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後払い決済、急速に普及の理由…面倒なクレカ加入の手間不要、意外なデメリットも

文=編集部
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広がる後払い決済サービス
「gettyimages」より

 ここ数年、欧米を中心に広がりを見せつつあるのが“後払い決済サービス”だ。2019年にはフリマアプリ大手であるメルカリが、スマホ決済「メルペイ」での買い物時に、最大で30万円まで翌月以降の支払いができるサービスを始めるなど、日本でもそのシェアを確実に伸ばしてきている。

 メルペイが行った「消費と支払手段に関する調査」によると、10~50代の800人を対象にクレジットカードや後払い決済サービスの利用状況のアンケートを取ったところ、後払い決済を利用していると答えた人は31.1%もいた。

 後払い決済は文字通り“商品が届いた後に代金を支払うシステム”のことで、日本においてその支払い方法は大きく分けて2通りある。ひとつは「請求型」というもので、後払いシステムの運営会社が利用者に商品と一緒に伝票をつけて届けるというスタイル。伝票が届いた利用者はそれを持ってコンビニエンスストアなどで支払えばいいというわけだ。

 もうひとつは「スマホ型」と呼ばれるもので、ID・会員登録をして使うスタイル。代表的なところでいうと、今年の9月に米ペイパルが買収したペイディが運用しているものが該当する。そこで、経済評論家の佐藤治彦氏に、後払い決済がなぜ今広がっているのか、メリットとデメリットの双方を分析してもらった。

若年層を中心に「後払い決済」が増える背景から垣間見える不景気の影響とは

 今、若者層を中心に後払い決済が伸びているわけだが、佐藤氏は、その理由を紐解くためにはまず若者が置かれている現状について知る必要があると言う。

「今の20代の働き方はご存知のように、4割以上が非正規雇用もしくはアルバイトで安定的な収入がない。そうなってくると当然、若者たちの購買意欲も落ち込み、販売側も購買側への与信のレベルが下がってきてしまうわけです。

 与信というのは、簡単に言うと“商品の代金を支払ってくれるまであなたを信用します”という意味の言葉です。とはいえ、ただ信用するだけでは販売側のリスクが高すぎる。そのため、販売側はリスクヘッジのため“与信管理”を行います。これは、クレジットカードにおける“限度額”がいい例ですね」(佐藤氏)

 与信の低下は、現金払いに続く方法として高い需要を誇ってきたクレジットカード業界にも変化を及ぼしているという。

「クレジットカード会社は常に新規加入者を求めます。これは売り上げの先細りを防ぐため、毎年100万人は出てくる新社会人、つまり20代の若者の加入を狙っているということ。ですが、この層が激変してきているのです。従来であれば、年収400~500万円の1部上場企業の正規社員などを想定していたわけですが、今、その層は圧倒的に少ない。

 当然、クレジットカード会社が行う与信審査の時点で、これまでの基準に満たない人が増え、新規加入する若者も減少してきているわけです。では、若者がクレジットカードでの決済を主としていた市場での買い物をしないのかというと、そうではありません。こういった社会的背景があり、若者たちの間で需要が高まってきたのが後払い決済というわけです」(佐藤氏)

利用者・導入企業、双方の目線で見る「後払い決済」のメリット・デメリット

 では、後払い決済がクレジットカードに比べて、なぜそこまで若者にメリットがあるのか。

「後払い決済の会社は、こうした若年層需要を想定して最初の限度額設定を5万円くらいにして、審査もクレジットカードのように顔写真を撮ったり、何枚も資料を提出したりといった、面倒くさい手間はかかりません。導入が簡単なのです。また審査時に生活情報を根掘り葉掘り聞かれることも少ないので、若者にとってプライドが傷つきにくいのも支持されている要因かもしれません。数千円の商品を買いたいだけなのに、なんでクレカをつくるためにここまで聞かれなきゃいけないんだ、と思う若者は少なくないでしょう。

 後払い決済は支払った金額が明確にわかるのもいいですよね。クレジットカードは、近年コスト削減で明細書を送らずにネットで各自が確認するシステムを導入していますが、実際問題自ら確認しにいくのは面倒です。ですが月収が10万円台の人にとっては、翌月にいくら引かれるかパッとわからないのは死活問題となりますよね。

 また、後払いのなかには分割払いしても金利がつかないプランを導入しているところも多く、リボ払いなどが多いクレジットカードに比べて安心して使えるというのも大きいと思います」(佐藤氏)

 メルカリやアマゾンなど、後払い決済を近年積極的に導入している企業側のメリットはなんなのか。

「ここまでの話とつながってきますが、後払い決済を導入すると若者層をより取り入れられて、市場規模を拡大できるというメリットがあります。ほかには、後払いシステムの運営会社に払う手数料が低いので、導入ハードルが低いこともメリットでしょう。これはアメリカと日本が現状ほぼゼロ金利なので、後払いシステムの運営会社は手数料を高く設定しなくても、十分利益が出るという仕組みによるものです」(佐藤氏)

 だが当然デメリットもあるはず。利用者、導入企業側がそれぞれ懸念すべき点は何か。

「クレジットカードのリスクと同じですが、後払いは手元にお金がない状態でも買えるので、要らない物やそもそも払えない物を買ってしまうリスクは必ずあります。ついつい支払い義務を忘れてしまう危険というのは、当然のことですが付いて回ります。

 導入企業からすると、デメリットよりメリットが大きいといって差し支えないでしょうね。これまでの後払い決済だと自社で債権のリスク、つまり消費者が支払いをしてくれないかもしれないというリスクを負わねばなりませんでしたが、近年は多くの場合、後払いシステムの運営会社側がそのリスクを肩代わりしてくれますから、その不安も軽減されているのではないでしょうか」(佐藤氏)

 後払い決済の今後について佐藤氏はいう。

「今後の経済政策で金利額が上昇すれば、後払い決済を利用するメリットが利用者・導入企業の双方で低下する可能性もゼロではないでしょう。ですが、それはあくまで可能性のひとつ。現状大きなデメリットはないと見ていいと思います。ただ、今後若者以外の層にも広めていくためには、ポイント制度を深く活用できるようになってきた30~50代、言い換えるなら“クレジットカードが使いやすく育ってきた層”も取り込めるかどうかがカギとなります。もっと別のメリットを感じさせる部分を開拓していく必要はあるでしょうね」(佐藤氏)

 若者層の経済状況の変化によって普及が加速した後払い決済。若者たちの間で浸透してきているこのシステムが、今後どのように日本社会の決済手段として根付いていくのか、これからも注目だ。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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