日本マクドナルドが20日に公式X(旧Twitter)アカウント上に投稿した動画CMのポストが、わずか4日間で世界で約1.1億回閲覧されるなどして反響を呼んでいる。17時以降に提供される「夜マック」メニューの「ポテナゲ」を、女の子と両親の3人で食べる様子を描いた20秒ほどのアニメーションで、童謡『夕焼け小焼け』の音楽が流れるなか、親子3人が自宅で仲睦まじく「ポテナゲ」を食べるというだけの何気ない日常生活の一場面を切り取ったもの。投稿に添えられた「特別じゃない、しあわせな時間。」というテキストのとおり、ストーリーとしては何か特別な出来事が起きるわけではないが、この動画に海外から数多くの声が寄せられ話題を呼んでいる。
パティが2倍の倍バーガー類をはじめ、通常より大容量かつ割安なメニューで知られる「夜マック」。なかでも「マックフライポテト(L)」1個と「チキンマックナゲット」10ピースがセットの「ポテナゲ大」(税込み600円~)をはじめとする「ポテナゲ」シリーズは人気メニューの一つだが、今回話題を呼んでいるのが「ポテナゲ」のネット動画CMだ。前述のとおりストーリーとしては何か特別なことが起きるわけではなく、「何気ない家族の日常のワンシーン」を描いたものだが、これに対してSNS上では以下のようにさまざまな声が寄せられ、さらに海外でも反響を呼ぶ事態に発展しているのだ。
<こういうの見ると胸が締め付けられる>
<キャラが可愛くていい>
<これを素直に「しあわせ」だと感じられる側の人間になっていきたい>
<結婚が幸せだと思わせるようなアニメーションは時代にあってない>
<女の幸せが結婚と子育てだけと決めつけているこの表現が日本の女性たちを苦しめている>
<結婚という古い幸せの固定観念を企業が未だに使ってる>
<こんな光景知らない。体験した事もない。特別な光景だよ>
<特別にイケメン&美女に仕立て上げたアイコンを使って「特別じゃない」って>
一定程度の反感を買ってしまうのは避けられない
マクドナルドといえば、これまでに木村拓哉や松重豊、前田敦子、堺雅人、常盤貴子、妻夫木聡など有名タレントを起用するCMを数多くテレビで放映してきたが、対照的に今回のCMは一般人のアニメキャラクターしか登場しない。企業のPR・プロモーションを手掛けるマーケティング会社プロデューサーはいう。
「SNS上では批判的なコメントが見られるが、感想を投稿しない大半の視聴者は単純に『ほほえましい』『見ていると癒される』という理由で何度も見ており、それが多くの好感と反響を呼んでいるのでは。場面設定としては家族が夕食として自宅で食べているとみられ、動画の最後には『夕方5時から』『デリバリーでも』という文字が表示されるので、マクドナルドが今力を入れているデリバリーの利用を促す意図と、『自宅の家族での夕食にも夜マックを』という訴求を狙っているCMといえる。ただ、家族客をターゲットとしたCMなので、自然と『家族×マック×幸せ』という要素の掛け合わせとなり、独身の男性や女性などから一定程度の反感を買ってしまうのは避けられない面はある」
では、海外で反響を呼んでいる理由は何か。
「日本のアニメは海外でもファンが多いが、単純に登場キャラクターの女の子の愛らしさや親子のやりとりが一部の人の心に刺さっているというのが大きな要因ではないか。また、近年では特にアメリカでは人種の多様性への配慮や政治的・社会的イシューへの言及が色濃く感じられるCMが少なくなく、今回のマクドナルドのCMのように無色透明で『何も訴えかけない』CMが珍しいという受け止められ方をしているのかもしれない。CMは日本マクドナルドが日本の消費者をターゲットにつくったものだが、マクドナルドの知名度は世界的なので、『マクドナルドがこんなCMをつくっている』ということで話題になっているのでは」(同)
(文=Business Journal編集部)