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松崎のり子「誰が貯めに金は成る」

春に待ち構える鉄道運賃値上げの波…「バリアフリーのため」は本当か?

文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト
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「gettyimages」より

 「値上げ」という言葉にはもう飽き飽きだが、帝国データバンクの調査によれば、2月3月にかけて一段と大きな食品値上げの波がやってきそうだ。加えて電気代。東北電力など5社が「規制料金」と呼ばれる電気料金の値上げを経済産業省に申請、認められれば最大4割超えの値上げとなるという。さらに、1月23日には東京電力が約3割アップとなる値上げ申請に踏み切り、北海道電力もそれに続いた。2023年も引き続き「値上げの年」となるのは確実なようだ。

 実は、ビジネスパーソンに身近な値上げがもう一つ控えている。それが鉄道運賃だ。首都圏ではJR東日本が山手線や京浜東北線、中央線・総武線などの運賃及び通勤定期券を3月18日から値上げする。運賃は10円上がる予定。東京メトロ、東急電鉄、小田急電鉄、東武鉄道、西武鉄道も春の値上げを表明、2023年秋には京王電鉄・京急電鉄もそれに続くとの報道だ。

 関西圏も値上げに足並みをそろえる。JR西日本、近畿日本鉄道、阪急・阪神電鉄、神戸電鉄が、やはり4月からの値上げに踏み切る。容赦ない運賃値上げラッシュが我々を襲うことになる。

 その理由は、表向きには駅のバリアフリー化を進めるための、設備費用の確保だ。国は全国の鉄道駅バリアフリー化を目指して「鉄道駅バリアフリー料金制度」を創設した。エレベーター、ホームドア、バリアフリートイレなどの施設、バリアフリー化された車両の製造などを進めるにあたり、ありていに言えば利益を受ける利用者に負担してもらう、つまり運賃を値上げしてもいいという。むろん、我々のメリットにつながるので、わずか10円の値上げを容認したくないとは言うまい。ただし、怒涛の値上げ続きのこのタイミングで、「運賃よ、お前もか」と嘆きたくはなる。

コロナで苦しい鉄道各社の台所事情

 バリアフリーのためと言えば聞こえはいいが、値上げの理由はそれだけではないだろう。大きな要因となったのは、やはりコロナ禍だ。行動制限によるレジャーや旅行の自粛、テレワークの定着、出張控えなどで鉄道利用客は激減した。通勤定期券の支給を止め、実費精算に切り替えた会社も少なくないだろう。自分の生活スタイルを振り返っても、電車に乗る機会はぐんと減った。リモートでできる仕事はリモートに切り替えたため、相手に会うために電車で移動すること自体が減ったのだ。

 たとえコロナがこの先インフルエンザ同等の感染症扱いになったとしても、一度変容した仕事スタイルは変わらないだろう。リモートで済むならそれで十分という打ち合わせは、今後も増えるに違いない。この先も鉄道での移動がコロナ前に戻らないとするならば、鉄道各社は収益を確保するためにも値上げやむなし、となるのは自然だ。

 値上げのついでというわけではないが、JR東日本は「オフピーク定期券」を新しく発売する。従来型の定期券のほうは、これまでの運賃より1.4%の値上げになるが、こちらは10%値下げになるという。その代わり、平日のピーク時間帯に改札入場した際には別途運賃がかかる。ピーク時間帯は駅によって異なり、大宮は6:45~8:15、川崎は7:10~8:40、渋谷・恵比寿は7:20~8:50、東京・新橋・品川・新宿・池袋は7:30~9:00と、覚えきれない細かさだ。ただし休日は対象外で、通常の定期として使える。

 深夜割引の開始時間待ちのため、高速道路入り口付近でトラックが列をなしているのが問題になっていると聞くが、これからはピーク終了待ちのビジネスマンが改札付近にたむろする光景が見られるようになるかもしれない。

乗り降り自由のフリーきっぷも選択肢に?

 たかが10円とはいえ、乗り降りを繰り返すと、もったいないお金が積み上がってしまう。節約したいならJRや地下鉄のフリーきっぷを活用するのも手だ。一定区間が乗り降り自由となり、ビジネスにも使いやすい。東京首都圏のフリーきっぷでは、以下が代表的なものだ。

・都区内パス…東京23区内のJR線普通列車(快速列車含む)・普通車自由席が1日乗り降り自由。山手線や総武線などを使う時に便利。大人760円

・東京メトロ24時間券…使⽤開始から24時間、東京メトロ線全9路線が乗り降り自由。4回乗り降りすると元が取れるという。大人600円

・都営まるごときっぷ…都営地下鉄の他、都営バス、東京さくらトラム(都電荒川線)、日暮里・舎人ライナーが1日乗れる。大人700円

・東京メトロ・都営地下鉄共通1日乗車券…東京メトロ線・都営地下鉄線が1日乗り降り自由。大人900円

・東京フリーきっぷ…東京23区内のJRの普通列車(快速含む)普通車自由席と、地下鉄(メトロと都営)、東京さくらトラム(都電荒川線)、日暮里・舎人ライナー、都バスが1日乗り降り自由。大人1600円

 このほかに、京王・東京メトロ・都営地下鉄パス(京王線・井の頭線の各駅~都営地下鉄線または東京メトロ線の接続駅までの往復と「都営地下鉄・東京メトロ共通一日乗車券」がセット)、東急線・都営地下鉄・東京メトロ共通1日乗車券(東急線全線と都営地下鉄線全線、東京メトロ線全線が1日乗り降り自由)など、私鉄と地下鉄を組み合わせたきっぷもある。

 電車を利用する用事は1日にまとめ、こうしたフリーきっぷを最大限活用するのも節約になるだろう。

バリアフリーも脱炭素も、結局は庶民のお金頼み

 駅や電車のバリアフリー化はむろん進めるべきだし、誰もが利用しやすいインフラを整えることに反対する者はいないだろう。しかし、あえてそれを表に押し出して、だから値上げが必要なんです、負担してくださいと言われるのはなんだかモヤモヤする。

 似たような構造の話は他にもある。たとえばCO2排出削減のため、ガソリン車の販売を止めて電気自動車に切り替えろという動き。安いガソリン中古車が消え、EVの新車しか買えなくなる日が来るとすれば厳しい。

 住宅についても同じで、2025年に向けて「建築物省エネ法」により新築時・リフォーム時には国が定める省エネ性能を確保するよう努めなくてはならなくなる。住宅を新築する際は建物の省エネ性能の向上がマスト、リフォームの際も増改築部分の壁・屋根・窓などに一定の断熱材等を施工するなどが求められる。これもカーボンニュートラル社会、温室効果ガス46%排出削減の実現のため、がお題目だが、住宅の機能が上がるぶん建築費も高くなるはずだ。

 車にしろ住宅にしろ、国は一定の補助金は出すものの、価格的には今より高くなることに違いはない。すべての人が生きやすく住みやすい社会を作るためには、消費者の我々がそのコストを払うのは当然かもしれない。とはいえ、所得が増えない現状で矢継ぎ早にお金がかかる仕組みが次々生まれていくことに、モヤモヤするのは止められない。

松崎のり子/消費経済ジャーナリスト

松崎のり子/消費経済ジャーナリスト

消費経済ジャーナリスト。生活情報誌等の雑誌編集者として20年以上、マネー記事を担当。「貯め上手な人」「貯められない人」の家計とライフスタイルを取材・分析した経験から、貯蓄成功のポイントは貯め方よりお金の使い方にあるとの視点で、貯蓄・節約アドバイスを行う。また、節約愛好家「激★やす子」のペンネームでも活躍中。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)。
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