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江川紹子の「事件ウオッチ」第220回

公職を保身のために私物化…旧統一教会問題から逃げ続ける細田衆院議長は即辞職すべし

文=江川紹子/ジャーナリスト
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細田衆院議長(写真は2022年当時のもの。Takashi Aoyama/Getty Images)
旧統一教会との関係をめぐり、1月24日、非公開の懇談形式で各党に説明した細田衆院議長だが、共同通信社の全国電話世論調査によれば、細田氏の説明に対して、84.2%が「十分ではない」と回答している。(写真は2022年当時のもの。Takashi Aoyama/Getty Images)

 「やましいような付き合いではなかった」と述べたそうだが、実際には、相当に”やましい付き合い”であり、本人にもその自覚があるのではないか。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係について、公開の場での説明から逃げ続ける細田博之・衆院議長の対応には、そんな疑念が募るばかりだ。

 細田氏は、2021年11月に衆院議長となって党籍を離れていることを理由に、自民党の「点検」の対象外とされてきた。説明を求める声の高まりにあらがえず、紙1枚の説明文書を公表したが、あまりにも不十分だと与党内からも批判の声が出て、その後、紙2枚の「補充説明」を追加。1月24日に行われた与野党各会派との「懇談」で、ようやく質問に応じた。ただし、メディアの取材はやりとりが始まる前の“記念撮影”しか許されず、「懇談」そのものは非公開。議事録が残されるわけでもない。

 細田氏は、「議長の立場で記者会見し、答えるのはふさわしくない」などと弁明しているが、公職を自らを守る盾として私物化するような自身の態度の方が、よほど国権の最高機関たる国会議長として「ふさわしくない」のではないか。

 旧統一教会と細田氏との関わりは、その頻度においても濃さにおいても相当に深かったと見られる。それが続いたのは、安倍晋三・元首相の出身派閥の長である細田氏の影響力に教団が期待したからだけでなく、細田氏の側もその期待に応えたからだろう。どのような意図で、教団と関わってきた、そのことを現在はどう考え、今度どうするつもりかは、細田氏自身が説明すべきだ。

教団との“蜜月証拠”の数々も……白々しい弁明

 本人が認めた会合出席の一つが、2019年10月に名古屋市内のホテルで開かれた統一教会系の天宙平和連合(UPF)の会合だ。ここには教団創始者の妻で、現在の教団トップ韓鶴子・UPF総裁も出席。「政治と宗教は一つにならなければなりません」「私と一つになって、天の父母様を中心とした、人類一家族、地上天国を作っていきましょう」などと挨拶した。

 細田氏は基調講演を行い、その中で「今日の会の内容を安倍総理に早速ご報告いたしたいと考えております」と述べて拍手を浴びたほか、「韓鶴子総裁の提唱によって実現した国際指導者会議の場は、まことに意義が深い」などと韓氏を称えた。

 安倍氏の名前を出したことについて、「懇談」の席上、細田氏は「リップサービス」などと弁明しているが、「政教一致」を目指す旧統一教会トップを称賛した意図などについては、未だ説明がない。

 この会合は、翌日に行われた信者4万人が参加するイベントに合わせて行われたものだが、その直前には、全国霊感商法対策弁護士連絡会が「旧統一教会が勢力を誇示し、政界への浸透策を推進するためのものです。この会に参加したり、賛同メッセージを送るなどしないで下さい」との要望書を全国会議員に送っている。当然、細田氏のところにも届いたはずだ。この要望書には、教団の問題点などについても、具体的に記されていた。

 にもかかわらず、細田氏は「懇談」で、教団について「悪いことをしている団体だという認識はなかった。安倍さんの事件以降、様々な報道がありびっくりした」と語ったそうだ。あまりに白々しく、不誠実な態度と言わざるをえない。

 細田氏は、21年6月には、教団の関連団体「世界平和連合」会長で、教団系の政治団体「国際勝共連合」やUPFジャパンの議長でもある梶栗正義氏が顧問を務める「日本・世界平和議員連合懇談会」の名誉会長に就任している。ジャーナリストの鈴木エイト氏が入手した、第1回総会の記念写真では、前列のほぼ中央にいる細田氏の隣に梶栗が立ち、一緒にガッツポーズをとっている。

安倍元首相に責任押し付け……密室内の「懇談」での幕引きは許されない

 同懇談会が参院選の前、昨年6月に行った総会では、世界平和連合からの選挙応援を希望する議員を募るアンケートも行われていた。

 選挙における教団票差配の疑惑について、細田氏は「懇談」の席上、「思い当たる事実はない」という微妙な表現で否定したようだ。また、安倍元首相と統一教会の関係について、「安倍総理は大昔から関係が深い。こちらは最近だから」「長い間に実感していた。誰から聞いたということではない」とも語った、という。

 教団に票の依頼を直接行っていたのは、安倍元首相一人だったのかもしれない。2016年の参議院議員選挙に比例区で出馬し、当選した宮島喜文氏はメディアの取材に、伊達忠一・前参議院議長を通じて、安倍元首相の差配で教団票を回してもらったと認めた。

 ただ、その伊達前参院議長は別のメディアの取材に、教団票について安倍氏の影響力を認めつつ、自分が相談したのは安倍氏ではなく、所属派閥の長であり自民党幹事長代行でもあった細田氏だったと語っている。

 細田氏の教団票差配の疑惑は、今なお解消されていない。少なくとも、ある程度の事実は知っていたのではないか。そうであれば、安倍氏が語ることができない今、事実を明らかにして、この問題に区切りをつけるのは、細田氏の役目だろう。

 ところが、細田氏は何も語らないまま、密室での「懇談」で幕引きとする意向らしい。「経緯は話した」として、地元メディアや支援者に、次の衆議院選挙に出馬する意向も明らかにした。島根県の有権者もなめられたものだ。

 細田氏は、一昨年10月の衆院選において、選挙運動に関与した地方議員らに報酬として金銭を支払ったとして公職選挙法違反(運動員買収)の疑いで刑事告発されている。また細田氏を巡っての女性記者や自民党女性職員などへのセクハラ疑惑も報じられた。これについても、国民に説明は行っていない。

 「懇談」の後、マスコミ各社で作る衆院記者クラブが、文書で細田氏に記者会見を開くよう要請した。これにも応じず、あくまでオープンな場での説明を避け続けるのであれば、もはや即刻議長の職を辞任すべきではないか。

 政府が安全保障の「戦後最大の転換」を打ち出し、少子化対策でも重要な局面を迎え、国会での議論が大切な局面を迎えている。そんな時に、このような人物が議長席に居座っていることは、この国の不幸と言うほかない。

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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