その結果、第1号議案に含まれていた2人の候補、福原賢一氏(前ベネッセホールディングスCEO)と竹内洋氏(前日本政策投資銀行常務)が落選したのである。会社側の候補で当選したのが6名、瀬戸氏側候補は第2号議案の2名も含めて8名全員が当選して6対8となり、雌雄が決せられた。
皮肉な役回り、投資助言会社
大手企業の株主総会で取締役選出を個別投票のマークシート方式で行うなど、およそ聞いたことがない。16名候補全員への持ち株数当たりの投票数を個別に集計するために休憩時間が取られ、それがさらに延長されるなど、今回の総会は5時間近くにわたる長時間となった。
このような異例な方式の採用に至った経緯として、議決権行使助言会社の存在があった。世界で2大議決権行使助言会社として知られているのが、米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)と米グラス・ルイスである。取締役選出で2陣営が対決する構図となった今回の株主総会での投票について、どのような助言が出るか、総会の前に注目を集めていた。
世間の耳目を集めていた案件だけに2大助言会社も慎重になったのか、予定より遅く6月12日になって「推奨リポート」をそれぞれが発表した。それによると、2社とも瀬戸氏側候補の第3号議案へは反対を推奨した(グラス・ルイスは濱口大輔氏<前企業年金連合会運用執行理事>だけには賛成投票を勧めた)。
第2号議案(会社側、瀬戸氏側が共に候補とした2名)については両社とも賛成投票を勧めた。会社側提案の第1号議案については、両社とも賛成投票を勧めたのだが、ISSはこの中で前出の福原氏と竹内氏だけには反対投票を勧めた。両氏は結果として選出されなかった。
2大助言会社の推奨リポートは概ねでは共通していた。それは、「会社側候補を推奨、瀬戸氏側候補に反対」というものである。本記事では両リポートが掲げていた理由は省略する。今となっては「詮無いこと」だからだ。
ただ、第1号議案と第3号議案で個別の候補について上述した異なった見解を示した。このような推奨に対応した投票をするとしたら、3議案を分割して、個人投票にまで降りていくしかないのだ。
今回の総会には特に世間の注目が集まっていたので、LIXILとしても透明性のある投票方法を考えるしかなかったのだろう。総会が近くなり、瀬戸氏側が東京証券取引所に総会での投票立会を求めたことも、うまい圧力となったと思う。