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札幌ドーム「芝のピッチ」劣悪化、Jリーグ試合で負傷者が続出…経営悪化も

文=Business Journal編集部
札幌ドーム「芝のピッチ」劣悪化、Jリーグ試合で負傷者が続出…経営悪化もの画像1
札幌ドーム、野球モードからサッカーモードへの切替作業の様子(公式YouTubeチャンネルより)

 10日に札幌ドームで行われた明治安田J1リーグ第3節の北海道コンサドーレ札幌と浦和レッズの試合で、浦和の選手が相次ぎ負傷し交代。その原因がピッチの芝の状態が悪かったためではないかという指摘が広まっている。実際に選手からは芝の劣悪さを指摘する声が相次いでいる。札幌ドームはプロ野球球団・北海道日本ハムファイターズが本拠地を他へ移した影響で2024年3月期の純損益について約3億円の赤字を見込んでいるが、財務悪化が芝のメンテナンス不備を招いているのではないかと不安視する見方も広まっている。

 この日の試合では43分に浦和のDFアレクサンダー・ショルツが自らピッチに座り込み、そのまま交代。52分にFW前田直輝が足を痛めて交代し、83分にMF小泉佳穂も倒れ込み交代となった。試合後の会見でペア・マティアス・ヘグモ監督は「ショルツはハムストリングのほうに少し痛みを感じた」と説明。前田と小泉については「柔らかいピッチで筋肉に負担がかかって、つった」と説明したが、10日付「サッカーダイジェストweb」記事によれば、他の選手からも「思った以上に芝の状態が悪かった」(西川周作)、「今日のピッチはだいぶきつかった」(伊藤敦樹)といった声が相次いでいる。また、試合前日の段階でコンサドーレの選手からはピッチの一部で土が露出するなど状態の悪さを懸念する声が出ており、ピッチ状態の劣悪さを指摘する報道も多数出ている。

 札幌ドームの野球モードは人工芝だが、サッカーモードは「ホヴァリングサッカーステージ」と呼ばれる天然芝が使用されている。縦120m、横85m、重さ8300tの天然芝ステージがスタジアムの屋外、バックスクリーン裏手にあたる場所で育成されており、使用時には外野席の一部が移動して開き、天然芝ステージが空気圧によって7.5cm浮上し、34個の車輪によってスタジアム内に移動。さらに客席の一部が旋回式可動席となっており、長方形の天然芝ステージに合わせて客席スタンドの形状も変形する。ちなみにコンサートやイベントで使用される際には人工芝も天然芝も取り払われたコンクリートの床が露出するかたちとなる。

 10日のピッチは茶色がかったような色をしていたため、試合中継を見た一般の人々からもSNS上で

<芝やばくね?>
<芝の色が気になる…大丈夫か?>
<今年は明らかに酷いコンディションなのが分かる>

といった声があがっていた。冬の札幌は雪に覆われ日照時間が少なく低温の日が続くため、芝が十分に発育しにくい環境であることは確かだ。3月でも雪が残っているため、一般的に土や芝の屋外グラウンドでスポーツ競技を行うことは困難だ。とはいえ、札幌ドームはコンサドーレ札幌のホームスタジアムであり、この時期に公式戦が行われることは予定されていたことであるため、万全の環境を整備できなかった責任は大きいともいえる。

  例年に比べて芝のコンディションが悪いというのは事実なのか。札幌ドームは次のように説明する。

「例年、積もった雪を機械で15cm程度まで薄くし、最終的にスタッフによる手作業で除雪して芝生を露出させます。
※機械作業は誤って芝生を傷つける場合があるので、最後は人の手で除雪します。
雪によって水分を多く含んだ芝生に、多くの作業員が立ち入るために、この除雪作業による芝生への負担がございますが、今回は、除雪後(芝生が露出後)に再度積雪したため、再度除雪を行う(芝生を人が踏む)ことになり、例年に比べて、負担が大きくなってしまいました。今後も適切な管理を研究・実施し、より良いプレー環境を選手に提供できるよう努めてまいります」

経営の圧迫要因

 そんな札幌ドームで懸念されているのが経営悪化だ。01年に開業した札幌ドームは、経営安定化のためにプロ野球球団の日ハムを誘致し、04年から日ハムの本拠地となっていたが、札幌ドームは16年に日ハムから徴収する一試合当たりの使用料を値上げ。日ハムが札幌ドームに支払っていた使用料は1日あたり約800万円前後とみられ、球場内の広告料や売店など付帯施設からの収入もほとんどが札幌ドームの取り分となっており、日ハムは16年から本拠地移転の検討を本格化。昨年シーズンから本拠地をエスコンフィールドHOKKAIDO(北広島市)に移転させた。日ハムの「流出」により年間20億円以上とみられる売上を失った結果、24年3月期の純損益が2億9400万円の赤字予想からさらに膨らむ見通しとなるなど苦境に陥っている。

 昨年には札幌市の支出によって総額10億円を投入して1~2万人規模のイベントを開催する「新モード」を設置したが、使用・予約件数は低迷。今年1月からは施設の命名権(ネーミングライツ)を1年で2億5000万円以上、希望期間は2~4年という条件で販売するとして公募を行っていたが、応募締め切り日である2月29日、応募がなかったことが発表された。 

 SNS上では

<札幌ドームの収入も減って、経費削減の為に何かしら芝の管理にもしわ寄せが来ているのでは>

など、経営悪化がピッチの整備に悪影響をおよぼしているのではという見方も出ているが、札幌ドームは次のように説明する。

「上記の通りに、気候による影響となります」

 地元メディア関係者はいう。

「さすがに経営難になったから芝のメンテナンスがおざなりになっているということはないだろうし、仮にそうであるならプロスポーツの興行を行う資格はないといえるが、このホヴァリングサッカーステージ方式が立ち行かなくなる懸念はある。人工芝を巻き取って客席スタンドを移動させ、屋外で育成している芝をスタジアム内部に持ってくるというのは最新鋭の方式だが、大がかりなゆえに1回の作業あたりの費用も高額。本拠地とするプロ野球球団がなくなって野球の試合頻度がぐっと減り、コンサートなどのイベントも少なくなった今、サッカー専用スタジアムであれば発生しないコストが生じるわけで、この方式が逆に経営の圧迫要因となっており、宝の持ち腐れ状態といえる。抜本的な対策を講じない限り、現状のままでは存続は困難になりつつある」

 札幌市の本年度予算では札幌ドームへの助成金として1億4000万円が計上されており、札幌ドームの運営会社は札幌市が55%の株式を持つ第三セクターであるため、経営が苦しくなれば追加で税金が投入される可能性もある。地元経済界では解体論も浮上するなか、早急な抜本的改革が求められている。

(文=Business Journal編集部)

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