
少し前の話にはなるが、DREAMS COME TRUEの中村正人が10月5日に更新した自身のブログで、9月22日に同ユニットが約1年2カ月ぶりにリリースしたCDシングル「次のせ~の!で -ON THE GREEN HILL-」(Universal Musicより発売)の売り上げ不振を訴え、ファンに購入を呼びかけたことが話題を呼んだ。
「NEWシングルCD、ご購入をお考えのベイビーズはなる早のご購入をお勧めします。ドリカムのCDを取り巻く状況は厳しくCDショップから返品となる前に是非。なんせワースト記録更新なもので(大粒の涙)」
「CDが売れなくなった」といわれるようになって久しい。かつては、「決戦は金曜日/太陽が見てる」(1992年、以下発売はソニーレコーズ)、「go for it!/雨の終わる場所」(1993年)、「WINTER SONG」(1994年)、「サンキュ.」「LOVE LOVE LOVE/嵐が来る」(ともに1995年)と5作のミリオンセラーを出したドリカムでさえも、このような状況なのだ。配信が主流になったのはもちろんのこと、コロナ禍により人々の消費意欲が落ち、CDショップに出向く機会が減り、また、各種CD販促イベントの開催にも大きく制限が生じたことで、ただでさえ売れないCDがさらに売れなくなったのは間違いないだろう。
ではそんな時代に、かつてはCDセールスにおいて大きな惹句となっていた「連続●●記録」の類いは、いったいどうなっているのだろうか? さすがに更新がキツくなっていないのだろうか? ここでは、AKB48、B’z、KinKi Kidsと、3組のアーティストが誇る「大記録」の“今”について検証してみたい(以下、順位、売り上げ枚数はすべて「オリコン」が発表したデータによる)。
握手会開催NGで、AKB48の「連続ミリオンセラー記録」はいよいよストップへ
AKB48は、2011年2月発売の「桜の木になろう」から、2020年3月18日発売の「失恋、ありがとう」(ともにキングレコード)まで、「シングルミリオン連続達成作品数」を38作まで延ばしていた。なお、オリコンの集計では、日本で2番目に多くのミリオンセラーを出しているアーティストはB’zで、その数は15作。ただし、連続しての記録ではない。どうしても「AKB商法」などと揶揄される要素はあるものの、38作連続ミリオンセラーというのはやはり、日本の音楽業界においてはあまりに傑出した記録なのだ。
ところがここへ来て、その大記録がいよいよストップすることが、ほぼ確定した。2021年9月29日に発売されたシングル「根も葉もRumor」のセールスが、とても100万枚に到達しそうにないのである。
前作『失恋、ありがとう』には、従来のシングルと同じく特典として「イベント参加券」が封入されていた。予約が始まったのは、すでにパンデミックは深刻化していたものの、まだ「ま、コロナが落ち着いたらそのうち握手会もあるだろう」という楽観的観測がギリギリで成立した時期でもあった。結果的に恒例である対面での握手会の開催は不可となったが(代わりにオンラインによるイベントを開催)、『失恋、ありがとう』は初週で116万7000枚を売り上げ、累計では118万1701枚を記録。2020年の年間シングルランキングで2位のヒットとなった。
ところがその後AKB48は、2020年7月1日に「離れていても」という配信限定チャリティ楽曲を発表したものの、約1年半もの間、シングルCDをリリースすることはなかった。大幅な戦略の見直しを検討する必要があったとしても、アイドルにとって1年半は長い。これに対し、「握手会ができない状況では、シングルを出したくても出せないのでは?」という見方が生まれるのは仕方がないことだった。
そして、今秋ついに発売された新作『根も葉もRumor』は、「イベント参加券」ならぬ「応募抽選シリアルナンバー券」が封入された、「リアルな握手会を前提としないシングル」として発売された。
同作は週間シングルランキングでは1位を記録したものの、初週のセールスは35万1000枚で、前作より81万6000枚という大幅ダウンとなった。そして、発売2週目ですでにランキングでトップ10圏外に落ち、以降も再浮上はない。現在は女性アイドルのCDセールスは初週がすべてといってよく、V字回復はまずあり得ない。となれば、コロナの収束後に対面握手会の参加券&「シングル選抜総選挙」の投票シリアルナンバーカードを封入して再発売……といった奇策にでも出ない限り、「根も葉もRumor」がミリオンセラーになることは、現実的にまずあり得ないのだ。
