アップルに「半導体の盟主」を奪われたインテルの致命的ミス ムーアの法則終焉説の嘘
03年以降の各種半導体デバイスの技術世代(最小加工寸法)とその量産開始年を見てみると、インテルのプロセッサ(MPU)よりもNANDフラッシュメモリ(スマートフォン<スマホ>やPCに使われる大容量の不揮発性メモリ)のほうが若干、微細化が先行していることがわかる(図1)。これは、NANDフラッシュメモリの構造では繰り返しパタンが多いために、マルチパターニング技術を適用しやすいという事情による。
各種デバイスの中では11年以降、DRAM(スマホやPCに使われるランダムアクセス可能なワーキングメモリ)の微細化が若干スローダウンしているように見えるが、これは、DRAMで電荷を保持することによりメモリ動作を行うキャパシタ用に非常に深い孔を形成しなくてはならず、これがボトルネックになっているからだ。
しかし、どのデバイスも多少のバラツキはあるものの、微細化はとどまることなく進んでいる。
ムーアの法則は指数関数の法則
話はちょっと横道にそれるが、図1の縦軸が対数軸になっていることの意味を説明しておきたい。冒頭で述べたが、ムーアの法則は、2年でトランジスタの集積度が2倍になる、すなわち指数関数の法則である。また、それに伴って、トランジスタの面積を半分にするように微細化を進める。例えば、45nm世代の次の微細化は、次のように計算される。
32●(ニアリーイコール)●(ルート)(45×45/2)
図1のMPUの微細化が90→65→45→32→22→14nmと進んでいるのは、次々とトランジスタの面積を半分にしているという意味がある。よって、微細化のトレンドも指数関数的であるため、対数軸でグラフを描くのである。ところが、これをリニアの縦軸で描くと図2のようになる。
随分、図1とは印象が異なることに気付かれただろう。リニアの縦軸を使うと、微細化が進むにつれて前世代との差が小さくなることから、自然と「微細化が終焉する」という結論が導かれてしまうのである。実際に「日経エレクトロニクス」(日経BP社/15年4月号)でリニアの縦軸の図2を示して、09年付近で微細化が大幅にスローダウンしていると結論付け、『さらばムーアの法則』という記事を掲載した。
この記事は明らかに間違っている。その原因は、ムーアの法則(微細化も)が指数関数の法則であるにもかかわらず、リニアの縦軸で微細化のトレンドグラフを描いてしまったことにある。実際には、図1に示したように、各種半導体デバイスの微細化はスローダウンしていない。11年以降、若干傾きが鈍化したDRAMも、関係者によれば今後も微細化は続くという。したがって、ムーアの法則は当面終焉などしない。