それまで、“上客”とされてきた通勤客は、団塊の世代が一斉退職したことで減少し、通学客も少子化の影響で増える見込みはない。減少した売り上げをカバーするべく、鉄道会社は鉄道事業以外でも収入を増やそうと模索している。
主な非鉄道事業を挙げると、百貨店やホテル、マンションの開発・経営などの不動産事業、駅ナカで展開する小売業、車内の中吊り広告や液晶モニターに映し出される広告事業、さらにはIC乗車券と連動させたクレジットカードなどの金融事業がある。これらの非鉄道事業は、鉄道事業の売り上げと反比例するように急成長している。
鉄道会社、特に大手私鉄は多角化で成長してきた。日本国有鉄道から民営化されたJRグループも、そうしたビジネスモデルを模倣し、次々と非鉄道事業部門を拡大してきた。
2014年度の売上高は、東日本旅客鉄道(JR東日本)が2兆7500億円、西日本旅客鉄道(JR西日本)は1兆3500億円だが、そのうち非鉄道事業は東日本が8400億円、西日本が7900億円を占めている。JR各社は、もはや純然たる鉄道会社ではなくなっているのだ。
しかし、少子高齢化は鉄道事業だけに影響を及ぼすわけではない。利用者が減少すれば、非鉄道事業の売り上げも減少することは目に見えている。JRのみならず、私鉄各社も少子高齢化に備えて対策を講じてきた。
そうした事情は京王電鉄(以下、京王)も変わらない。京王は基幹ステーションである東京・新宿に百貨店を構え、西新宿の京王プラザホテルは副都心のシンボル的存在に成長させるなど、非鉄道事業に注力してきた。
沿線にはスーパーマーケットチェーンの京王ストアを展開しているほか、カレーショップのC&Cも京王グループの一員だ。これらの事業が、今や経営を支える柱になっている。
京王は街づくりのために新部署を立ち上げ
ところが、近年は非鉄道事業にかつてほどの勢いが見られず、鉄道会社は新しい事業に参入し始めている。そのひとつが、保育園事業だ。JR東日本、京浜急行電鉄、西日本鉄道などが参入しており、今後も多くの鉄道会社の参入が見込まれている。