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経団連「テレワーク見直し」提言は強制出社への布石?国の実施企業名公表に弊害も

文=編集部
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日本経済団体連合会公式サイトより

 日本経済団体連合会は8日、第二次岸田文雄内閣(10日も発足の予定)に対し『感染症対策と両立する社会経済活動の継続に向けて』とする提言書を提出した。提言に政府によるコロナ禍でのテレワークなど出勤者抑制の見直しに触れる部分があったことから、SNS上では経団連に対する批判の声が上がった。

 朝日新聞デジタルは同日公開の記事『テレワークなどで出勤者7割減「見直すべき」 経団連が政府に提言』で以下のように報じる。

「経団連は8日、政府が新型コロナ感染拡大対策として呼びかけてきたテレワークなどによる『出勤者数の7割削減』について、『科学的な知見』を踏まえ、なくしていく方向で見直すべきだとする提言を出した」

 さらに同記事によると、経団連の十倉雅和会長は会見で「(抑制される出勤者数が)一律だと、いろんなところで経済活動を妨げる」などと述べ、「(テレワーク自体は)やってみて非常によかった、という意見もかなりある」とも語ったのだという。

そもそも提言書には何が書かれていたのか

 Twitter上では一連の報道を“従業員の強制出社への布石”と捉える動きが広がり、「経団連なんて確実に出社正義派。やめて。こちらは、テレワークで効率上がってます」「せっかく働き方が変わってきたのに、古い考えを守ろうとする老害組織」などと経団連に対する反発の声が急速に拡散された。

 そもそも経団連の提言書はどのような内容と趣旨だったのか。

 経団連が公開している提言書は、「次の感染期に備えて、国や自治体が医療人材や病床を確保すること、病床調整・入院調整等に関する強い指揮権限を有する体制を整備すること」などを求めた「①医療提供体制の再構築」と、ワクチンと治療薬の有効活用した社会的活動の継続を要請する「②科学的知見に基づく社会経済活動の活性化に向けた政策の展開」の二つで構成されていた。

 一連の報道で触れられているのは②の「医療提供体制の整備による緊急事態宣言の再発出の回避」の項目の一部分だ。原文ママで引用する(下線は編集部)。

<今後、「第6波」が到来し、感染者数が再び増加する可能性はあるが、すでにワクチン接種率は7割を超え、中和抗体薬に加えて、近く経口治療薬等も承認申請されることが見込まれる。これにより新規感染者が増加したとしても重症者数は以前のようには増えないことも想定される。こうした想定を踏まえれば、今後は感染拡大期においても、これまでのように社会経済活動を大きく制限する緊急事態宣言の発出は可能な限り回避するべきであり、仮に今後新たな変異株等の出現・流行等により、重症患者等が想定以上に増加した場合にも、臨時の医療施設の整備など、機動的な医療体制の拡充などにターゲットを絞った対策を実施すべきである。特に、これまで人流抑制や接触削減の観点から、テレワーク等による出勤者数の削減が求められてきたが、今後は、「出勤者数の削減」目標について、科学的な知見を踏まえ、見直すべきである。同様に、旅行、飲食、イベント等の各種制限についても、実証実験等を通じて得られた科学的根拠に基づいて適切に対応すべきである。>

 物議を醸している“出勤者7割減見直し”報道に関し、経団連広報本部の担当者は「提言書に書かれていることが趣旨のすべてです」と話し、多くを語らなかった。

経産省の「7割削減企業公表」に難色?

 政府による“出勤者数7割削減”の協力要請は、あくまで「お願いベース」だ。緊急事態宣言発出中も事業継続に影響が出るため、テレワークに移行できなかった事業者はたくさんある。政府の要請の有無にかからず、各事業者がそれぞれの責任でコロナの感染抑制対策を行いつつ、もっとも効率的な勤務体制を取ればいいのではないか。

 政府による一律出勤者削減目標の見直しに関して、今回の提言書で経団連が触れてきた理由を連合系労働組合関係者は次のように推測する。

「テレワーク推進の世の中の流れを見直し、強制出社を促すという趣旨ではなく、政府一律の出勤者削減の基準を定めるのをやめてくれという話だと思いますよ。

 例えば、今年5月7日に改訂された政府の『新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針』を踏まえ、経済産業省が始めた『出勤者数の削減に関する実施状況の公表』に多くの経営者が難色を示していたという話を聞いています。

 出勤者数の7割削減の実施状況をつまびらかにするものです。事業の趣旨は各事業者のテレワークの好事例の横展開等を図ることでした。実施状況の公表も、経産省への実施状況の登録も公表もあくまでお願いベースであり、強制ではありません。しかし、誰もが知っている有名企業や大手企業の名が、登録結果の一覧に掲載されていなかったら、多くの国民はどう思うでしょうね。

 テレワークが企業活動に向いているかどうかは、業種によって異なるでしょう。テレワークができていない、登録されていないからといって、感染対策ができてないわけでも、“前時代的なダメな企業”というわけでもありません。

 ただし出勤者数削減に限らず、今回のコロナ禍では企業の緊急時の対応力に注目が集まっています。平時であれば隠したままにできた各事業者の“底力”の一端が、出勤者制限の政府要請で明らかになったというのも事実だと思います。どこの経営者も、ライバルの同業他社や投資家から『へぇ、御社はテレワークできないんだ。うちはそれで利益をだしているけれど、大変だね』と言われたくはないでしょうからね」

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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