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プラスチック汚染、魚介類を通してヒトの胎盤から検出…Loop、日本に導入開始

文=小倉正行/フリーライター
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プラスチック汚染
「Getty Images」より

 プラスチック汚染は今や海洋生態系全体に広がっている。魚介類等を通して、人間もマイクロプラスチックに晒されている。そして、最近ではヒトの胎盤からマイクロプラスチックが検出される事態となっている。さらに、海を漂うプラスチックには有害な化学物質が含まれていて、それらが身体組織に移行・蓄積し影響を及ぼすことを考えると、将来影響が起こりうる問題であり楽観できるものではない。

 このようななかで脱プラスチックのムーブメントが世界的に広がっている。大手スーパーも取り扱いを始めているのがLoopである。Loopは、2001年にトム・ザッキー氏がプリンストン大学在学中に創業したテラサイクルが19年に開発したもの。それは、従来は使い捨てされていた洗剤やシャンプーなどの日用消耗品や食品などの容器、商品パッケージを、ステンレスやガラスなど耐久性の高いものに替え、繰り返し利用を可能にする新たな商品提供システムである。

 脱プラのために使い捨て文化からどう脱却するかという点では、Loopは画期的である。すでにニューヨークとパリで試験運用が行われ、P&G、ユニリーバ、ネスレ、ザボディショップなどが参画している。

 日本では、テラサイクルジャパンが取り組みを始め、すでに21年2月時点で、味の素、アイエヌイー、イオン、エステー、大塚製薬、キッコーマン、キヤノン、キリンビール、サントリー、資生堂、P&Gジャパン、ユニ・チャーム、ロッテなど24社が参画し、それぞれLoop用の商品を提供し始めている。さらに、伊藤忠商事が乗り出し、21年8月からはEC(電子商取引)を参加者5000人限定で開始した。

Loop普及に壁

 だが、Loopの普及は進んでいない。現在のところ利用を希望する消費者は、Loopを扱っている首都圏の店舗に足を運ぶか、このECを利用するしかない。Loopに参加している大手スーパーのイオンでも、取り扱っているのは特定の店舗(都内17店、神奈川3店、千葉4店、埼玉6店)のみ。筆者もLoopを取り扱っているイオンレイクタウンに取材に出向いたが、広大な店舗の中でその売り場はなかなか見つからない。これではLoopに手を伸ばす消費者はいないだろう。

 Loopの肝は容器の再利用にあるが、Loop商品を購入しても空の容器を店舗で返却する必要があるため、付近に取り扱い店舗がなければ、Loop商品に手を出すことはないであろう。本格的に運用するには、全国の中小スーパーを含むすべてのスーパーだけでなく、全国のコンビニエンスストアにもLoop商品と容器返却スポットを配置しなければならない。さらに、返却された空き容器の洗浄施設も全国展開したり、容器回収の専門業者も手配しなければならないであろう。

 現在のところ、Loopは試験的運用の域を超えていないが、脱プラは人類が直面している大きな課題であり、避けて通れない。日本での展開には、全国で消費者に宅配を行っている生協が鍵を握っているのではないか。

小倉正行/フリーライター

小倉正行/フリーライター

1976 年、京都大学法学部卒、日本農業市場学会、日本科学者会議、各会員。国会議員秘書を経て現在フリーライター。食べ物通信編集顧問。農政ジャーナリストの会会員。
主な著書に、「よくわかる食品衛生法・WTO 協定・コーデックス食品規格一問一答」「輸入大国日本 変貌する食品検疫」「イラスト版これでわかる輸入食品の話」「これでわかる TPP 問題一問一答」(以上、合同出版)、「多角分析 食料輸入大国ニッポンの落とし穴」「放射能汚染から TPP までー食の安全はこう守る」(以上、新日本出版)、「輸入食品の真実 別冊宝島」「TPP は国を滅ぼす」(以上、宝島社)他、論文多数

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