、カフェラテ(150円)を注いだ男性が逮捕(のちに不起訴処分)されたことを覚えている方も多いかもしれない。その後もレギュラーサイズを購入し、ラージサイズのコーヒーを注ぐといった事件も起きているようである。せいぜい数十円分を得しようとして、不正をはたらく姿勢には多くの人が呆れ果てたことだろう。

 立場が変われば、ものの見方は変わるものであり、たとえば筆者の知り合いである工学系の研究者は、なぜレジとドリップマシンをシステムでつなぎ、そうした不正が起きないように制御しないのか、という点に非常にこだわっていた。いかにもエンジニア的発想である。

 また、ネット上では、仮に押し間違えても逮捕されてしまうのか、という法律的視点から盛り上がっている。もっとも、逮捕された人たちは故意の常習者ばかりのようではあるが。

 筆者はもちろん、わずか数十円のためにここまでするか、という呆れもあるが、それ以上に人の善意に基づく行為やシステムを逆手に取るような行為に憤りを感じる。もちろん、先のエンジニア的発想に立ち、制御することは可能だろうが、そうしたコストは本来、必要なく、極めて無駄であると感じる。こうした無駄は社会全体で見れば、かなりのコストになっているはずだ。

アイスコーヒーを購入したのに”コーヒーを注がない”理由

 一方、コンビニ・コーヒーに関して真逆の事象も確認できる。

「コーヒーを購入したにもかかわらず、注がない消費者がいる」というのである。みなさんは理解できるだろうか。近年、アイスコーヒーを注文したものの、コーヒーを注がず、そのままカップを持ち帰る消費者が増えてきているらしい。その理由として、家に帰り、コーラやアルコールなどを注ぎ、飲むとのこと。家の冷蔵庫に大量の氷を入れるスペースがない、カップを洗わなくてよい、あのカップの氷がおいしいといった声があがっている。

 このニュースを耳にし、筆者はこうした消費者行動に大変驚いた。「なんと、もったいない。氷くらい家で簡単につくれるはず」と感じたからだ。

 しかし、よく考えると、たとえば、筆者も以前はよく2リットルのペットボトルのお茶を購入していた。最近、重いものを持ちたくないので、ティーバッグ式のお茶に切り替え家でつくっているが、それでもなお自らお茶の葉を沸かして飲んでいる人からすれば「割高でもったいない」といった意見があるだろう。”消費者が労を惜しむ分だけ支払う金額は増えていく”という当たり前のことを改めて実感する。

 世の中には支払った以上の価値を得ようとする者もいれば(もちろん犯罪行為は問題外だが)、その一部を平気で放棄する者もいる。しかも、常識で判断すれば、アイスコーヒーという商品においてコーヒーは主たる構成要素であり、実に奇妙な話である。

 しかし、商品の価値は各消費者こそが判断するものであり、第三者がケチをつけるような話ではない。むしろ、こうしたニッチな声を大事にするところからイノベーションが生じることも少なくはなく、企業は細心の注意を払うべきであろう。
(文=大﨑孝徳/神奈川大学経営学部国際経営学科教授)

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

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