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木下隆之「クルマ激辛定食」

トヨタ「センチュリー」、21年ぶり全面刷新…「1960万円」絶品の乗り心地をリポート

文=木下隆之/レーシングドライバー
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トヨタ自動車「センチュリー」

 初代センチュリートヨタ自動車)がデビューしたのは1960年代というから、日本は高度成長期の真っただ中。それを支える自動車産業も大きく成長し続けていた。日本人の自動車保有台数は日増しに増え続けていたし、販売台数はもちろんのこと、自動車メーカーの営業利益も右肩上がり。そればかりか、それまでは外国車の模倣でしかなかった日本車が、技術的にもブランド的にも独立心に溢れ始めていた時代でもある。

 そんな日本にとって誇らしい時代に、国を代表する高級車の開発はスタートした。皇族にふさわしい御料車の必要が叫ばれたのも不思議ではない。

 天皇皇族が使用する御料車として開発されたセンチュリーは、のちに公官庁や大企業の“ショーファードリブン”(運転手付きのクルマ)となり、政治家、官僚、あるいは大会社の役員が後席でくつろぐためのモデルとして愛されていく。

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 そんなセンチュリーも、現在は3代目。なんと21年ぶりにフルモデルチェンジした。発表されたのは2018年6月だが、クルマの特殊性ゆえに試乗の機会がなく、今回、ようやく生のインプレッションを取ることができたので報告しよう。

 エンジンはV型8気筒5リッターハイブリッドである。それまでの世界でもまれなV型12気筒ユニットから、V型8気筒ハイブレッドに改められた。先代のレクサスLS600に搭載されていたユニットが移植されたのだ。

 乗り味は「絶品」のひと言である。そもそもエンジンはモータースタートだから、振動もノイズもない。すーっと何事もなく速度を上げていく。速度が高まってエンジンがかかっても、振動らしき振動はない。驚くべきはその静粛性で、音響スタジオに一人残されたかのような、不気味に感じるほどの静けさなのである。

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 車内とエンジンルームとの隔壁には、エンジン音を遮断するダッシュサイレンサーが貼り込まれているばかりか、フロアから伝わるノイズをカットするアルファルシートが貼られている。遮音材や発泡材が贅沢に使われている。静けさがセンチュリーに求められるべき最大の個性なのである。

 それが証拠に、ウインカーが点滅する時の、カチカチと光と連動する音がやけに気になったり、自らの喉が唾を飲み込む音や、アゴがこきっと鳴る音などが響いたほどである。

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 与えられたプライスタグには「1960万円」と記載されている。同様に御料車としての使い方もされているロールス・ロイス(ロールス・ロイス・モーター・カーズ)やマイバッハ(ダイムラー・クライスラー)と比較すれば、相当に“庶民的”である。レクサスLSよりは高価とはいえ、メルセデス・ベンツの「Sシリーズ」やBMWの「7シリーズ」といった世界の高級車との競合もあり得る。つまり、新型センチュリーは御料車から派生した超VIPセダンではあるものの、驚くほどパーソナル性を盛り込んでいるように思えた。

 装飾はいたずらに華美ではないが、七宝焼エンブレムに代表されるように、居室には並々なる拘りがある。それでいて成金的な派手さはない。それは、“本当の高級”を知る人のためのクルマなのだろうと思えた。

「センチュリーといえば“黒塗りの公用車”ですが、シルバー系をお選びになる方も多いのです。パーソナルユースが目的なのかもしれません」

 関係者のそんな声もある。新型センチュリーは、新たな顧客層のハートに響くことで、街の景色を変えるかもしれない。そう思えるほど、存在が身近になったように感じる。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

木下隆之/レーシングドライバー

木下隆之/レーシングドライバー

プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

Instagram:@kinoshita_takayuki_

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