言葉をともなわない方法で気持ちを相手に伝えるコミュニケーションを、心理学では非言語コミュニケーションという。手や腕の動かし方、目線、姿勢、うなずきなど、ふだん無意識のうちにしているしぐさから、その人の心理を読むことができる。この非言語コミュニケーションをよく観察し、相手の気持ちや精神状態をつかむことは、対人関係をうまく築くことに役立つ。
指の腹で鼻をこする仕草があらわすもの
『しぐさで心理を読む方法』(山辺徹著、河出書房新社刊)では、相手に従う「服従行動」や自分を慰める「自己親密性」など、人の心と動作の不思議な関係を重要ワードとともにわかりやすく解説する。
相手の隠された敵意と好意は、しぐさにあらわれることがある。たとえば、一般的に指の腹で鼻をこするのは消極的な「拒絶のサイン」と考えられている。人は真剣に考え事をしていて答えが出ないでいるとき、無意識のうちによく手を顔にもっていく。目をこすったり、あごをさすったりするのも、誰にでも共通する一種のクセのようなもの。考えがまとまらずに、イライラしているときも、思わず手で顔をさわっている。とくに顔の真ん中にあってさわりやすい鼻は、無意識のうちに手がいきやすい場所となる。
誰かに何か頼み事をしている際、相手が無意識のうちに鼻に手をやり、さすったりしているときは、あまり脈がないと覚悟したほうがいいかもしれない。また、相手が話をしながら、ときどき鼻の下を指でさすったり、口のあたりに手をやるときは、話の内容に自信がもてないか、ウソをついている可能性がある。人はウソや隠し事をしようとするとき、無意識のうちに口を隠す。これはウソの出どころを隠したいという心理のあらわれ。けれど、同時に口を隠すことによって、いかにもウソをついていますと相手に知られることも恐れている。この微妙な葛藤のうちに、無意識に口にもっとも近い鼻の下に手をやると考えられている。こういった心の葛藤が無意識のうちに、何気ないしぐさにあらわれたりするのだ。
しぐさにあらわれるさまざまな心理を知ることで、相手がどんなことを考えているか、予想をつけることができる。しぐさで心理を読むことで、人とのコミュニケーションがより円滑にできるようになるはずだ。
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。