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小学館、過去にもドラマ原作改変で問題「漫画家に許諾を取る、が守られない」

文=Business Journal編集部
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小学館(「Wikipedia」より/Kounoichi

 昨年10月期の連続テレビドラマ『セクシー田中さん』(日本テレビ系)で、原作者の意向に反し何度もプロットや脚本が改変されていたとされる問題。『セクシー田中さん』の制作にあたっては原作者の芦原妃名子さんは、ドラマ化を承諾する条件として、原作代理人である小学館を通じて日本テレビ側に、必ず漫画に忠実にするという点などを提示していたが、その条件が小学館側から日本テレビに正確に伝えられていなかった可能性があるとニュース番組『Live News イット!』(フジテレビ系/1月30日放送)などで伝えられている。その小学館が、過去にも作品の映像化において原作者の意向をテレビ局側に正確に伝えていなかった事例があるという告発がなされ、注目されている。テレビ界全体に広がる原作改変の問題。原作の出版元の動きにも原因の一端があるのだろうか。業界関係者の見解を交え追ってみたい。

『セクシー田中さん』の制作にあたっては原作者の芦原さんは、ドラマ化を承諾する条件として日本テレビ側に、必ず漫画に忠実にするという点や、ドラマの終盤の「あらすじ」やセリフは原作者が用意したものを原則変更しないで取り込むという点を求めていたとされる。芦原さんが1月にブログなどに投稿した文章によれば、何度も大幅に改変されたプロットや脚本が制作サイドから提出され、終盤の9〜10話も改変されていたため芦原さん自身が脚本を執筆したという。芦原さんは1月29日、栃木県内で死亡しているのが発見された。

 問題が表面化したのは昨年12月のことだった。脚本を担当する相沢友子さんは自身のInstagramアカウントで、

「最後は脚本も書きたいという原作者たっての要望があり、過去に経験したことのない事態で困惑しましたが、残念ながら急きょ協力という形で携わることとなりました」

「今回の出来事はドラマ制作の在り方、脚本家の存在意義について深く考えさせられるものでした。この苦い経験を次へ生かし、これからもがんばっていかねばと自分に言い聞かせています。どうか、今後同じことが二度と繰り返されませんように」

と投稿。9話・10話の脚本は自身が担当していない旨を説明した。

 これを受けさまざまな憶測が飛び交うなか、1月に芦原さんは自身のブログ上で経緯を説明。ドラマ化を承諾する条件として、制作サイドと以下の取り決めを交わしていたと明かした。

<ドラマ化するなら『必ず漫画に忠実に』。漫画に忠実でない場合はしっかりと加筆修正をさせていただく>

<漫画が完結していない以上、ドラマなりの結末を設定しなければならないドラマオリジナルの終盤も、まだまだ未完の漫画のこれからに影響を及ぼさない様『原作者があらすじからセリフまで』用意する。原作者が用意したものは原則変更しないでいただきたい>

 芦原さんは、これらの条件は<脚本家さんや監督さんなどドラマの制作スタッフの皆様に対して大変失礼な条件>であると認識していたため、<この条件で本当に良いか>ということを原作漫画の発行元である小学館を通じて日本テレビに何度も確認した上でドラマ化に至ったという。

 だが、実際に制作が進行すると毎回、原作を大きく改編したプロットや脚本が制作サイドから提出され、

<漫画で敢えてセオリーを外して描いた展開を、よくある王道の展開に変えられてしまう>

<個性の強い各キャラクター、特に朱里・小西・進吾は原作から大きくかけ離れた別人のようなキャラクターに変更される>

といったことが繰り返された。そして1~8話の脚本については芦原さんが加筆修正を行い、9~10話の脚本は芦原さん自身が執筆し、制作サイドと専門家がその内容を整えるというかたちになったという。

 前出のフジテレビ『Live News イット!』報道によれば、「原作を変えてほしくないことを脚本家も聞いていなかった」可能性があるという。

フジテレビ『海猿』をめぐる問題

 その小学館で過去に同様の事例があったという見方も出ている。同社が出版している漫画『海猿』は04年にフジテレビ製作で映画化されたが、原作者で漫画家の佐藤秀峰氏は今月2日、「note」上に『死ぬほど嫌でした』と題する記事を投稿。以下のように綴った。

<漫画家は通常、出版社との間に著作権管理委託契約というものを締結しています。出版社は作品の運用を独占的に委託されているという論理で動いていました。契約書には都度都度、漫画家に報告し許諾を取ることが書かれていました。が、それは守られませんでした>

<すでに企画が進んでいることを理由に、映像化の契約書に判を押すことを要求されました>

<こうして僕は映像に一切文句を言わない漫画家となりました。一方、出版社への不信は募ります>

<出版社は、テレビ局には「原作者は原作に忠実にやってほしいとは言っていますけど、漫画とテレビじゃ違いますから自由にやってください」と言います。そして、漫画家には「原作に忠実にやってほしいとは伝えているんだけど、漫画通りにやっちゃうと予算が足りないみたい」などと言いくるめます>

 その後、映画は第4作まで制作されたものの、フジテレビからアポなしの直撃取材を受けたり、関連本を無断で出版されたりしたことで不信感が高まり、契約更新を拒絶。その結果、現在では『海猿』シリーズはテレビでの再放送やネット配信は行われていない。

 このほか、小学館をめぐっては、『金色のガッシュ!!』の作者で漫画家の雷句誠氏がX上で、

<一つ言えるのは日テレも小学館も、組織です。そして漫画家は個人です。コレだけ見ても芦原先生がいかに苦しい戦いをしたかがわかります>

とポスト。雷句氏はかつて同社が出版する「週刊少年サンデー」で『金色のガッシュ!!』を連載していたが、編集部とのトラブルが原因で2007年に連載を終了。5枚のカラー原稿を紛失されたため同社を提訴したことがある(のちに和解が成立)。

改変めぐるトラブル、あとを絶たない

『セクシー田中さん』の問題を受け、原作者が映像化において制作サイドに改変されたとされるケースがクローズアップされている。

 22年に放送された『霊媒探偵・城塚翡翠』で、原作の改変に原作者が難色を示し、途中で原作者自ら脚本を執筆するという事態が発生。当時、原作者である相沢沙呼氏はX(旧Twitter)上に<四話、脚本をまるっと書かせて頂きました>(同年11月6日)とポストしていたが、相沢氏は今回の『セクシー田中さん』の問題を受けX上で次のようにポストしている。

<約束通りにしてもらうこと、原作を護るためにしたこと、そうした諸々の奮闘が『揉めてる』『口出し』『我が儘』みたいに悪く表現されたときが凄く哀しかったし、契約の縛りで実際になにがあったのかを言えないのは本当にしんどくて、自分が悪者になったような気持ちに陥ったのを思い出しました>(1月30日)

 また、1997年にフジで放送された『いいひと。』(制作:共同テレビ・関西テレビ)で、制作サイドは原作漫画の作者、高橋しん氏との間で取り交わしていた、主人公のキャラクターや設定を変えないという条件を破り、改変して放送。これを受け高橋氏は「多くの読者の方に悲しい思いをさせてしまった」(高橋氏の漫画制作事務所「高橋しん・プレゼンツ」公式サイトより)ことに対し責任を取るかたちで、当時「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で連載中だった同作の連載を終了させていた。

 当時、高橋氏はその理由について「高橋しん・プレゼンツ」公式サイト上で次のように説明していた(以下、原文ママ)。

<終了を決めた直接のきっかけは、テレビドラマ化でした。関西テレビ・共同テレビのかたにドラマ化の許可を出すための条件の中に、ゆーじと妙子だけは変えないこと、という一文がありましたが、多くのかたが感じたように、ゆーじは変え「られて」いました。私は、もうこれ以上わたし以外の誰にも変えられずに、読者の方々の中の「いいひと。」を守ること、そして同時に多くの読者の方に悲しい思いをさせてしまった、その漫画家としての責任として私の生活の収入源を止めること、その二つを考え連載を終了させようと思いました>

 そして、前述の『海猿』の映像化でも同様の事例が。原作者の佐藤氏は前出「note」記事内で以下のように綴っており、脚本を確認させてもらう機会すら与えられなかったと明かしている。

<映像関係者には一人も会いませんでした>

<脚本? 見たことがありませんでした>

<好きなようにされていました。作品が自分の手から奪われていく感覚がありました>

<映画はDVD化されてから観ました>

<僕が漫画で描きたかったこととはまったく違いました>

原作者と脚本家、意思疎通めぐる問題

 こうした問題が起きる背景について、ドラマ制作関係者はいう。

「原作モノのドラマ化は原作代理人である出版社とテレビ局が協議、契約して進み、脚本の内容についても原作者と脚本家が直接やりとりをするのではなく、間に出版社とテレビ局が介在するかたちでやりとりが進む。稀に必要に迫られて原作者と脚本家が直接やりとりするケースもあるが、一般的に出版社もテレビ局もそれを避けようとする。

 局としては、ドラマ制作には数多くの関係者や利害がからんでくるため、脚本家が局のコントロールが及ばないところで勝手に脚本づくりを進められると困るという事情がある。一方、出版社側も、ドラマ化で作品の売上増大が期待できるため、原作者が忖度抜きでストレートに局や脚本家に要求を伝えることで揉めて降りられると困る。このほか、場合によっては、テレビ局側とのやりとりや様々な条件交渉などが原作者に筒抜けになってしまうと出版社としては都合が悪いというケースもある。出版社が作品のドラマ化を優先する結果、原作者からの要求や提示された条件をそのまま局側に伝えていないというケースもあるだろう」

 実際に佐藤氏も前出「note」記事内でこう綴っている。

<言えることは、出版社、テレビ局とも漫画家に何も言わせないほうが都合が良いということです>

<出版社も作家とテレビ局を引き合わせて日頃の言動の辻褄が合わなくなると困るので、テレビ局側の人間に会わせようとはしません>

 別のドラマ制作関係者はいう。

「原作者によっては、ドラマは別物ととらえて脚本にまったく口を出さないという人もいるが、ある程度の改変には寛容な人が大半という印象。大前提としてドラマは数字が重要で、また1話1時間×10回ほどという縛りがあるという事情を理解してくれている。だが、原作者と脚本家が直接やりとりしてしまうと、それぞれ自分の個人名を背負って作品を世に出すため思い入れが強い分、意見も衝突しやすい。そうした対立が生じないように調整役として局と出版社が間に入っておくというのは、ある種のドラマ制作における知恵でもある」

 では今回の『セクシー田中さん』の制作ではどうだったのだろうか。日テレ関係者はいう。

「日テレと小学館がどういうやりとりをしていたのかは、担当者しか知り得ないブラックボックス。ただ、『ドラマ化を実現させ、完成させる』という点で両者の利害は一致しており、そのために小学館は原作者を、日テレ担当者は脚本家を含む制作陣を説得しながら進めてきたわけで、その過程のなかで小学館が原作者からの要求を全てストレートに日テレ側に伝えていたのか、また日テレが小学館からの要求を全て脚本家に伝えていたのかといわれれば、そこは何ともいえない。双方とも企業である以上、そこに配慮なり表現の工夫なりというものは発生するかもしれない。

 将来的な取引もあるため、第三者委員会などが設けられ外部の目線で正式に調査が入らない限り、日テレと小学館が経緯を公表することはないだろう。現時点では日テレにこれ以上の調査やその結果の公表を行う動きはない。日テレとしては、最終的には脚本家の意向を反映した脚本に基づいて制作し放送したのでプロセスに問題はなかったというスタンスだろう」

 実際に日テレは芦原さんの訃報に際し次のコメントを発表している。

<2023年10月期の日曜ドラマ『セクシー田中さん』につきまして日本テレビは映像化の提案に際し、原作代理人である小学館を通じて原作者である芦原さんのご意見をいただきながら脚本制作作業の話し合いを重ね、最終的に許諾をいただけた脚本を決定原稿とし、放送しております>

 ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)や『アンナチュラル』(同)などで知られる脚本家の野木亜紀子氏は自身のX(旧Twitter)上に次のようにポストしている。

<いずれにしても日テレのコメントは、第二弾が出てもなお、あまりにも足りていない>

<本来、日テレと小学館の間で話し合い納めるべきだったところがなぜここまでのことになってしまったのか。いま調査中であるならば調査中である旨を公表し、今後明らかにしていくという意思を見せた方がいいのではないか。小学館と見解が異なるというのであれば第三者委員会のような立場の調査を入れる必要もあるかもしれない>

<誠実であろうとしたために亡くなられた芦原先生のためにも、原作読者・ドラマ視聴者に対しても、これで終われるはずがないし、大きなショックを受けているであろうドラマ出演者や関わった人たちに対しても、日テレには誠実であってほしいです。起きてしまったことに対しての姿勢が問われています>

(文=Business Journal編集部)

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