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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

「多様性に富む組織」は本当に必要なのか?耳当たりの良い言葉の意外な落とし穴

文=大﨑孝徳/神奈川大学経営学部国際経営学科教授
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「Getty Images」より

多様性のある社会」という言葉を、最近よく耳にする。それゆえ、多様性に富む組織がこれから重要になるともいわれている。確かに、筆者も社会における多様性のようなものを実感するし、そうした環境に対応するために、多様な価値観を持つ人が集まる企業が求められることを否定するつもりはない。

 しかし、何事にもメリット・デメリットは存在する。多様性に富む組織に関して、まず筆者が勤める大学のゼミを事例に考えてみたい。

 正直、これまで多様性に富むゼミを構築しようと考えたことはない。しかし、人にはいろいろな個性があり、それを尊重して人柄や能力よりも”やる気”重視で選考している。といっても、ゼミ生と筆者とで共同して面接を行っているため、”志望者のやる気を重視して選考しよう”とゼミ生たちに声をかけているのが実態である。

 ゼミ生による選考の結果を見ると、明るく、ハキハキとよく話す志望者が高く評価されているようだ。もちろん、こうした点は重要なポイントであるが、この業界で20年を超えた筆者の経験からすると、その後のゼミ活動において、こうした学生のなかにはギャップが大きい者も少なくはない印象を受ける。

 もちろん、最後まで活発にやり遂げる者も多いが、合格したこと自体に満足し、その直後に別人と化す者、グループワークにおいて柔軟な対応ができずに完全にやる気を失ってしまう者も少なくはない。

 一方、選考において、表には、やる気をあまり出さないが、しっかりと考え、丁寧に話すような学生は、やはり粘り強く最後まで頑張るケースが多いように思われる。しかし、スピードに劣る場合が多いかもしれない。

 グループワークによる研究活動において、思慮深い学生ばかりだと、なかなかテーマすら決まらず、時間だけが過ぎてしまい、逆に活発な学生ばかりだと、スピード感はあるものの、立ち止まってしっかり検討すべきポイントにすら何ら考慮することなく、問題の本質には程遠い、薄い内容の研究に陥りがちである。

 よって、こうした学生たちがバランス良くミックスされたチームづくりは成果を上げるうえで極めて重要なポイントである。この点は多様性の利点と関連することかもしれない。

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