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重盛高雄「謎解き?外食が100倍面白くなる話」

から好し、かつ丼の概念を壊す斬新な新商品に感動…「かつや」との大きな差

写真・文=重盛高雄/フードアナリスト
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から好し「かつ丼」(筆者撮影)

 7月25日、日本フードサービス協会は「外食産業市場動向調査2022年6月度結果報告」を発表し、前月に引き続き「土日休日」の「家族客」の客足が好調だと総括した。

<6月は、昨年とは違い大都市圏でも「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」の適用が無く、外食産業の売上前年比は、前月同様大幅に伸び、全体売上は119.9%となった。夜遅い時間帯の集客は依然として弱いものの、「昼の時間帯」、「家族客」、「土日休日」を中心に客足の好調が継続した。外食店舗は徐々に営業時間 をコロナ前に戻すなど、コロナと共存して社会経済活動を維持しようという動きが見られ、売上はコロナ前の19年比で93.1%にまで戻ったが、パブ・居酒屋業態では19年比58.3%と依然苦戦が続いている>(同調査より)

 新型コロナウィルス感染症の第7波が猛威を振るっているものの、政府は今のところ経済活動を優先する姿勢を示している。飲食店の経営者は「また、なんらかの宣言が出されるのではないか」と不安な時間を過ごしているのではないか。

 アークランドサービスホールディングスが発表した22年度12月期第2四半期決算説明会資料によると、1~6月期の概要として「かつや」はイートイン需要の取り込みと効果的な販売促進で堅調に推移した。また売上高は前年同期比106.3%、テイクアウト比率は49.7%であり、前年を上回る売上となっている。

「かつや」豊洲店に配備された「テイクアウト専用注文機」は、画面も大きく操作が簡便なのが特徴だ。これによりテイクアウトの受注にかかわるスタッフを効率的に配置することが可能になる。「かつや」はテイクアウトに加え、デリバリー事業者各社からの受注用タブレット端末も繁忙時には重複して鳴動し、その対応に追われる様子が見て取れる。

「かつや」は割引券が客の来店の無限ループを生み出しているといわれているが、基本的な商品力が高いからこそお客が足を運ぶ動機を喚起することができる。来店客全員が割引券を活用しているかというと、そうでもない様子だ。筆者は店舗訪問時にレジ近くで見ているが、半数くらいの客は割引券を使っていない。まだ「継続顧客」にはなっていない来店客が多いことを物語っている。

 あまり知られていないが、フェアメニュー期の割引券と通常期の割引券は仕様が異なっている。フェアメニュー期の割引券は表にフェアメニューの記載があり、裏面には有効期限の記載がある。通常期の割引券は有効期限はブランクになっているため、いつでも気兼ねなく利用できる。

 また過日訪問した新橋店では、非接触の観点からレジ前に割引券が置かれ、客が自分で取っていく仕組みになっていた。同時期に訪問した豊洲店では会計時に1枚手渡しされる通常オペレーションであった。

すかいらーくHDの戦略

 コロナ禍にあっても盤石の強みを誇る揚げ物系をメインとする業態。テレワークなどで自宅にいる時間が長くなっているとはいえ、なるべく避けたい調理の代表格が「揚げ物」ではないだろうか。それゆえ店内飲食の制限下においても持ち帰りやデリバリーの需要は途切れることなく伸長している。

 3月末にコロナ関連の各種制限が撤廃され、「店内飲食」が復活している業態も増えてきたといわれている。日経MJがまとめた外食大手34社の6月の既存店売上高をみても、ファミリーレストランの客数の伸びは5月に続いてプラスとなっている。

 ファミレス業態のなかでも目立つ戦略を実践しているのが、すかいらーくホールディングス(HD)だ。コロナ禍においてデリバリー専門店の開設やコラボ店舗の増設など、客に選ばれる価値づくりに尽力してきた。主力ブランドは「ガスト」「バーミヤン」「夢庵」だが、これら低価格帯の店舗の客層や客単価をみて二の足を踏む客も多い。

 そんな上位客層を狙った戦略として、すかいらーくHDは「La Ohana」を展開している。ハワイに対して「思い出の地」「憧れの地」「郷愁の地」といった特別な思いを持っている人も多いが、同店には今のところ狙い通りの客層が来店し、客単価も想定通りの金額となっているようだ。

 すかいらーくHDによると、2022年7月期はリモデルが31店舗、転換が2店舗(バーミヤン2店舗)で、リモデル店舗の積極販促を抑制していた1~4月と比べると5~7月のリモデル効果は204%になっているという。

「から好し」とんかつ、揚げたてが提供

 そのすかいらーくHDの「から好し」が今年5月、新しい戦略を開始した。「とんかつ」に手を伸ばしたのだ。「とんかつ」をメイン商品に据える「かつや」に真っ向勝負を挑んだかたちとみる人も多いのではないだろうか。「から好し」が提供する「とんかつ」は、「とんかつ定食」(814円/税込)、「から揚げ&とんかつ定食」(1034円)、そして「かつ丼」(693円)の3品だ。「から好し」の商品を取り扱うガストでは販売せず、「から好し」の店舗のみで提供している。

「手仕込みロースとんかつ・カツ丼」とホームページにも記されているように、注文を受けてから調理され、揚げたてが提供される仕組みとなっている。「かつや」は衣付けされた状態で冷蔵保存され注文を受けてから揚げられるが、「から好し」は1枚ずつ丁寧に手で衣付けしてから揚げられる。そのため注文してから商品が提供されるまでに時間がかかる。また「かつや」と異なり肉のサイズは選べない。その代わりにご飯は大盛り無料(7月末現在)となっている。

レンゲで食べる「かつ丼」

 6月中旬、筆者は「から好し」祐天寺駅前店を訪問し「かつ丼」を注文した。大きめのどんぶりに隙間なく卵とじの「とんかつ」が乗せられ提供。レンゲが添えられているのが特徴的であった。レンゲで食べるという新しい提案をしており、普通はばらばらに口に入れる「かつ丼」の各パーツを、レンゲによってまとめて口に入れることができる。咀嚼することでそれぞれの味が混ざり合い、かつ丼の新しい味わい方を教えてくれたような印象を受けた。

 同じどんぶり物の商品でも、食べるときに使う道具によって新しい味わい方ができることを提示してくれた。まだまだ外食の可能性や広がりを感じさせる一コマであった。

 筆者はかつてJTBに勤務していた経験があるが、経済活動を盛り上げるため一番の秘訣は「旅行」ではなく「飲食」にあると思っている。なぜなら「旅行」よりも「飲食」のほうが日常的な行動だからである。そして「飲食」が通常通りに稼働することで、消費者だけではなく流通や生産者も活況を呈することができる。近江商人の言葉にある「三方良し」は、まさに飲食業に当てはまるのではないだろうか。

(写真・文=重盛高雄/フードアナリスト)

重盛高雄/フードアナリスト

重盛高雄/フードアナリスト

ファストフード、外食産業に詳しいフードアナリストとしてニュース番組、雑誌等に出演多数。2017年はThe Economist誌(英国)に日本のファストフードに詳しいフードアナリストとしてインタビューを受ける。他にもBSスカパー「モノクラーベ」にて王将対決、牛丼チェーン対決にご意見番として出演。最近はファストフードを中心にwebニュース媒体において経営・ビジネスの観点からコラムの執筆を行っている。
フードアナリスト・プロモーション株式会社 重盛高雄プロフィール

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