厚生労働省は19日、2024年度の公的年金の支給額を前年度から2.7%引き上げると発表した。増額は2年連続。前回に続いて、年金財政を安定させるため給付を抑える「マクロ経済スライド」を発動。物価上昇率より低い伸びにとどまり、実質目減りとなる。6月に支給する4月分から反映させる。
支給額の伸びは1992年度(3.3%)以来32年ぶりの高水準。武見敬三厚労相は19日の閣議後記者会見で、支給額の目減りに関し「マクロ経済スライドは公的年金制度を将来にわたり持続可能とする仕組みで、役割をご理解いただきたい」と強調した。
年金支給額は、直近1年間の物価と過去3年度分の賃金の変動率を基に毎年度改定している。総務省が19日に公表した昨年の全国消費者物価指数を踏まえた物価上昇率は3.2%、賃金上昇率は3.1%だった。
政府は物価と賃金がプラスの場合に適用するマクロ経済スライドを2年連続で実施。伸び率の小さい賃金上昇率から0.4%分を抑制するため、最終的な改定率は2.7%引き上げとなった。この結果、年金の伸びは物価上昇に追い付かず、実質目減りする。
マクロ経済スライドの適用は今回5回目。同省は今春、年金制度の健全性を確かめる5年に1度の財政検証を行い、25年の次期年金制度改革に反映させる。議論ではマクロ経済スライドの在り方もテーマの一つになる。
24年度の支給額は68歳以下の場合、国民年金では保険料を40年間納付した満額1人分で前年度比1750円増の月額6万8000円。厚生年金は夫婦2人のモデル世帯の場合、同6001円増の同23万483円。
厚労省は国民年金の月額保険料も公表した。24年度は前年度比460円増の1万6980円、25年度は同530円増の1万7510円。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/01/19-14:32)