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タクシードライバーが出会った本当にヤバい乗客たち…車内で下着を売る中年女性

文=後藤豊/ライター兼タクシードライバー
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タクシーに乗る女性(「gettyimages」より)
「gettyimages」より

 9月7日、新宿歌舞伎町からタクシーに乗った乗客が料金を支払わず、車外で運転手の左頬を2回殴打し、立ち去るという事件が起きた。通報を受けた警察官が現場に駆け付けると、男は「触らないでください」と言いながら警察官の肩に手を回し、強盗の疑いで逮捕された。酒に酔った状態で、わずか2600円の運賃を踏み倒したそうだ。

後部座席で前戯を始めたカップル

 タクシードライバー歴が長い私も、歌舞伎町や新宿界隈で数名の「おかしな客」を乗せたことがある。

 1995年、ドライバーになり1カ月が経った頃。当時29歳だった私は、明け方に歌舞伎町でカップルを乗せた。男性はホストっぽく、女性はその客という雰囲気。2人は後部座席に座ると「高田馬場駅の手前まで」と行き先を告げ、直後にキスをし始めた。今なら驚かないが、新人だった私は緊張が高まり、見て見ぬフリをするしかなかった。酔っているカップルは、私の存在などおかまいなしに舌をからめている。やがて、男性が女性のブラジャーをはぎとり、胸を露わにして乳首に吸い付く。

 女性の喘ぎ声が高くなり、下着に手が伸びた瞬間、車は目的地に着いた。「お客さん……着きました」と声をかけると、カップルは前戯をやめ、料金を支払ってマンションに入っていった。

 当時はこうしたカップルを2年に1回ぐらい乗せたが、ドライブレコーダーがある今の時代はほとんどなくなった。

スカートをめくって見せてくる熟女

 別の日に、ホストクラブから出てきた女性客を乗せた。年齢は40代後半。やや派手な熟女は「吉祥寺まで」と行き先を告げると、私にいろいろ質問をしてきた。

「運転手さん、結婚してるの?」

「いえ、していません」

「彼女は?」

「います」

 私は一瞬「誘われているのかな?」と感じたが、そうではなかった。その女性客は下着デザイナーで、「どう、この下着。彼女さんにプレゼントしてあげれば?」と言いながら、スカートをめくって自分が履いている下着を見せてきた。

 好みのタイプなら興奮したかもしれないが、生真面目でおとなしい女性が好みの私にとって、まるでタイプではなかった。ただ、顔は見ずミラー越しに下着を見ていると、彼女に履かせたくなってきた。

「いくらですか?」

「そうねぇ。1万円でどう?」

 その日はすでに8万円を売り上げて余裕があったこともあり、私は彼女がバッグから取り出した下着を買った。

助手席に乗ってきた乗客の手が股間に

 その1カ月後、新宿2丁目で乗客を降ろした。2丁目はいわゆる“あちら”の客が多いのだが、ドライバーを始めたばかりの私は、そんな認識など微塵もなかった。

 乗客を降ろして1分後、別の客が手を挙げてウインクしながら乗ってきた。後部座席のドアを開けると、「道案内するから」と助手席に乗ってきた。一瞬慌てたが、新人ドライバーの私は道に詳しくないため、「お願いします」と助手席に乗せると、数分後、客の手が私の股間に伸びてきた。

「立派なモ・ノ・ね」とウインクしながら股間を触られた私は「すいませんお客様、私はその気はないので……」と、やんわり客の手を押さえた。最初は苦笑いしながら抵抗したが、二度三度と伸ばしてくる客の手を押さえて「やめてください!」と声を張り上げると、直後、「なんだつまんねぇな。ここで降ろせ!」と小銭を放り投げて降りていった。

本当にあった“乗り逃げ”の手口

 新宿界隈特有の「おもしろ客」はこれだけではない。

 ドライバーを始めて3カ月が経った頃。午後10時過ぎ、靖国通りで25歳ぐらいの男性客が乗ってきた。その客は、ドライバーの顔を観察しながら、先頭から6台目の私の車にわざわざ乗ってきたのだ。

「すいません、板橋までお願いします」と行き先を告げられた。この時間に“ミドル”(5000円前後)はおいしい客である。

 男は携帯電話(当時はデジタルホン)で友人に連絡を始めた。「うんうん、わかった。板橋駅のそばね。30分ぐらいで到着するよ」と話した直後、「運転手さん、板橋で5分ほど待っててほしいんだ。次は渋谷に行くので」とのこと。新宿から板橋までの料金は4000円ほど。さらに渋谷まで戻ってくれるとは、これ以上ない上客である。

 目的地に到着後、男は「この荷物(手提げ袋)を置いておくね」と言ってマンションに入っていった。待つこと30分。ついぞ、男は帰ってこなかった。しびれを切らして手提げ袋の中を見ると、新聞紙の束ばかり。マンションの裏手から出ていったようである。どうやら最初から乗り逃げをするつもりだったようで、騙しやすそうなドライバーを“顔”で判断したようだ。当時、私はまだうぶな感じがあったのだろう。

 この件があって以降、私は「待たせる客」に対して、その時点での運賃を請求するようにしたが、歌舞伎町で酒に酔って乗ってきたチンピラ風情の男はタチが悪かった。

「おい運ちゃん、高速で市川まで行ってくれ」――ありがたい長距離客だが、どことなく危ない感じがした。高速道路に乗って20分ほど過ぎると、その男はミネラルウォーターを取り出して飲み、「ふぅぅ」と息を吐いた。

 数分後、男は饒舌になっていき、「おい運ちゃん、もっと飛ばせや!」「あと10分で着かねぇと金払わねえぞ」などと罵ってくる始末。指定された道を走ってマンションの前に着くと、男は「ちょっと待ってろ。金持ってくるから」と降りていった。前の一件があって以降、できる限り金を置いていってもらうようにしていたが、この客はどうにもタチが悪く、「お支払いください」と言っても無理そうだ。

 案の定、男は待てども待てども戻ってこなかった。1万円を超える運賃は、泣く泣く自腹で払うことにした。車庫に戻って後部座席を見ると、透明のパッケージが落ちていた。男は、後部座席で腕に注射器を打っていたのである。

 今の時代、ドラレコは、こうしたおかしな乗客の抑止力ともなっている。そのためか、当時のような「おもしろ客」は減っている感もある。それでも冒頭のような酔客がチラホラいるのが、日本一の繁華街・歌舞伎町である。

後藤豊/ライター兼タクシードライバー

後藤豊/ライター兼タクシードライバー

1966年千葉県生まれ。東京都内の中小会社でタクシードライバーを兼務するライター。競馬と野球をメインに、雑誌や書籍で執筆をしている。主な著書に『テイエムオペラオー伝説』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(ともに星海社、共著)などがある。

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