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ヤマト・佐川、異例の配送「遅延」発表…ブラックフライデーの影響は不明

文=佐藤勇馬、協力=坂田良平/物流ジャーナリスト
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ヤマト運輸のHPより

 ヤマト運輸と佐川急便が12月1日、物量の増加によって一部地域で荷物の配送遅延が発生していると発表した。ヤマト運輸は年末にかけてさらなる物量増加で全国的な遅延が起きる可能性があるとアナウンスしている。昨今、ドライバー不足などによる物流のひっ迫が加速していると危惧されている中、宅配便大手2社による異例の「遅延発表」があった背景について、専門家に見解を聴いた。

 国土交通省の発表によると、2021年度の宅配便取扱個数は49億5323万個で、前年度比較で1億1676 万個・約2.4%の増加。2022度の取扱個数は50億588万個で、前年度比較で5265万個・対前年度比1.1%の増加と、年々物量が増えている。

 さらに、11月下旬にAmazonや楽天などの通販サイトがいっせいにブラックフライデーを開催し、12月に入ってからも1日から始まったLINEヤフーの「ヤフービッグボーナス」や、4日からスタートした「楽天スーパーセール」など年末セールが目白押しとなっており、これらも物量の増加に影響しているとみられる。

 実際、大手ECサイトのセールなどによる影響はどうなっているのだろうか。物流ジャーナリストの坂田良平氏に業界の状況を聴いた。

「現時点での影響については、はっきりとしたことは分かりません。というのは、Amazonは流通額の原則非公表を貫いており、宅配大手のヤマト・佐川・日本郵便の結果もまだ出ていないからです。ただ、11月30日付の日経新聞では『楽天によると2022年のブラックフライデーの流通額は21年比1.2倍だった。23年の流通額は非開示だが、担当者は『昨年を超える好調な結果となっている』と話す』と報じられています。楽天が好調なのに、Amazon他が振るわないということはないでしょう」(坂田氏)

 徐々に定着してきたブラックフライデーや各社の年末セールが宅配便の物量を増加させている可能性はありそうだ。

目前に迫る「物流2024年問題」

 その一方、実は2023年度は宅配便需要が低迷傾向にあり、ヤマト運輸の2023年上期の宅配便取扱個数は約11億2400万個で前年同期比2.2%減、佐川急便の取扱個数も約6億5500万個で前年同期比2.7%減となった。業界3位の日本郵便も同様に伸びが悪く、ほぼ寡占状態となっている宅配大手3社の実績は前年割れが確実視されている。

 宅配便需要の減少には、昨年後半からの物価上昇に伴う消費の低迷が大きく影響しているとみられている。しかし、需要が低迷していてもドライバー不足などによって配送状況が厳しいのは変わらないようだ。そうした問題の影響によって、ヤマト運輸は6月1日から一部地域での翌日配送をやめ、翌々日の配送になると発表した。

 ただ、宅配便の取扱個数が減少しているとなれば、昨今危惧されている物流のひっ迫は多少なりとも緩和されそうに思える。

 しかし、これについて坂田氏は「物流=宅配ではありません」と指摘する。坂田氏によると、宅配は運送ビジネスにおける一つのジャンルでしかなく、貨物重量比でいえばごくわずか。一部では「Uber Eatsのように個人が宅配に参入できる仕組みをつくればドライバー不足問題は解決するのでは」という意見もあるが、たとえば鉄骨のような巨大で重いものを個人ドライバーが運べるわけではない。一般的に運送は宅配だけで語られてしまいがちだが、宅配需要が低迷傾向にあろうと、運送業界全体への影響は限定されるようだ。

 物流業界は、来年4月からトラックドライバーの時間外労働の上限が年間960時間になるなど規制が強化され、人手不足や輸送量の減少などが懸念される「物流2024年問題」を控えており、どのような状況になっていくのか今後も注目したい。

(文=佐藤勇馬、協力=坂田良平/物流ジャーナリスト)

坂田良平/物流ジャーナリスト、Pavism代表:取材協力

坂田良平/物流ジャーナリスト、Pavism代表:取材協力

「主戦場は物流業界。生業はIT御用聞き」をキャッチコピーに、ライティングや、ITを活用した営業支援などを行っている。物流ジャーナリストとしては、連載『日本の物流現場から』(ビジネス+IT)他、物流メディア、企業オウンドメディアなど多方面で執筆を続けている。
Pavism

Twitter:@Pavism_jp

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