その上、昨年7月に中国政府が輸入乗用車に賦課してきた関税を25%から15%に引き下げたことも大きかった。その結果、レクサスを中心にトヨタ車への人気が急速に高まっている。状況としては、これまで手に入れたかったレクサスが身近になったと感じる消費者が増え、我先に手に入れようとするほどの勢いが感じられる。
これは、トヨタにとってとても大きな変化だ。トヨタは日本でのモノづくりにこだわり、原価の低減を実現することで環境の変化に対応してきた。トヨタにとっても米中摩擦は無視できないリスクだ。同時に、トヨタはライバルの苦戦をうまくとらえ、中国でのシェアを高めることができている。
価格帯の高いレクサスの販売が好調であるということは、中国におけるトヨタの競争力が着実に高まっていることを意味する。米中摩擦や債務問題の深刻化による中国経済の減速懸念が高まるなかでのトヨタ車の販売増加は、同社が他の企業よりも消費者の信頼を得ていることの裏返しだ。
ハイブリッド車への政策転換する中国政府
2016年頃から、中国政府はEVをはじめとする“新エネルギー車”の普及を重視した。その理由は大気汚染対策だ。中国政府は2019年の目標として、ガソリン車およびハイブリット車を100万台生産・販売する企業には、2万台のEVを生産するように求めた。当初、中国政府はハイブリッド車を新エネルギー車として認めなかった。中国は補助金政策を導入し、EVという新しいモノの普及によって大気汚染対策と消費刺激の一石二鳥を狙ったのである。
中国のEV重視姿勢を受けて、世界各国の自動車メーカーがEV開発に大きく舵を切った。特に、ディーゼル排気ガスの不正によって信頼感を失った独フォルクスワーゲンにとって、中国のEV重視は起死回生のチャンスだった。一方、ハイブリッド車の開発と販売に注力してきたトヨタは、急速なEV化の流れに出遅れた。
ただ、EVの普及には時間がかかる。特に、各地に充電設備を設置するなどインフラ整備には多くの時間と資金が必要だ。債務問題が深刻化するなか、中国の地方政府が、借り入れを通してEV普及に必要なインフラ投資を進めることは容易ではない。EVの普及は重要だが、技術的な課題をクリアするのは一朝一夕にはいかない。