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木更津市、あからさまな市民無視の市政…市長と船場が癒着か、CCCを不公正に優遇

文=日向咲嗣/ジャーナリスト
木更津市議会
一般質問に立った田中紀子議員(木更津市議会インターネット映像配信より)

 今年1月19日付当サイト記事『これも“ツタヤ図書館方式”?千葉・木更津でも官製談合疑惑…公募以前から癒着か』にて報じた、千葉県木更津市の市民交流プラザをめぐる官製談合疑惑が、ついに市議会へと飛び火した。

 前回記事『木更津市、CCCへの官製談合疑惑が議会に飛び火…市と船場の癒着の実態が浮き彫りに』に続き、“ツタヤ図書館方式”と呼ばれる事業者選定があらわになった市議会追及の一部始終をレポートする。

木更津市、あからさまな市民無視の市政…市長と船場が癒着か、CCCを不公正に優遇の画像2
船場が木更津市に提出した「業務実績」には、業務履行中の「木更津市庁舎整備支援業務委託」は記載されていなかった

 3月2日の木更津市議会本会議で一般質問に立った田中紀子議員(会派 市民ネットワーク)が、昨年行われた市民交流プラザの事業者の選定について、執行部に問いただした。田中議員は、ここまでの質問によって判明した事実が意味するところを、いくつかの資料を示しながら丁寧に解説し始めた。

「10月3日まで木更津市は(応募予定者からの)質問を受け、11件の質問があり、ほとんどが提案する資料作りの事務的なものでしたが、ひとつだけ提案内容に関することがありました。(略)その質問に対し木更津市は、『計画施設を整備する建物、木更津駅周辺庁舎、庁舎棟については現在、庁舎整備事業者との詳細協議を行っている段階のため提供できる図面はない』と回答しました。つまり、庁舎整備支援の業務委託を随意契約でしている株式会社船場は、レイアウトなど詳細を知っていたわけで、他の提案団体には持ち合わせない情報がふんだんにあったということなんです」

 応募事業者のなかで船場だけが、新庁舎のレイアウトを知る立場にあったというのは、前回記事でも詳しく取り上げたとおり、今回の官製談合疑惑の核心部分である。

 勝ち負けを決めるディベートならば、ここでゲームセットだろう。ところが、このことを踏まえて公平性に欠けるようなケースでは、提案資格を認めないとするか、あるいはほかの応募者との情報格差が生じないようにするべきではないかと詰め寄った田中議員に対して篠田市民部長は、こう言い放ったのである。

「業務実績につきましては、他市、本市にかかわらず記載するものでございます。また、提案資格につきましては、木更津市プロポーザル方式実施要綱に基づき、適正に判断をしております。なお、公表されてない資料を、全ての提案資格者に対して交付したことで、情報の格差が生じてないものと考えております」

 この答弁を聞いて、筆者は唖然とした。ここまで事実関係を“ド詰め”されているにもかかわらず、「適正に判断している」「情報の格差は生じていない」と、まるで田中議員の質問を一切聞いてなかったかのような受け答えを、ここでも繰り返したからだ。

 議会というおおやけの場で、白いものを「黒」と平然と言い張る厚顔無恥な役人の真骨頂を見たような気がした。

 そんな役人の卑劣な答弁は織り込み済みだったのだろうか、田中議員は間髪をいれずに、今度は船場とコンソーシアムを組んで選定されたカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)についても、同じ不正があったと指摘した。

「CCCについても、一般社団法人まちづくり木更津から依頼されて提言を作成したことを、この業務実績には書かれていませんでした。(略)そもそもですね、参加意向申出書を提出する前に質問をすることができる。しかし、今回は後出しした交付資料の『市民交流スペースの在り方に関する提言』については、質問すらできなかったわけです」

 ということは、CCCも船場と同じく、市に提出した業務実績で、市民交流プラザに関する業務の“上流”に位置する調査報告を担当していたことを隠して応募していたことになる。市は、それを知っていながら見逃したのだろうか。その調査報告については、ライバルに質問する間隙すら与えなかった。

 渡辺芳邦市長も篠田貞明市民部長も、提案締切7日前に応募事業者へ交付された、『市民交流スペースに関する提言』について、「一般社団法人・まちづくり木更津という外部の団体がCCCに委託して作成した報告書なので、市は関与していない」と繰り返し述べているが、それも事実とはいえない。

 まちづくり木更津は、木更津市のまちづくりを担当する一般社団法人である。同団体の運営費は全額、木更津市からの補助金で賄われていることを、筆者の取材に対して担当部署が認めている。

 常勤スタッフは、商工会議所の専務理事と木更津市役所から出向している職員の2名。連絡先電話番号も市役所内の部署と同じ。しかも、同団体がCCCに委託した疑惑の報告書作成費用の一部は、総務省の「中活ソフト事業」という地方交付税交付金によって措置されており、どこからどう見ても、<まちづくり木更津=木更津市(の意向を反映したまちづくり会社)>である。

 田中議員は、これらの事実を直接言及することはなかったものの、事業者選定のプロセスがとんでもなく不透明であったことを、あらためて印象づけた。

 そして、もはや質問形式ではなく、確定した事実として、こう述べた。

「ホームページや仕様書の形態を見ても、複合施設に関する情報は少なく、その上7日間で提案しろと、提案を考えろというのですから、情報格差もあり、(ほかの事業者は)より良い提案を練ることすらできなかったと考えます」

 渡辺市長による「不正が疑われるような行為は一切なかった」との主張がガラガラと音をたてて崩れていくなか田中議員は、事業者を審査したプレゼンテーション当日のことについても、いくつかの事実確認を行った。

 プレゼンの審査は事業者名を明らかにして行ったのか、事前に提出されていたプレゼン資料をそのまま当日の資料としたのか、プレゼン本番は応募事業者同士が顔合わせしないよう時間をずらして行われたのか、などを質問した。

 これに対して市民部長と総務部長が答弁に立ち、プレゼンはもちろん事業者名を明らかにして行い、その資料も一切改変は認めていないことや、当日は事業者が顔合わせないよう集合時間をずらすなどの配慮を行ったと、公正公平さを強調した。

 ところが、この質問のなかには、思わぬ落とし穴が隠されていた。田中議員は、国土交通省の「建設設計業務委託の進め方」という指針をひもとき、公平公正な事業者選定のルールを明示。審査は、提案内容のみによって行い、会社名はマスキングして、恣意的な判断が入る余地をなくすことが示されていると指摘した。

 つまり、事業者名を明らかにして審査したやり方は、国交省の指針違反だったのだ。

「市民交流プラザの選定審査は、どうだったか。受託が決定された提案資料には、事業者名が書いてある部分があり、これを審査前に黒塗りし、さらに匿名でプレゼンしたのか確認したくて、いくつか質問しました。公平性を保つための改善の余地が多くあることを認識してほしいです」

 この後、木更津市の公募型プロポーザルの過去3年間の推移が16件、9件、23件と急増している実態を執行部に報告させたあと、出来レースなどと言われないよう改善を求めた。

「市民交流プラザの業務委託の選定にあたっては、複合施設の庁舎部分のレイアウトなども含めて、支援する業務を請け負っていた株式会社船場と、後出しの交付資料を作っていたCCCが選ばれたということは、情報格差も甚だしい状況であり、それを選定する審査会においても、透明性、公正性、競争性の確保は、結果としてできていませんでした」

 途中、議会承認や市民への意見聴取もしないうちに、基本構想案を自社サイトで公表した船場の事例をひきながら、こう締めくくったのである。

「市民をないがしろにして事が進んでいかないためにも、きちんとこういうところにも気を使ってほしいと思います」 

 官製談合疑惑が起きても、この件について厳しい質問をしたのは、市議会のなかでは田中議員ひとりだけだった。議会でも、市長の計画を批判する議員は少ない。こうした事態を、果たして木更津市市民は、どのように見ているのだろうか。市政を長年ウォッチし続けてきた木更津市民に、話を聞いた。

「今の市長は、あまり市民の意見を聞かないように思いますね。自分がやりたい青写真がまずあって、それを実現するために、お気に入りの事業者にやらせているような印象です。

 しかも市長の青写真はコロコロ変わるんです。同じ事業者が最初に出した計画と、あとから出した計画が全然違っていたりして、前の計画と違うことを新たに乗せていたりするので、そこらへんの疑問をパブックコメントとして出しても、回答がないんです。

 木更津飛行場周辺まちづくり計画を作成するにあたっても、地元の町会、自治会にもなんの相談もありません。都市計画マスタープランをつくったときには、地区ごとに住民懇談会を設けて意見聴取を行っているのですが、渡辺市長になってからは一切の意見聴取を行っていません。船場にやらせて計画をたて、議会を通して終わりです。

 今回、問題になった、市民交流プラザが入る新庁舎の整備事業についても、おかしいと思うことはいっぱいあるんです。

 駅前庁舎のほうは、新昭和(ゼネコン)が駅前にマンションをつくって、賃貸にして市役所が入る。朝日庁舎のほうは、朝日のイオンが古くなっていて、建て直すのにちょうどいい機会だから、そこに建てて、市役所が入る形にして、こちらも賃料を払う方式です。

 賃貸期間が満了すると、また新しく市役所を建てないといけなくなる。賃貸のほうが安いと試算(期間30年で試算)されていますが、そのときは安いが、あとはまたカネがかかることになるでしょ。それはどうなのかと思いますね。

 今度の駅前庁舎と朝日庁舎の賃貸床面積を足しても、君津市役所や袖ヶ浦市役所のほうが広い。朝日庁舎は、市民サービス部門入っていますが、狭くて職員はみんなヒーヒー言っています。駅前庁舎をつくるところに交流プラザやホールをつくると、ますます狭くなります。

 今もスパークシティという駅前再開発ビルに仮庁舎が入っていますが、そこから木更津市役所と中央公民館が抜けてしまえば廃墟になってしまう。西口の活性化には何もならない。しかも駅前の通りは2車線で対面交通。駐車場棟を新たにつくるが、非常に導線が悪い。よくそんな計画をたてたと思いますね。

 駅前については、みんな危機感は持っているんです。地元の人も市長も、なんとか西口を活性化させなければいけないという問題意識は持っています。その問題意識につけこまれた感じですね。問題意識があっても、やり方が悪く、一部の業者のみを盛り立てるような計画で、市民全体のものにはなっていないのです。

 職員は、市長の腰巾着ばかり集めているのか、市長公室というところにやらせている。トップダウンです。みんな意見を言わなくなる。市役所再建の意見を出す市民が公募されましたが、(市にとって都合の良くない)意見を言いそうな人は外されています」

 そんななかでも強引に計画を進めるということは、市長なりに“これがいいんだ”という自信があるのだろうか。

「渡辺市長のワンマン体制を支えているのは、国政との太いパイプじゃないですかね。特に浜田靖一防衛大臣とのつながりです。市民も、どっちかというと浜田系が強い。だからオスプレイの暫定配備もできるんです。国との強いつながりで補助金を持ってきてくれるならいいと。そういう流れのなかで船場が食い込んで、CCCも入ってきているんじゃないでしょうか。

 議会のなかで、それをおかしいと指摘する議員は4~5人だけ。あとは、みんな与党ですから。もうなんの指摘もないですよ」(同)

 10年前、木更津市と同じく、市長の強力なリーダーシップのもとで佐賀県武雄市に登場したのが、元祖“ツタヤ図書館”(2013年4月、CCC運営のもと新装開館した武雄市図書館・歴史資料館)だった。その武雄市で昨年11月、大きな事件が起きた。

 議会の承認を得ずに、市内1万5000戸に防災情報システムを導入したのは違法だとして、佐賀地裁は、武雄市の現市長に4億円を請求するよう命じたのだ。

 武雄市で、そんな議会無視の前例となったのが、前市長がツタヤ図書館を誘致するにあたって、議会承認の前に、TSUTAYAの運営会社CCCと指定管理契約を締結したことだったと報じられた。

 奇しくも、CCCが基本計画を策定する市民交流プラザに続いて、新図書館の整備構想が発表された木更津で、新たなツタヤ図書館構想が囁かれているのは、市政を厳しくチェックするべき議会がその役割を十分に果たしていないからだと言われたら、果たして木更津市の市議会関係者は、なんと答えるだろうか。

(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)

日向咲嗣/ジャーナリスト

日向咲嗣/ジャーナリスト

1959年、愛媛県生まれ。大学卒業後、新聞社・編集プロダクションを経てフリーに。「転職」「独立」「失業」問題など職業生活全般をテーマに著作多数。2015年から図書館の民間委託問題についてのレポートを始め、その詳細な取材ブロセスはブログ『ほぼ月刊ツタヤ図書館』でも随時発表している。2018年「貧困ジャーナリズム賞」受賞。

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