準備していたことはよどみなく話せるのに、急に話を振られるとしどろもどろになったり、つっかえたりしてしまう人は少なくない。とっさの切り返しには「頭の回転の速さ」が必要だが、これは生まれ持ったものだと考えられている。
しかし、実際にはこうした回転の速さは日頃のトレーニングで身につけることができる、とするのが『1秒で答えをつくる力 お笑い芸人が学ぶ「切り返し」のプロになる48の技術』(本多正識著、ダイヤモンド社刊)だ。お笑い芸人が日々磨いている力を一般人が手に入れるメリットは大きい。
会話の瞬発力がある人はビジネスでも一目置かれる
テレビを見ていると、話を振られたお笑い芸人が瞬時に気の利いた返答をしたり、少しひねりを加えた自説を返したりしている場面を目にすることがある。この会話の「瞬発力」こそがとっさの切り返しには必要になる。
この瞬発力を鍛えるために、本書では普段から目にする雑誌やウェブの記事をほめまくるというトレーニングを紹介している。「モデルが素敵」「見出しがわかりやすい」「レイアウトがきれい」など、ほめるセリフはなんでもOK。思いつくままにコメントする。それが終わったら、今度はツッコミを入れる。「色のバランスが悪い」「このモデルのファッションは苦手」など、重箱の隅をつつくようにツッコミを入れていく。
ちょっとしたトレーニングだが、得られるものは大きい。これまで何となく目に入るまま受動的に接してきた情報に能動的に触れる習慣がつくのである。急に話題を振られてしどろもどろになるのは、自分が意見を求められたら何を話すかを想定して話を聞いていないから。このトレーニングは普段から自分の意見を準備しておく訓練になるのである。
「好み」「趣味」「嗜好」に押し固められた頭に新しい風を入れる
すばやく反応して自分の意見を言えるようになったら大きな進歩。しかし、その意見が相手が考えてもいなかったような新鮮なものであればなおいい。ここまでできるようになったら、まちがいなく周囲の人から一目置かれる人になるだろう。
「うまいこと」「新鮮な意見」「斬新なアイデア」 これらはどれも才能が必要だとされてきた。しかし、これらもまた、訓練次第なのだ。たとえばネットでニュースを見ている時、私たちは自分が興味がある見出しをタップして詳しく読む。情報を入れるかどうかは「興味」にかかっていいるわけだ。しかし、これをあえて「興味がないものを読んでみる」に変えてみると、これまで好みや嗜好に押し固められてきた頭の中に新しい風が入ることになる。これまでは入ってこなかった知識が入れば、これまでとは違った意見が生まれる、というわけだ。
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当意即妙の切り返しができる人は、人から一目置かれやすく、それゆえにチャンスが舞い込みやすい。本書で明かされているお笑い芸人のスキルを得るためのトレーニングは、ビジネスの世界でも大いに役立つはずだ。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。