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三菱商事と伊藤忠、石炭権益から軒並み撤退…脱・化石燃料ブームに懐疑論も

文=編集部
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「Getty Images」より

 住友金属鉱山住友商事がチリ北部のシエラゴルダ銅鉱山の権益をオーストラリアの資源企業、サウス32に2500億円で2022年3月末までに譲渡する。同銅鉱山の権益はポーランドのKGHMポルスカ・ミエズが55%を持ち、住友金属鉱山が31.5%、住友商事が13.5%保有する。サウス32への譲渡額はそれぞれ11億9000万米ドル、5億1000万ドル。銅生産量や銅価格など一定条件を満たせば、追加的にそれぞれ最大3億5000万ドル、同1億5000万ドルを25年末まで受け取ることで合意した。

 追加分を含めて住友金属鉱山は15億4000万ドル(1700億円)、住友商事は6億6000万ドル(725億円)で権益を売却することになる。住友鉱は11年、5億ドルを投じ、住友商事と共同でシエラゴルダ銅鉱山の開発に参画、14年から操業を開始した。銅価格の下落や開発費の膨張にあえぎ、16年3月期、17年3月期に合計で2500億円の減損損失を計上。住友金属鉱山の決算は、両期とも最終赤字に転落した。

 シエラゴルダ銅鉱山は、住友金属鉱山が権益を持つ銅鉱山のなかでは米モレンシー(権益は45%)、南米ペルーのセロ・ベルデ(25%)に次ぐ大きさだ。他の銅鉱山やニッケル生産など成長性の高い開発案件を優先すべきだと判断した。

 銅は脱炭素の流れに乗っている。1台あたり80~90キログラムを使うとされる電気自動車(EV)などでの利用が進む。銅価格も21年5月に過去最高を記録した。シエラゴルダ銅鉱山の権益は売却するが、引き続きほかの銅鉱山を含めた開発に力を入れるという。

 住友金属鉱山は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)から豪州北東部のクイーンズランド州のマウントアイザ東地区の銅探鉱事業を引き継ぐ。対象地区で高品位の銅や金を含む地盤が見つかっている。

 JOGMECが鉱区を持つ現地の探鉱会社と19年に結んだ共同開発契約では、24年3月末までに計600万豪ドル(約5億円)の探鉱費用をJOGMECが負担することで、60%の権益を取得できる。住友金属鉱山が探鉱事業を引き継ぎ、採算性を見極め、事業化の可否を判断する。

 住友金属鉱山は脱炭素の流れを受けて、電力消費を減らせる半導体の基板となるウエハーを21年度から供給する。ウエハー素材に炭化ケイ素(SiC)を採用した。電力の損失を従来品と比べ約1割抑えEVの航続距離を延ばせるほか、価格も1~2割安くできるという。

 今後は電池材料のほか、インドネシアで検討しているニッケルプラントへの大型投資など、戦略的なポートフォリオの再構築を進める。住友商事は米シェールオイル開発事業からも撤退した。20年度までにペンシルベニア州で保有していた権益を手放した。残ったテキサス州の権益も米国の石油開発会社に譲渡した。

 投資判断を下す際に、ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)に基づく分析が世界的に重視されるようになった。こうした企業分析に基づき、ダイベストメント(投資撤退)の動きが強まってきた。世界の投資マネーは2割が脱炭素へ向かう。投資先の選別も厳しくなっており、資源の権益からの撤退は待ったなしだ。

三菱商事、伊藤忠も石炭権益を売却

 発電用石炭(一般炭)については三菱商事がすでに19年までに保有していた権益をすべて売却した。三菱商事はベトナムで計画していた石炭火力発電プロジェクト・ビンタン3からも手を引く。

 これに続き伊藤忠商事も一般炭権益を売り渡す。主力の南米コロンビアに保有する鉱山権益を4月に売った。年間生産量は620万トンで伊藤忠が保有する一般炭の権益の8割にあたる。残る2割を産出している豪州の2つの鉱山も23年度中に処分する。

 まず、豪州東部のラベンスワース・ノース炭鉱の権益を同炭鉱に出資するスイスの資源商社、グレンコアに売却することで合意した。20年度の持ち分生産量は90万トンだった。三井物産はモザンビークのモアティーズの炭鉱事業と炭鉱事業に関連する鉄道・港湾の権益を共同経営するブラジルの資源大手、ヴァーレにそれぞれ1ドルで売った。インドネシアのパイトン石炭火力発電所は22年3月期中にタイの企業に売り渡す。業績予想には織り込み済みだ。

 発電事業でも脱石炭が進む。発電事業でリードしてきた丸紅は石炭火力の総発電量が300万キロワット(18年度時点)あったが、30年をメドに半減する予定だ。

オランダの大手年金基金、化石燃料企業への投資をストップする

 オランダの大手年金基金ABPは10月26日、化石燃料に関連する企業への投資をやめると発表した。石油やガス、石炭の生産に携わる企業が対象。総額150億ユーロ(2兆円)を超す見込みで、23年1~3月期までに大半の売却を終える。今回の決定に伴う売却の規模は運用資金全体の3パーセントと少ないが、今後、電力や自動車、航空といった化石燃料を多く使う企業のエネルギー転換や再生可能エネルギー関連への投資に力を注ぐとしている。

 化石燃料関連からのダイベストメントは「株主が入れ替わるだけ」といった懐疑的な見方もあるが、世界有数の巨大年金基金の方針の転換が他の投資家の判断に影響力を及ぼすことは間違いない。

(文=編集部)

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