注目されていたLIXILグループ(以下、LIXIL)の株主総会が6月25日に行われた。復帰なるか、世間の耳目を集めていた瀬戸欣哉前CEO(最高経営責任者)は取締役に選任されただけでなく、総会後の取締役会でCEOに選任され、同社経営のトップに返り咲いた。
私は本連載記事などで、「創業家で元CEOの潮田洋一郎氏による瀬戸氏のCEO解任が不当だったところにコトの発端があるのだから、瀬戸氏のCEO復帰が正道だ」と主張してきた(『LIXIL創業家・潮田氏、敵前逃亡連発の“道楽経営”で6万人企業は経営できない』)。
瀬戸氏復帰までの紆余曲折を振り返ると、大企業における株主総会での機関投資家といわれる大株主たちの意思決定に、大きな変化があったことが観察される。そして今回のこの変化は、機関投資家の投票行動が今後変わっていくきっかけとなる可能性がある。
異例のマークシート方式個別選出
今回の株主総会には、会社側から提案されていた取締役候補8名(以下、「会社側」)と、瀬戸氏を盟主とした株主提案による取締役候補の8名(以下、「瀬戸氏側」)の計16名が、候補として挙げられていた。LIXILの取締役の定員は16名だったので、両陣営の全員が選出される可能性もあった。
総会後の取締役会で選出されるCEO候補として、会社側は三浦善司リコー元社長、瀬戸氏側は同氏を提示していた。
取締役選出の総会議案としては、LIXILは16名の候補を3つの議案に分けて決議事項としていた。第1号議案には8名の会社側候補、第2号議案には会社側と瀬戸氏側両方から候補とされた2名、そして第3号議案には瀬戸氏側の6名である。第2号議案の2名の方たちは瀬戸氏側候補との認識を示していたので、第1号議案候補8名が会社側、第2号議案の2名と第3号議案の6名の計8名が瀬戸氏側8名と、拮抗していた状況だったのである。
株主総会では、議案ごとに採決が取られるのが通常だ。よって、上記3つの議案は個別に採決が取られるものと思われていた。つまり8名、2名、6名がそれぞれグループとしてまとまって採決されると見られていた。
ところが今回の株主総会では、前代未聞のマークシート方式による選任投票が採用された。すなわち、16名の候補に対して、株主は一名ずつ賛否のチェックをすることとなったのである。