仕事はもちろん、SNSなど今や誰もが情報のやりとりをする時代になった。そこでは、基礎となる対話や、情報の収集、共有、発信、文章の書き方などの基本的なスキルが必要になる。
これらの知的活動を向上させるために大切なのが「アカデミックスキル」だ。
『学び合い、発信する技術』(岩波書店刊)は、早稲田大学スポーツ科学学術院教授の林直亨氏が、広く社会で必要とされる対話、プレゼンテーション、ライティング、リーディングの知的活動の基礎となる「アカデミックスキル」について解説した一冊である。
「アカデミックスキル」とは、言語を扱うあらゆる活動の技法。そして、学んだ知識を言語で共有して、広めるための基本的な技術となる。その基礎は5つある。
1.対話…他者との体験や知識・意見を共有する
2.プレゼンテーション…他者に向けて発表する
3.ライティング…わかりやすい文章を書く
4.リーディング…文を正しく読んで理解する
5.ピアレビュー…他者の著作物を共感的に修正する
その中の一つである「対話」はアカデミックスキルのまさに基礎だ。ライティングやプレゼンテーションが最終成果になる場合でも、チームで活動しているのであれば対話は重要。
この対話には3つの心得があるという。
・気楽に素直に話す…勝敗はないので、意見に固執しない。
・他者の話をよく聞く…一人で長時間話さず、あなたはどう思う?の心掛けで他者に共感する。
・一緒に新しいことに気づく…否定せず、新たな創造をする
これらの心得をふまえ、相手を尊重して聞き、意見を共有し、質問する。「質問する」を意識すると、対話をうまく進めることができる。相手を尊重して聞けば、意見の共有が自然とできるからだ。
また、対話中は気づいたことをメモすることが重要だ。メモを取りながら対話することには、2つの利点があるという。
一つは、メモを取ることで自分の話を聞いてもらえている、というメッセージが話し手に伝わることだ。聞き手がメモを取ることで、話し手は安心して話すことができる。
もう一つは、話の内容を忘れずに済むこと。ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスの研究によると、人は20分後には42%忘れるという。なので、メモを取らない主義の人と話す場合は、メモを取らない人は忘れる人がいるということをあらかじめ理解しておこう。
対話をはじめ、普段の生活の中でアカデミックスキルを身につけておくと役立つ場面は多い。対話や文章を書くことが苦手だとしても、スキルを習得することで克服できるはずだ。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。