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“ジリ貧”キヤノン、巧妙な御手洗会長の極秘作戦成功 電光石火で世界トップ買収の狙い

文=福井晋/フリーライター
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“ジリ貧”キヤノン、巧妙な御手洗会長の極秘作戦成功 電光石火で世界トップ買収の狙いの画像1キヤノン本社(「Wikipedia」より/Centpacrr)
 5月8日、キヤノンはスウェーデンのネットワーク監視カメラメーカー、アクシスコミュニケーションズAB(通称アクシス)の買収が同月5日付で終了したと発表した。買収額はキヤノンのM&Aでは過去最高額の3337億円とみられている。これによりキヤノンはアクシス株式の84.0%を取得、手続きが済み次第、連結子会社化する予定だ。買収額は、2015年2月9日のアクシス株終値に49.8%を上積みした額だという。

 アクシスは1984年設立のネットワーク監視カメラ世界最大手で、96年にインターネット接続により遠隔地から広域利用できるネットワーク監視カメラを世界で初めて開発した。現在、世界179カ国・地域に進出、14年12月期の売上高は約770億円。世界シェアは21.0%(14年、金額ベース/テクノ・システム・リサーチ調べ、以下同)。

 同カメラは遠隔地から防犯・防災向けの監視ができるのはもとより、小売業などでは映像から客の流れを解析して売れ筋商品を特定したり、高齢者の見守りサービスなどにも利用できる。監視カメラの世界市場規模は現在約4600億円だが、周辺機器を加えると約1兆6000億円になる。これが18年には3兆円近い規模に成長すると予測されている。

 対してキヤノンの監視カメラ売上高は年20億円程度といわれ、世界シェアはコンマ以下。要するに監視カメラ市場では実質的に「員数外のメーカー」。世界シェア8.4%のパナソニックとも比較にならない存在といえる。そんなキヤノンが、いきなり世界シェアトップメーカーを買収したのだ。いくら成長市場の監視カメラとはいえ、キヤノンの真の狙いはどこにあるのか。

新規事業の発掘が急務に

 複写機、デジタルカメラに続く新規事業が育たない――。96年のデジカメ事業参入以来、キヤノンが20年近くにわたって悩まされ続けてきた経営課題だ。同社の新規事業育成下手は今に始まったことではない。同社はこれまでも数百億円を投資して失敗したSEDテレビをはじめ光カード、パソコンなど、新規事業育成に失敗した例には事欠かない。

 業界関係者は「祖業のカメラ事業も、ライカを模倣した国産カメラから始まっている。複写機もゼロックスへの対抗から始まった。つまり、オリジナル製品やオンリーワン製品を生み出すDNAはないといえる。後発で参入し、たゆまぬ品質改善とコスト圧縮で先発を圧倒するのがキヤノンの強みであり、そこに他社が真似のできないオリジナリティがある」と指摘する。

 それはさておき、新規事業を育てられないため既存2事業への依存度は年々高まり、14年12月期は91.8%に達している。この事業ポートフォリオの偏りが原因なのか、売上高も過去5年間前期比増減を繰り返している。

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