企業経営や会計に関する知見が乏しく、経営の監視には無力だった官僚OBらを社外取締役から排し、大手企業の社長経験者や弁護士、公認会計士などをずらりと並べた新体制は、オールスター選抜といってもよさそうな陣容だ。取締役の頭数を大きく減らしたうえに半分以上を社外取締役が占めるようになり、意思決定や経営監視のシステムも抜本的に入れ替えた。
しかし、これだけで再建に向けての「道中手形」を得たわけではない。重要なのは、経営トップの方針に対し「物わかりの悪い取締役」「和を以て貴しとしない役員」を揃えたかどうかであろう。今回の問題は、先進的な経営のあり方で優等生といわれた東芝で起きてしまったのだから、システムや社外取締役の個々の能力だけの問題ではないのだ。
不祥事後にやはり著名な経営者や法曹関係者などで社外取締役を固めたオリンパスは、その後も社内で頻発する信じられないような不正、例えば上場維持を求めて東京証券取引所へ提出した改善報告書に改竄があった問題や、海外での過剰接待問題に悩まされている。しかし、そこで社外取締役や社外監査役が積極的に動いて、内側から何かが変わったという話はオリンパス・ウォッチャーの筆者にさえまったく伝わってこない。「オールスター選抜」だからといって、経営の監視がうまくいくとは限らないのだ。
制度の欠陥ではなく、人間の問題
また体裁だけを取り繕って「これで足れり」とする意識や、せっかく整えたシステムを骨抜きにしてしまう企業側の姿勢も問題だ。特に日本では、企業が制度の趣旨を無視して有効に機能しないようにしてしまうことに悪達者なほど長けている。
ある総合商社では社外取締役が「企業統治の仕組みをさらに強化すべきだ」と主張したところ、これを煙たがった会社側は2年の任期を1年に短縮し、翌年にその社外取締役を交代させてしまった。経営トップから煙たがられるのが仕事の社外取締役が、日本企業ではこういう扱いなのだ。これではなんのための社外取締役なのかわからない。
社外取締役制度などのシステムで会社をよくするには、その“用法・用量”を正しく使える人や企業カルチャーの存在が不可欠だ。