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渡辺陽一郎「いちばん詳しい『人気の新車』完全ガイドシリーズ」

ダイハツ「タント」は「N-BOX」「スペーシア」と比べ“買い”なのか?全ポイントを評価

文=渡辺陽一郎/カーライフ・ジャーナリスト
ダイハツ「タント」は「N-BOX」「スペーシア」と比べ“買い”なのか?全ポイントを評価の画像1ダイハツの「タント」(「【公式】タント トップページ|ダイハツ」より)

どんなクルマなのか?

 今は新車として売られるクルマの35~38%が軽自動車です。1990年は23%でしたが、2000年には31%に増えて、10年には35%に達しました。

 また国内販売がピークだった1990年に比べると、2018年における小型/普通車の売れ行きは56%まで減りました。今は28年前の約半分です。ところが、軽自動車は7%増えています。その結果、軽自動車の比率が35~38%に達するのです。

 そして、軽乗用車の約45%を占める人気のタイプがスーパーハイトワゴンです。全高は1700mmを上回り、広い室内を備えています。4名で乗車しても快適で、後席を畳むと自転車のような大きな荷物も積めます。

 後席のドアはスライド式なので、電動機能を装着できます。したがって、子どもを抱えて荷物まで持っているときでも、簡単にドアを開いて乗り込めます。収納設備も豊富なので、スーパーハイトワゴンは子育て世代の人たちに多く愛用されています。

 このタイプの先駆けが、ダイハツ工業タント」です。初代モデルは03年に発売され、このときにはスライドドアが装着されず後席側のドアも横開きでしたが、全高は1700mmを超えて広い室内が人気を集めました。

 07年には2代目になり、左側にスライドドアを装着します。ピラー(柱)をドアに内蔵して、前後のドアを開くと開口幅がワイドになりました。右側は横開き式ドアなので、左右非対称のボディでした。

 13年には3代目の現行型が発売され、左側はピラー内蔵型のスライドドア、右側はピラーの付いたスライドドアに発展しています。緊急自動ブレーキを作動できる安全装備も採用しました。

 このように、タントは安心して便利に使える機能を常に進化させ、根強い支持を得ています。同様のことが軽自動車というカテゴリー全体にも当てはまり、小型/普通車の売れ行きが半減するなかでシェアを拡大したのです。

 なお、タントは19年中にフルモデルチェンジを受ける可能性が高いです。プラットフォームまで刷新するので次期型に期待したいですが、現行型の売れ行きも堅調です。そこで、あらためてガイドしておきましょう。

人気を得ている理由

 タントの一番の魅力は、ライバル車の本田技研工業(ホンダ)「N-BOX」やスズキ「スペーシア」と同様、広い室内を備えることです。後席の頭上と足元が広く、畳めば自転車なども積めます。左側のピラーはドアに内蔵されるため、前後ともに開くと開口幅は1490mmに広がります。助手席の背もたれに乗降用のグリップを装着したので、体をよじらずに乗り込めます。子育て世代だけでなく、高齢者にも優しい軽自動車です。

気になる8つのポイントチェック&星取り採点

(1)居住空間の広さとシートの座り心地

★★★★☆

 居住空間はとても広いですが、後席の座り心地と着座姿勢はN-BOXやスペーシアに比べて劣ります。

(2)荷物の積みやすさとシートアレンジ

★★★★★

 後席を小さく畳むと大容量の荷室に変更できます。左側ドアがワイドに開き、ボディの側面から荷物を積めます。

(3)視界や小回り性能など運転のしやすさ

★★★★☆

 水平基調の外観は四隅がわかりやすく、標準ボディの14インチタイヤ仕様は最小回転半径が4.4mと小さいです。

(4)加速力やカーブを曲がるときの安定性

★★☆☆☆

 発売から5年以上を経過しており、操舵に対する反応は鈍いです。ノーマルエンジンは動力性能が足りません。

(5)乗り心地と内装の質感などの快適性

★★★☆☆

 ファミリー向けの軽自動車なので、乗り心地に不満はないです。内装の形状は平凡ですが、質感は満足できます。

(6)燃費性能とエコカー減税

★★★★☆

 車両重量は900kgを超えますが、ノーマルエンジン車のJC08モード燃費は28km/Lと優れています。

(7)安全装備の充実度

★★★★☆

 2個のカメラをセンサーに使うスマートアシストIIIは、歩行者も検知して緊急自動ブレーキを作動させます。

(8)価格の割安感

★★★★☆

 N-BOXなどライバルとの競争が激しく、標準ボディは140~150万円に買い得なX SAIIIを設定しました。

選ぶときに確かめたい3つのメリット

・左側のドアを前後ともに開くと、開口幅がワイドで乗降性も優れています。

・後席をコンパクトに畳むと大容量の荷室になり、自転車も簡単に積めます。

・助手席の背もたれを倒すと背面がテーブルになり、収納設備も豊富です。

後悔しないための3つの要チェックポイント

・後席にチャイルドシートを付けるなら問題ないですが、座り心地は良くないです。

・ノーマルエンジンは動力性能が不足して操舵感も鈍く、走りの水準は低いです。

・19年中にフルモデルチェンジされるので、購入して早々に旧型になります。

こんなユーザーにおすすめ

 車内が広いので4名乗車も可能ですが、後席の座り心地と着座姿勢が悪いため、大人4名で乗車するなら居住性を確認しましょう。ただし、後席にチャイルドシートを装着して子どもを座らせるなら問題ないです。後席を前側へスライドさせると、運転席に座る親との間隔が縮まり、信号待ちのときなどに子どものケアをしやすいです。この状態なら、最後部の荷室が広がりベビーカーや子ども用の自転車も積めます。助手席の背面がテーブルになり、車内で軽食を摂るときにも便利なので、やはり子育て世代にピッタリです。

今後のモデルチェンジ予想

 先の項目でも触れたように、19年の中盤にはフルモデルチェンジを受けます。プラットフォームが刷新されて走行安定性と乗り心地が高まり、ボディが軽くなって動力性能や燃費にも良い影響を与えます。後席の座り心地も改善されるでしょう。安全装備や運転支援の機能も進化させます

最近の販売状況と安く買うための商談方法

 発売から5年以上を経過して以前に比べると売れ行きが下がりましたが、1カ月に1万1000台少々が販売され、日本車全体で見れば販売ランキングの上位に入ります。軽自動車なので多額の値引きは困難ですが、19年にフルモデルチェンジを受けること、N-BOXやスペーシアも検討していることを理由に、値引き額や下取り車の売却額を高めるように商談しましょう。

リセールバリュー/数年後に売却するときの価値

 19年中にフルモデルチェンジを受けるので、数年後に売却するときには、少なくとも先代型になっています。中古車市場の流通台数も多いため、3年後の下取り査定額は新車時の40~45%でしょう。タントは基本的に人気車なので、買い叩かれる心配はないです。

これが結論!/このクルマの総合評価&コメント

★★★☆☆

 スーパーハイトワゴンなので車内が広いのは当然ですが、左側の前後ドアを開いたときに得られる1490mmの開口幅はタントならではの特徴です。助手席を前側に寄せれば後席の空間が広がり、子どもと一緒に乗り降りしたりチャイルドシートに座らせたりする作業がしやすいです。その代わり、後席の座り心地は不満です。動力性能、走行安定性、操舵感などの走りも好ましくありません。

 登坂路の多い地域のユーザーはターボ車を検討すると良いでしょう。最大トルクがノーマルエンジンの154%に達するため、1Lエンジンを搭載している感覚で運転できます。その一方で、燃費数値は93%なので悪化率が小さいです。しかも、ターボの価格は装備の違いを補正すると約6万6000円なので割安です。軽自動車のターボは、タントに限らずパワー不足を補う合理的なメカニズムなのです。

 タントの問題は次期型の発売が近いこと。次期型の概要がわかった時点で、現行型が良いと判断したら、迅速に在庫車を買う手もあります(軽自動車は小型/普通車に比べて在庫車が多い)。このときには、最大級の値引きとディーラーオプションのサービス装着も商談できるでしょう。
(文=渡辺陽一郎/カーライフ・ジャーナリスト)

渡辺陽一郎/カーライフ・ジャーナリスト

渡辺陽一郎/カーライフ・ジャーナリスト

1961年生まれ。神奈川大学卒業。1985年に自動車雑誌を中心に扱うアポロ出版株式会社に入社。その後、同社で複数の自動車雑誌やアウトドア雑誌を手掛け、1989年に自動車購入ガイド誌「月刊くるま選び」の編集長に。1997年にはアポロ出版株式会社の取締役も兼任。2001年6月に40歳を迎え、同月に「カーライフジャーナリスト」の肩書でフリーランスに転向。

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