加速度的に“脱・日本企業化”する日本企業 外国人採用、英語公用語化、実力主義人事…
15年3月29日付日本経済新聞が行った16年度の採用計画調査によれば、回答した2138社の3社に1社以上の37%の企業が、「新卒定期採用枠か別枠の正社員グローバル採用枠で海外の大学を卒業した学生や日本の大学で学んだ学生を採用する」と答えている。14年度新卒採用の外国人留学生を見ると、その圧倒的多数は中国人であり、続いて東南アジア諸国の留学生となる。彼らの日本語能力への期待が高いことが理由の一つだが、長期的には日本企業の英語社内公用語化、すなわち日本人社員の英語力向上が促される要因となる。
こうした社内における英語の利用頻度と外国人採用の増加は、日本企業の組織マネジメント自体の変化を引き起こすことになるであろう。巨視的に捉えれば、急速に進歩する技術と融合した現在進行形のグローバル化は、これまでの近代のお約束である「線形的静的決定論の世界」から「非線形的動的複雑性の世界」への急速な変化をもたらしているといえ、これまで暗黙前提としていた予測可能性は「高まっていく」のではなく、逆に「低下していく」と考えなければいけない。
つまり、過去の延長に将来は語れなくなりつつある。このような事業環境においては、「境界は喪失し、変化は加速化し、梃子の原理が効くようになる」ことを企業も個人も強く認識する必要がある。
現在のグローバル化の構造を示せば、突出して強力な国家が市場や個人を管理していた時代ではもはやない。グローバル化が進行する中で国家の力は低下し、「国家」「グローバル化した資本」「強力な力を持つ総体としての個人」という3つのプレイヤーの一つでしかない。
この3つのプレイヤーのゲームの前提に、加速的に進歩する技術がある。この技術は、基本的に一つのプレイヤーが独占できるものではなく、誰でもこの技術にアクセスが可能である。これが、現在のグローバル化の構造である。プレイヤーが3者存在するのであれば、不確実であることは避けられない。このような事業環境の中で企業経営者は、「脱境界(常識は非常識)」「脱中心(末端と中枢との関係の再定義)」「脱堅牢(完璧はあり得ない)」という3つの観点が、企業の存続と成長の鍵を握ることを理解しなければならない。
実力主義人事
遅ればせながら、日本企業でもかなり刷新的な動きが大企業で起きてきている。
象徴的な例は、今年1月に発表された「32人抜き」といわれる三井物産のトップ交代であろう。次期社長に指名されたのは、54歳の安永竜夫氏である。年齢もさることながら、安永氏は執行役員であり取締役ではなかった。これは、日本の大企業人事では前代未聞といえよう。外国人取締役を除けば自分以外の取締役は皆年長であり、安永氏が今後年長の取締役をどう使いこなすかが注目される。