ビジネスジャーナル > 企業ニュース > 札幌ドーム、命名権販売が波紋
NEW

札幌ドーム、2.5億円で命名権販売が波紋…「上から目線・強気」の各種条件

文=小林英介
札幌ドーム、2.5億円で命名権販売が波紋…「上から目線・強気」の各種条件の画像1
札幌ドーム(23年2月、本稿記者撮影)

 株式会社札幌ドームは1月9日、命名権(ネーミングライツ)を販売すると発表した。プロ野球・北海道日本ハムファイターズが昨年度シーズンから本拠地をエスコンフィールドHOKKAIDO(北海道)に移したことで、2024年3月期の純損益が2億9400万円の赤字予想からさらに膨らむ見通しとなるなど苦境に陥っている札幌ドームだけに、なんとしても新たな収入源を確保したいところだろう。だが、札幌ドームが命名権販売にあたり提示した条件が、あまりに「上から目線」で「強気」だとの声も出ている。

楽天は何度も名称を変更、ネーミングライツとは

 ネーミングライツとは、対象の施設に企業の名前や商品名などを使用できる権利をいう。企業側から収入を得ることで、施設の運営に役立てる狙いがある。新型コロナウィルス感染症が拡大した際には、プロ野球などスポーツの試合も中止を余儀なくされ、試合が行われるはずの施設も使用されなくなった。そのため、ネーミングライツを取得した企業にとっては広告効果が薄まり、契約額減額の相談をする企業もあった。

 東北楽天ゴールデンイーグルスは宮城県にある本拠地について、2005年に「フルキャストスタジアム宮城」、08年に「日本製紙クリネックススタジアム宮城」、14年に「楽天koboスタジアム宮城」、17年に「Koboパーク宮城」、18年に「楽天生命パーク宮城」、23年に「楽天モバイルパーク宮城」などと球場名を変えている。また、埼玉西武ライオンズは埼玉県にある本拠地について、最近だと05年に「インボイスSEIBUドーム」、07年に「グッドウィルドーム」、15年に「西武プリンスドーム」、17年に「メットライフドーム」、22年に「ベルーナドーム」などへと名前を変えている。こうした頻繁な名称変更にはネーミングライツが関係しているのだった。

「悪あがき」「価値ない」…札幌ドームに注がれる厳しい目

 札幌ドーム命名権協賛企業の募集要項によると、ドーム側が希望する額は1年で2億5000万円以上、希望期間は2~4年。主な希望事項として以下を設定している。

(1)愛称に「ドーム」を含めること
(2)愛称は、公の施設にふさわしいものとし、施設の設置目的がイメージできること(3)親しみやすさや呼びやすさなど、市民および施設利用者の理解が得られる愛称とすること

 2月29日まで募集し、4月頃から新たな名称を使い始めたい考えだ。ただ、札幌ドーム側が希望している2億5000万円という金額については「高すぎる」などと冷ややかな声が聞こえてくる。

 1月9日付け中日スポーツ記事『経営ピンチの札幌ドーム、半額値下げでの命名権公募も…ネット上では「負のレガシー」「見通し甘すぎ」』は、札幌ドームの23年度の赤字見込みが3億円近くだと報道。X(旧Twitter)上では「いまさら札幌ドームのネーミングライツとか持ちたい人居るんだろうか…」「そんなに価値無いだろ」などと厳しい意見が出ていると書かれている。また、1月17日付「AERAdot.」記事『札幌ドーム「2.5億円の命名権」は高すぎ、買い手はいるの? 今回の動きに“悪あがき”の声』は、関係者の話として「ネーミングライツ導入は良いアイデアだが希望金額は現実的ではない。企業広告の打ち方に関しては見直しが進んでいるが、通常の広告看板掲示と近い形のネーミングライツに対しての適正価格とは思えない。ドーム運営側は世間知らずと言われても仕方ない」という見方を紹介。将来における赤字がもっと膨らむとし、「最後の悪あがき」として今回の募集に至った可能性があるとしている。

札幌ドーム「広告収入増加策の1つとして販売」、札幌ドームの運命

 実は札幌ドームが命名権協賛企業を募集したのは今回が初めてではない。2011年に年5億円以上、5年間以上という希望を提示し、「札幌ドーム」の言葉を分割せずに含めることなどを条件に募集したものの、条件で折り合う企業は出ず、販売には至らなかった。

 札幌ドーム側は本稿記者の取材に対し、「(今回のネーミングライツの販売は)広告収入の増加策の1つとして行うことになった」と回答。金額についてはコンサルティング会社のニールセンが算出したものだという。なお、締切までに希望者が現れなかった場合は「いったん募集を締め切ったうえで再募集をかける」とした。

 札幌ドームの経営は厳しい。日ハムが本拠地を移したことで年間20億円以上とみられる売上を失い、24年3月期の純損益は2億9400万円の赤字予想からさらに膨らむ見通し。そんななか、集客の要として総額10億円を投入して設置したのが、1~2万人規模のイベントを開催する「新モード」だが、使用・予約件数は少なく、市民からは「事実上の税金の無駄使い」との声もあがっている。すでに市は本年度予算で札幌ドームへの助成金として1億4000万円を計上するなど事実上の補填を決定しているが、札幌市が55%の株式を持つ第三セクターである札幌ドームの経営が行き詰まれば、さらに税金が投入される可能性もあるため、地元経済界では早くも「ドーム解体」論まで聞かれる事態となっている。

 果たしてネーミングライツの取得を希望する企業は現れるのだろうか。もしかしたら今回のネーミングライツ販売が成約に至るかどうかが、札幌ドームの運命を左右するかもしれない。

(文=小林英介)

小林英介/ライター

小林英介/ライター

ライター。1996年北海道滝川市生まれ。業界紙記者として働きつつ、様々な媒体でも活動している。

札幌ドーム、2.5億円で命名権販売が波紋…「上から目線・強気」の各種条件のページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!